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お役立ち仕事コラム

大人の吃音症とは?原因や診断基準・仕事をする上で大切なことも解説

更新日:2023/11/29

吃音(きつおん)の症状があると、言葉をなめらかに発音できず、話すことに苦手意識を感じてしまうことがあります。

 

そのため、人によっては「コミュニケーションを取るのがつらい」「働くことがつらい」と感じてしまうことも考えられます。

 

しかし、吃音は原因や年齢に合わせた治療を行うことで、症状が和らぐ可能性もあるため、まずは病院などの専門機関へ相談することが大切です。

 

今回は吃音の症状や特徴、診断基準や治療方法についてわかりやすく解説します。

 

また、吃音症のある方が仕事で感じる困難や負担を減らすための大切なポイントもご紹介します。

吃音症とは

吃音(きつおん)とは、言葉がなめらかに出てこない状態を意味します。

 

例えば、言葉に詰まってしまったり、最初の一音を何度も繰り返したりするなどの症状があります。

 

吃音症の9割にあたる「発達性吃音症」は2~4歳ごろに発症することがよく見られます。

 

また、おおよそ5%の子どもが一時的に、吃音の症状を経験するとの情報もあります。

吃音症には複数の名称がある

吃音症は、いくつかの名称で呼ばれることがあります。

 

例えば、世界保健機関 (WHO)が公表している国際的な診断基準、『ICD-10』では「吃音症」という名称がついています。

 

また、米国精神医学会の『DSM-5』(精神疾患・精神障害の分類マニュアル)では、「小児期発症流暢症(吃音)」と呼ばれており、小児期に発症するものとされています。

 

成人後に発症した場合、診断名は「成人期発症の流暢症」となる可能性があります。

 

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大人の吃音症

吃音症は主に幼児期(2〜4歳頃)に発症することが多いと言われています。その後、成長するにつれて、症状が目立たなくなる人もいます。

 

しかし、なかには大人になってからも吃音症の症状が続き、日常生活や仕事において、困難や辛さを感じる方もゼロではありません。成人(18歳以上)の場合でもおよそ100人に1人は吃音の症状があると報告されています。また、大人になってから、ストレスや事故、病気などで「獲得性吃音」を発症する場合もあります。

吃音症の症状・特徴

吃音症の症状と、年齢ごとに変化する特徴について解説します。

吃音症の症状とは?

吃音症のある方に見られる症状としては、下記3つが挙げられます。

  • 音の繰り返し(連発)
  • 引き伸ばし(伸発)
  • 言葉に詰まる(難発)

音の繰り返し(連発)では、「ぼ、ぼ、ぼく」や「こ、こ、こんばんは」など、同じ音を何度も発してしまう症状が見られます。また、引き伸ばし(伸発)は、「きーのう」や「あーした」など、言葉の一部を伸ばしてしまう症状のことです。

 

さらに、言葉を話しているときに詰まってしまう(難発)こともあります。

年齢ごとに変化する吃音症の特徴

吃音症は年齢によって特徴が変化すると言われています。この項目では、幼児期、学童期、思春期、成人期にわけて特徴を解説します。

 

幼児期(2歳〜4歳ごろ)

幼児期には、音の繰り返し(連発)や引き伸ばし(伸発)の発症が多く見られます。しかし、幼児期に吃音症を発症したとしても、半分以上が小学校入学前に症状がなくなると報告されています。

 

また、多くの子どもが言葉の発達過程において、スムーズに言葉を話せない状態を体験すると言われていますが、このような場合もすべて吃音と診断されるわけではありません。しかし、なめらかに発声できない症状が頻繁に起こる場合、吃音である可能性があります。

 

学童期(6歳〜12歳ごろ)

小学校に通う時期にあたる学童期では、言葉に詰まる難発の症状が多いと言われています。また、上手く話すために、言葉を言い変えたり、工夫を試みたりする行動が始まる場合もあります。

 

思春期(12歳〜18歳ごろ)

吃音症の症状が出ないように工夫することが身についている場合「スムーズに言葉を発声できているように見える」こともあります。人によって話さなくてはいけない場面や状況を避ける「回避行動」をとることもあります。

 

成人期(18歳〜)

18歳以上の方のなかの1%に、吃音の症状が残ると報告されています。思春期と同様に「回避行動」をとる方もいらっしゃいます。しかし、日常生活や職場などの社会生活において、「回避行動」をとることが難しい局面も発生しやすくなります。そのため、状況によっては人へ相談したり、仕事上で工夫したりすることが必要な場合があります。

 

吃音症がある方が意識したい仕事上でのポイントは、後の項目で詳しくご紹介します。

 

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吃音症の原因は?

吃音症は大きく「発達性吃音」と「獲得性吃音」の二種類に分かれます。

 

上記のふたつは、原因が大きく異なっています。

発達性吃音

吃音症の9割にあたる症状で、発達性吃音の原因は明確にわかっていないのが現状です。

 

現在、考えられているものとしては「体質的(遺伝的)要因」「発達的要因」「環境要因」が挙げられます。

  • 体質的要因:本人の体質によるもの
  • 発達的要因:身体や認知・言語などの急速な発達による影響によるもの
  • 環境要因:身の回りの人たちとの関係や体験によるもの

これらの要因の中で、「体質的(遺伝的)要因」が全体の8割を占めているという報告もあります。

獲得性吃音

獲得性吃音は「獲得性神経原性吃音」と「獲得性心因性吃音」のふたつに分類されます。

 

獲得性神経原性吃音

獲得性神経原性吃音は、頭部のケガや薬物の使用、脳や神経の病気で発症します。病気の例としては、脳卒中やパーキンソン病、認知症などが挙げられます。事故で頭を強く打った方や、高齢者、薬物中毒の方に多く見られると言われています。

 

獲得性心因性吃音

獲得性心因性吃音とは、トラウマやストレスによって発症する吃音症のことを指します。辛い体験をしたときと似た状況になると、吃音症を発症する確率が高まると考えられています。

 

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吃音症の診断基準

インターネット上には、吃音症の自己診断チェックができるサイトが存在していますが、吃音症かどうかは、自分だけで判断することはできません。

 

気になる症状が見られる場合は、専門の機関で診断を受けることが大切です。

吃音症の診断はどこで受けられる?

吃音症の診断は、精神科、心療内科、耳鼻咽喉科、などの医療機関で受けられます。

 

ただし、吃音症は「この科であれば必ず診察してくれる」と言い切ることが難しいため、まずは、自宅の近くにある吃音症に詳しい病院を探してみると良いでしょう。

 

また、お住まいのエリアを管轄している市役所や区役所の窓口に尋ねるといった方法もあります。

DSM-5による吃音症の診断基準

吃音症は、DSM-5上では「小児期発症流暢症 / 小児期発症流暢障害」という名称です。DSM-5とは、アメリカ精神医学会が作成した精神疾患に関する国際的な診断基準になります。

 

スムーズに会話をすることが困難で、症状の項目で挙げた状態(音を繰り返す・音を伸ばすなど)が長期的に続いた場合、「小児期発症流暢症 / 小児期発症流暢障害」と診断される可能性があります。また、症状によって「話すことへの不安があるか」や「職業を遂行する能力が制限されてしまっているか」なども、ふまえて診断されます。他の医学的疾患や精神疾患が原因でないことも診断の条件です。

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吃音症の治療方法は?

今のところ、吃音症には確立した治療法はありませんが、症状を和らげる方法は複数あります。

 

ただし、利用できる支援は、本人の年齢や状態、環境などによって異なります。

 

成人してから受けられる治療の例としては「言語聴覚士による指導・支援」が挙げられます。

 

リハビリテーション科や耳鼻咽喉科のある病院で受けられますが、どの病院でも対応しているわけではないため、事前に問い合わせるなどして調べる必要があります。

 

吃音症の治療に対応している場合は、公式サイトに記載されている場合が多いです。

吃音症のある方が仕事をする上で大切なこと

吃音症のある方が仕事を続けるうえで大切なことや、工夫できるポイントについて解説します。

環境調整

もしも、吃音症の症状により難しいと感じる業務があれば、業務の進め方を変えたり、コミュニケーション手段の代替案を検討したり作業量を減らしたり、別の仕事に替えてもらったりと、環境調整をおこなうことも視野に入れましょう。

 

ただし、環境調整をするためには、会社や上司へ症状を伝える必要があります。

 

他者へ伝えるときのポイントは、症状だけでなく「どのようなことで困っているのか?」「どのような配慮が得られると助かるのか」を具体的に話すことです。

 

とはいえ、人に話したくないと考える方もいらっしゃるため、自分の意思や状況も考えながら、まずは上司や先輩、同僚で話しやすく、理解を示してくれそうな相手から相談してみると良いでしょう。

 

上司や先輩のほか、産業医や社内カウンセラーなどの社内窓口へ相談する方法もあります。

伝えることに意識を向ける

上手く話すことではなく、伝えることに意識を向ける方法も試してみると良いかもしれません。

 

例えば、会話のなかに、ジェスチャー(身振りや手振りなどのしぐさ)を入れたり、表情で表現したりすることが挙げられます。

 

また、大切な内容を上手く話せなかったときは、後から文章でも送るなどして、正しく伝わるようなフォローを心掛けることも有効です。

支援を活用する

発達性吃音は、発達障害者支援法の支援対象に含まれています。そのため、症状が一定の基準に達している場合は、障害者手帳の取得が可能です。障害者手帳を取得すると、例えば、障害者求人への応募ができるようになります。

 

障害者求人は、あらかじめ雇用主に症状を伝えたうえで採用される仕組みです。合理的配慮が受けやすく、長く仕事を続けやすいという利点があります。

 

ただし、吃音の症状があるからといって、必ずしも障害者手帳を取得できるわけではありません。申請をするためには医師の診断書が必要であるため、障害者手帳の取得を検討する場合は、まず医療機関へ相談してみましょう。

吃音症などで仕事にお悩みのある方へ

吃音症などの症状により、仕事にお悩みのある方は「就労移行支援」の利用を検討してみるのも良いでしょう。

 

就労移行支援とは、吃音症を含め、さまざまな障害のある方の就職を支援する福祉機関のひとつです。

 

「LITALICOワークス」では、全国に就労移行支援事業所を展開し、「症状とうまく付き合いながら働いていけるための方法」や「就職先と連携して働きやすい環境の構築」などのサポートを行なっています。その他、「面接対策」や「就労後の面談」「職場体験の実施」などのサポートもしています。

 

相談や見学も受け付けているため、お悩みのある方はお気軽にお問い合わせください。

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大人の吃音症のまとめ

発達性吃音症は、幼児期(2〜4歳頃)に発症することが多いものの、大人になってからも症状が残るパターンも見られます。また、成人後にケガや病気、ストレスにより、獲得性吃音の症状が出ることもあります。

 

大人の吃音症は、日常生活だけでなく職場での悩みにつながることも少なくありません。

 

もしも「吃音症かもしれない」と思ったら、一人で抱え込まず、支援や専門機関の利用を検討してみると良いでしょう。

 

そして仕事にお悩みのある方は、LITALICOワークスまでお気軽にお問い合わせください。一緒に自分らしく働く方法を考えていきましょう。

更新日:2023/11/29 公開日:2022/04/15
  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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