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コミュニケーション障害の特徴や原因は?症状や診断の種類についても解説

更新日:2024/06/29

「人と話をすることが苦手」「周囲とコミュニケーションを取ることに困難や苦痛を感じる」という方は、コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)の可能性があります。

 

コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)は「言語障害や語音障害などの原因により、会話のやりとりが上手くいかない」という特徴があります。

 

そのため、日常生活だけでなく社会生活でも影響が出るため、悩む方も少なくありません。

 

当記事では、医学上の診断名としてのコミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)について、症状や原因、対処法を分かりやすく解説します。

コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)とは?

「コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)(※)」とは、なんらかの原因により人とのコミュニケーションに困りごとや苦痛が生じる障害です。

 

(※)コミュニケーション障害は現在、「社会的コミュニケーション症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「コミュニケーション障害」といわれることが多くあるため、ここでは「コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)」と表記します。

 

例えば、「文章を上手く繋げることが難しく感じ、会話を続けることが困難に感じる」ことや「言葉を思ったように発することができない」などが挙げられます。

 

コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)には、症状によって以下のように分類されています。

  • 言語症
  • 語音症
  • 吃音(児童期発症流暢症)
  • 社会的(語用論的)コミュニケーション症
  • 特定不能のコミュニケーション症

コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)の症状・特徴については、後ほど一つずつご紹介します。

コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)の種類ごとの特徴・症状

コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)の症状には具体的にどのようなものがあるか、5つの分類別に特徴をご紹介します。

言語症・言語障害

言語症・言語障害があると、話すことや書くことの習得や言葉の使用に困難が生じます。

 

具体的な症状には下記のようなものがあります。

  • 使う語彙が限られている
  • 言葉の言い回しのパターンが少ない
  • 文と文をつなぐことが苦手
  • 文章の組み立てが上手くできない

このような症状から、相手に伝えたいことを上手く伝えることに困難を感じたり、苦痛に感じることがあります。

 

言語症・言語障害の発症が確認できるのは、乳幼児期の頃からといわれています。

 

しかし、実際には言語能力が安定する幼児期に診断されることが多いです。

 

また、個人差はありますが、幼児期移行に言語障害と診断された場合は、大人になってからも症状が続く可能性があります。

語音症・語音障害

語音症・語音障害は、脳性麻痺や難聴などの身体的な障害や神経学的な障害がないものの、言葉をはっきりと発することが困難に感じる障害です。

 

言葉のやりとりによるコミュニケーションが制限されてしまうため、日常生活だけでなく仕事においても支障が出ることがあります。

 

しかし、語音症・語音障害は、正しい治療をおこなうことによって改善する可能性もあります。

吃音(児童期発症流暢症)

吃音(児童期発症流暢症)は、小児期発症流暢症・小児期発症流暢障害とも呼ばれています。

※以前は「吃音(小児期発症流暢症)」という診断名でしたが、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「吃音(児童期発症流暢症)」という診断名になりました。この記事では以下、吃音(児童期発症流暢症)と記載しています。

会話中にみられる特徴は下記のようなものが挙げられます。

  • 言葉の一部分を繰り返す
  • 言葉が不自然に途切れる
  • 最初の言葉が出にくい
  • 苦手な言葉を避けるために、遠回しな言い方を使う
  • 言葉を発するときに身体が緊張している など

吃音は子どもの頃に発症しますが、大人になってもその症状が続くことがあります。

社会的(語用論的)コミュニケーション症・社会的(語用論的)コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)

社会的(語用論的)コミュニケーション症・社会的(語用論的)コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)は、非言語コミュニケーションを状況に合わせて使い分けることが難しい状態を差します。

 

非言語コミュニケーションとは、顔の動きや声のトーン、しぐさなど、言葉以外の手段を使った意思疎通方法のことです。

 

例えば、下記の特徴があります。

  • 比喩やユーモアが分からない
  • 相手に合わせて言葉遣いを変えることが困難に感じる
  • 相手が何を言いたいのか察することに困難を感じる
  • 挨拶や情報共有などが困難に感じる など

一般的には、3歳頃から発症が確認できるといわれていますが、社会に出てから症状に気が付く方もいらっしゃいます。

特定不能のコミュニケーション症・特定不能のコミュニケーション障害

前の項目でご紹介した4つの障害にあてはまる症状はみられるものの、完全には診断基準を満たさないケースがあります。

 

上記の場合は「特定不能のコミュニケーション症・特定不能のコミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)」に分類されることがあります。

コミュニケーションに困りごとが起こるほかの疾患

人とのコミュニケーションが上手くいかないという悩みの背景には、別の疾患が隠れている可能性があります。

 

コミュニケーションに困難が生じる疾患は複数あります。

  • 発達障害
  • 不安障害
  • パーソナリティ障害
  • 知的障害
  • てんかん
  • 社会不安症 など

例えば、「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如多動症)」「LD・SLD(限局性学習症)」といった発達障害があると、人とのコミュニケーションをスムーズにとることが難しいと感じることがあります。

 

「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如多動症)」「LD・SLD(限局性学習症)」について、それぞれどのような特徴や、コミュニケーションへの影響があるのかについて紹介します。

ASD(自閉スペクトラム症)

ASD(自閉スペクトラム症)の特性として「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」などがあります。

 

話をしている人の表情や身振りから、発言者が言いたいことを判断しにくい性質があります。

 

また「自分が考えていることを上手く表現することができない」などの特性もあるため、人との意思疎通がスムーズにいかないことがあります。

 

※以前は「自閉症スペクトラム」という名称が用いられることもありましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本語版は2023年)年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事では以下、ASD(自閉スペクトラム症)と記載しています。

ADHD(注意欠如多動症)

ADHD(注意欠如多動症)には「注意力や集中力が続かない」などいくつかの特徴があります。

 

なかでも「人の話を聞かずに一方的に話し続ける」や「話に集中することが難しい」などの特性は、他人との会話に影響する可能性があります。

また、会議中などの場面で、同じ場所や空間に同じ姿勢で居続けることなどに苦痛を感じる方もいらっしゃいます。

 

そのような特性から、人とのコミュニケーションに困難を感じる場合があるかもしれません。

 

※以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事では以下、ADHD(注意欠如多動症)と記載しています。

LD・SLD(限局性学習症)

学習障害は全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力に困難が生じる発達障害のことです。

 

まったく読めない・書けないということではなく、また読みにくさ・書きにくさの程度や現れる症状も人によって異なります。

 

また学生時代は症状が目立たず、大人になってから学習障害だと分かるケースもみられます。

 

仕事において書類やマニュアルを読むことが困難だったり、メールでのコミュニケーションが難しかったり、メモを取るのに時間がかかったりすることがあります。また、計算が苦手な場合は、見積書の作成などが難しい場合もあります。

 

 ※学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。

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コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)の原因

コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)の原因は、詳しく分かっていないのが現状です。

 

吃音(児童期発症流暢症)に関しては、幼児期頃に発症し、成長するにつれて改善する方も多くいらっしゃいます。

 

しかし、大人になった後も症状が残るケースがあるため、遺伝も原因のひとつではないかと考えられています。

コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)のある方ができる対処法は?

コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)のある方の場合、普段の生活に加えて、仕事上でも悩みを抱える可能性が考えられます。

 

コミュニケーションはポイントを押さえ、工夫することで改善することができます。

 

この項目では、コミュニケーションを円滑に進めるための具体的な工夫や対策方法をご紹介します。

マナーをリスト化しておく

礼儀やマナーは良好な対人関係を築くうえで非常に大切な要素です。

 

たとえ会話が苦手であっても、ビジネスマナーがしっかりしていれば、仕事をスムーズに進めることもできるでしょう。

 

もしも、苦手な場合は、ルールやマナー、自分なりの対処法をリスト化する方法がおすすめです。

 

例えば「人とすれ違うときは、このタイミングで挨拶する」「人が話しているときは、発言者の方へ身体を向けておく」などです。

 

あらかじめ「このパターンのときはこのようにする」と決めておけば、その場で「どうしよう?」と悩むストレスを減らせる可能性があります。

伝え方を工夫する

伝え方ひとつ工夫するだけでも相手へ与える印象が良くなることがあります。

 

とくに、話の内容に同意しにくい場面や、自身の考えや意見と異なる場合ではでは、伝え方を工夫することが大切です。

 

例えば、「しかし」「でも」といった言葉で自分の考えや意見を述べる前に、「仰っている内容は理解できました」や「たしかにそうですね」など、まず相手の意見に理解を示す言葉を添えるといいでしょう。

 

相手から受けた提案を断るときも、いきなり「結構です」と拒否するのではなく、先にお礼を言ってから「申し訳ございません」と伝えるだけで、印象がよくなる可能性があります。

見た目やしぐさなど非言語コミュニケーションを理解する

人の印象は、話す内容だけでなく、表情やしぐさ、声のトーンや服装といった、言葉に依らないコミュニケーション(非言語コミュニケーション)によっても変わるといわれています。

 

つまり、上手に話すことが苦手であっても、ほかの要素で印象を良くすることができます。

 

具体的には下記のような工夫点が挙げられます。

  • 姿勢をよくする
  • 笑顔を心掛ける
  • 腕組みや足組みをしない
  • 清潔感のある服を選ぶ
  • 髪や顔を頻繁に触らない
  • 身だしなみを整える など

最初は慣れなくても、繰り返しながら徐々に習慣にしていくとよいでしょう。

無理をしない

人に気をつかいすぎると、疲れてしまい、以前に比べてより対人関係が苦手になることがあります。

 

そのため「常に無理はしない」ということを心がけるとよいでしょう。

 

話したくないときは聞き役になったり、付き合いがつらいと感じたときは距離を置いたりして、ストレスにならない距離感をつかむことが大切です。

 

上記で紹介した方法は一例です。コミュニケーションに悩むときに参考にしてみてください。

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コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)のまとめ

対人関係が上手くいかない場合、コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)である可能性が考えられます。

 

しかし、人との会話に困りごとが起こる障害は、コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)以外に「発達障害」や「パーソナリティ障害」など、複数存在しています。

 

上記の症状を個人で判断することは難しいため、「人と上手く意思疎通ができない」と思った場合は、ひとりで悩まず早めに医療機関に相談しましょう。

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更新日:2024/06/29 公開日:2022/04/20
  • 監修

    株式会社LITALICOパートナーズ LITALICOワークス事業部所属

    小野寺 規子

    精神保健福祉士として、福祉施設職員やジョブコーチ、相談支援専門員、サービス管理責任者など長きにわたり相談援助業務に従事。
    現在はサービス品質責任者として人材育成や研修、評価制度設計など様々なプロジェクトを担当。
    社内外のネットワークを通じて、地域やそのひとりの力の最大化を目指すソーシャルワーカー

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