ストレスマネジメントとは、ストレスを管理(マネジメント)しながらうまく付き合っていくことを指します。
ストレス反応が起こっている状態が続くと心身に影響が表れることがあるため、ストレスマネジメントをおこない、心身への影響を未然に防ぐことが大切です。
しかし「ストレスに対処したくても、やり方がよく分からない」という方も多いかもしれません。
本記事では、ストレスマネジメントのやり方や仕事でのストレスマネジメントの具体例、企業がおこなうストレスマネジメントなどを紹介します。
ストレスマネジメントとは、ストレスを管理(マネジメント)しながらうまく付き合っていくことを指します。
ストレス反応が起こっている状態が続くと心身に影響が表れることがあるため、ストレスマネジメントをおこない、心身への影響を未然に防ぐことが大切です。
しかし「ストレスに対処したくても、やり方がよく分からない」という方も多いかもしれません。
本記事では、ストレスマネジメントのやり方や仕事でのストレスマネジメントの具体例、企業がおこなうストレスマネジメントなどを紹介します。
ストレスマネジメントとは、ストレスとうまく付き合う方法を考えて、対処していくことを指します。
ストレスは、誰もが日常生活の中で感じるものです。しかしストレスによる負担が大きくなると、心身に影響が出ることがあります。そのため、ストレスを管理(マネジメント)してうまく付き合っていくことが大切です。
ストレスとは、外部からの刺激などに対する心身の反応のことです。
医学や心理学におけるストレスの理論では、「ストレス」を「ストレッサー」と「ストレス反応」に分けて考えることがあります。
ストレスの原因となる外部からの刺激のことを「ストレッサー」と呼びます。
ストレッサーには、主に以下のような種類があるとされています。
ストレス反応には、個人差があります。人により物事の受け止め方や性格などが異なるため、同じ要因がストレッサーになる人もいれば、ならない人もいます。
例えば自宅の近所で工事があるとき、ある人にとっては多少の騒音ならストレッサーにはならなくても、音に敏感な人にとってはストレッサーとなることがあります。
一般的に「ストレス」という言葉は、ストレス反応よりもストレッサーのことを指して使われる場合もあります。例えば、「最近人間関係がストレスで……」といった使い方を見聞きしたことがあると思います。
ストレッサーに適応するために心身に生じるさまざまな反応のことを「ストレス反応」と呼びます。
ストレス反応は、「心理面」「身体面」「行動面」の3つの領域に、以下のような形で表れるとされています。
※「ヒヤリハット」とは、「ヒヤリ」「ハッ」とするような、事故寸前の危険な状況を指します。
仕事にまつわる要因がストレッサーとなる場合もあります。
厚生労働省が令和4年におこなった調査では「現在の仕事に関することで強い不安や悩み、ストレスと感じる事柄がある」と回答した人は、82.2%にのぼっています。
「ストレスと感じる事柄」の具体的な内容で多かった回答は、以下の項目です。
強いストレス反応が起こっている状態が慢性化すると、心身の不調が表れることがあります。例えば、抑うつ状態などの症状が2週間以上続いている場合にはうつ病の可能性も考えられるといわれています。
ストレスマネジメントを身につけてストレス反応に対処することは、ストレス反応がうつ病などの疾患へと移行することを防ぐことにもつながります。
ここでは、自分でできるストレスマネジメントの方法を紹介します。
ストレスマネジメントの方法は、自分のストレス反応に気づくための「セルフモニタリング」と、ストレッサーやストレス反応に対処する「ストレスコーピング」の2つに大きく分かれます。
セルフモニタリングとは、自分の心身の状態を客観的に見て把握することです。
ストレスマネジメントとは、自分の限界点を知っておき、自分の状態が限界点に達する前に対処をおこなうことでもあります。
例えば、「自分は睡眠不足が1週間続くとうつ状態になりやすい」ということを把握したとします。
残業により睡眠不足の日々が5日ほど続き、疲労が溜まって気持ちの余裕もなくなってきたときに「睡眠が足りないからだな。以前、睡眠不足と過労からうつ状態になったことがあるから、そろそろ睡眠をしっかりとらなければ」と、不調の理由と対処法が分かります。
そしてしばらくの間、「睡眠をしっかりとって、体調を回復させること」を生活における優先事項に据えて、1日のスケジュールを調整して対処することができます。
このように、自分の状態を知る「セルフモニタリング」を日常生活の中に取り入れることは、ストレスマネジメントの第一歩となります。
ストレスマネジメントにおけるセルフモニタリングには、さまざまな方法があります。
ここではそれらの中から、3つの方法を紹介します。
「最近感じていること」をノートに書き出し、「イライラ」や「食欲の低下」などストレス反応に当てはまる項目がどの程度あるかを見ることで、自分の状態を観察します。
最初は先ほど紹介したような、よくあるストレス反応に該当する項目がないか書いていくと、そのうちに自分のストレス傾向がつかめてくるでしょう。
そうすることで「このストレス反応が出ているときはストレス対処が必要なサイン」と気づくことができ、早期にストレス対処もしやすくなります。
「自分の心身の状態を表す温度計」をイメージし、もっとも調子がいいときを「100℃」、もっとも調子が悪いときを「0℃」としたとき、「今の状態は何度ぐらいか」ということを感じてみます。さらに、その温度になっている理由を考えます。日々続けていくことで自分のストレス反応の傾向がつかめてきて、体調を崩す前に対策をとることにも役立ちます。
また似たようなものとして「こころの体温計」があります。こころの体温計は複数の自治体がWebサイト上で提供しています。パソコンやスマートフォンから簡単な質問に答えることで、自分のこころの状態を把握できます。
厚生労働省が運営する『働く人のためのメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」』では、ストレスのセルフチェックができるページがあります。質問に答えていくことで、仕事による負担度などのレベルや改善のためのアドバイスなどが表示されます。
コーピングとは、「対処する、処理する」という意味の英語です。
ストレスコーピングとは「ストレッサーにうまく対処しようとすること」を指し、主に以下のような方法があります。
ストレッサーそのものに働きかけて、ストレッサーとなっている問題の解消を目指す方法です。
例えば「仕事量の多さ」がストレッサーである場合は「仕事量の調整について上司に相談する」などの行動が当てはまります。
ストレッサーに対する自分の考え方や感じ方を変えて対処する方法です。
「仕事量の多さ」がストレッサーである場合は、「このプロジェクトをこなせば自分の成長につながる」という方向に考えを変えることで、前向きに取り組めるようにする方法などが挙げられます。
一般に「ストレス解消」と呼ばれている方法です。何をすればストレス解消になるかは人により異なりますが、一般には「3つのR」と呼ばれる以下のような方法があります。
気晴らし型コーピングではストレッサーそのものは変わりませんが、活力が回復することでストレス反応が和らいだり、出来事に対する捉え方が変わって前向きな気持ちになったりするなどの効果が期待できるといわれています。
では、実際の仕事の場面ではどのようなストレスマネジメントができるのでしょうか?
ここでは例として、上司について「ほかの人に比べ、自分に対しての対応がきついのではないか」と感じている場合のストレスマネジメント方法を説明します。
気持ちの書き出しやこころの温度計などを利用して「自分のストレス反応がどの程度であるか」を感じます。こころの温度計が30度と低い日が続けば、ストレス対処が必要な状態だと気づくことができます。
次に、ストレッサーとストレス反応を明確にします。例えば、ノートに「上司に怒られて落ち込んだ」「明日も上司と顔を合わせると思うと眠れない」などと書いたとします。この場合のストレッサーは「上司の言動」であり、ストレス反応として抑うつ気分や不眠が表れていることが見えてきます。
ストレスコーピングとして、以下のような方法が考えられます。
上司に相談しやすい関係である場合は、業務の進捗報告や面談の際に上司の指示や言動の意図を確かめることなどが考えられます。例えば、上司から「もう少しやってもらわないと」と言われていた場合は、具体的に「何をどこまですればいいのか」を確認するといった具合です。
上司と直接話すことが難しい場合は、上司の上司や人事部、社内の相談窓口などに相談する方法もあります。
「上司の対応がきつい」という考えを、 「自分は特別に目をかけてもらっているのかもしれない」「この状況で頑張れば、成長につながる」「上司もストレスがあるのかもしれない」などの考えに転換してみます。
職場でできる方法としては、「休憩時間にストレッチをする」「深呼吸をする」「緊張が続いていると感じたら小休止をとり、気分転換を図る」などが挙げられます。
ストレスマネジメントを実践してもストレス反応がなかなか改善されず、心身共に負担が大きい場合は、悩みを一人で抱えこまずに相談することも大切です。
産業医や社内のメンタルヘルス窓口などがある場合、こちらにも相談してみるといいでしょう。
また社内で相談しづらいという場合には、社外に以下のような相談窓口があります。
厚生労働省が運営する相談窓口で、解雇や配置転換、いじめや嫌がらせ、パワハラなどをはじめとするあらゆる分野の労働問題についての相談を受け付けています。
産業カウンセラーなどの「こころの耳電話相談員」が対応する電話相談です。1回20分まで相談できます。
また厚生労働省のWebサイトには、状況別に相談できる公的機関が紹介されていますので参考にしてください。
企業側も、仕事におけるストレスマネジメントに取り組んでいる場合があります。自分でストレスマネジメントをおこなうほか、勤務先でおこなわれているストレスマネジメントもうまく活用するといいでしょう。
厚生労働省は事業者に対し、メンタルヘルスケアについて以下の4つの指針を示しています。
社員やメンタルヘルスに関わるスタッフなどを対象に、必要な研修や情報提供をおこないます。内容としては、ストレスへの気づき方、ストレスの予防や対処法などがあります。
日頃から職場環境を評価して問題点を把握し、改善を図ります。例えば、日常の職場管理や、社員からの意見を聞くことなどが挙げられます。
メンタルヘルス不調を抱えている社員を早期発見し、適切な対応をおこなうための体制を整備します。
具体的には、以下のような項目が推奨されています。
メンタルヘルスの不調により休職した社員に対し、スムーズに職場復帰できるよう支援をおこないます。
具体的には、職場の産業保健スタッフなどが社員の個人情報の保護に十分留意しながら、主治医や外部機関と連携して、社員が無理なく職場に復帰できるように計画を立ててサポートしていきます。
ストレスマネジメントとは、ストレスとうまく付き合う方法を考えて対処していくことです。
ストレスは誰もが感じるものですが、ストレス反応が長引くと心身に影響が出ることもあります。そのため、ストレスマネジメントを身につけて心身への影響を未然に防ぐことが大切です。
ストレスマネジメントには、自分でできるさまざまな方法があります。また、企業によってはストレスマネジメントの取り組みをおこなっている場合もあるので、あわせて利用するといいでしょう。
就労移行支援事業所「LITALICOワークス」では、うつ病などの疾患や障害があり、一般企業などへの就職を目指す方を対象に、就職の準備から就職後の職場への定着までの一貫したサポートを提供しています。
就職の準備段階では、体調管理の方法やストレスマネジメントを学び、実践するプログラムも提供しています。
セルフモニタリングでは専用の記録用紙を使って、1日の活動内容や気分の変化を記録して振り返りと分析をしていきます。ストレスコーピングも、テキストで学ぶことができるほか、就労移行支援事業所の中でさまざまな方法を試して自分に合う方法を探していくことができます。
このような取り組みは1人でおこなうのではなく、スタッフも一緒に振り返り・分析のサポートをしていきます。
休職中の方も一定の条件を満たせば利用できる場合があります。仕事全般や復職、転職する場合の就職活動などについて不安がある方は、お気軽にお問い合わせください。
また、LITALICOワークスが提供するプログラムなどの「体験会」を開催しています。豊富なプログラムから選択でき、体調に応じて1時間から無料で体験できます。興味のある方は、お気軽にお申し込みください。
監修者
医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント
染村 宏法
大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。
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