障害者手帳という名称は知っていても「どのような人がもらえるの?」「持っているとどのような支援が受けられる?」など疑問に思うことがありませんか?
障害者手帳とは一定以上の障害がある方に交付される手帳のことです。障害者手帳には「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」と3つの種類があります。
この記事では障害者手帳の種類や申請方法、受けられる支援、メリット・デメリットなどを解説します。
障害者手帳という名称は知っていても「どのような人がもらえるの?」「持っているとどのような支援が受けられる?」など疑問に思うことがありませんか?
障害者手帳とは一定以上の障害がある方に交付される手帳のことです。障害者手帳には「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」と3つの種類があります。
この記事では障害者手帳の種類や申請方法、受けられる支援、メリット・デメリットなどを解説します。
目次
障害者手帳とは「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つを総称した呼び名のことです。障害者手帳は一定以上の障害のある方が申請することで取得できます。
障害者手帳の制度はそれぞれ異なります。身体障害者手帳は「身体障害者福祉法」、精神障害者保健福祉手帳は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に基づき、制度が施行されています。療育手帳は法律ではなく厚生労働省からの通知をもとに各自治体が運営しています。
対象となる障害の例は以下の通りです。
平成23年障害者基本法の改正により、発達障害について「精神障害者保健福祉手帳」の対象となりました。知的障害を伴う発達障害の場合は「療育手帳」も取得可能な場合があります。
いずれの障害者手帳の場合でも取得することで、障害者総合支援法に基づき、障害のある方が生活や就職に関する支援を受けられるようになります。
また、障害者手帳の中には有効期限が設定されているものがあります。その場合は障害者手帳の更新手続きが必要です。
障害者手帳には障害の状態などにより等級が分かれています。身体障害者手帳の等級は1~6級、精神障害者保健福祉手帳の等級は1~3級があります。また、療育手帳の等級は原則「重度」と「それ以外」に分かれています。(自治体によってさらに細分化されている場合もあります。)
この障害者手帳の等級によって、受けられるサービスの内容などが変わります。
身体障害者手帳は日常生活における支障の程度や症状の種類により、7つの障害等級に区分され、6級以上の障害に対して交付されます。等級の数字が小さければ小さいほど、障害の程度は重くなります。
7級にあたる障害は単独の障害では身体障害者手帳の交付対象とはならず、7級に該当する障害が2つ以上ある場合などに交付対象となります。
身体障害者手帳の等級は障害ごとに等級表によって細かく決められています。
例えば聴覚障害の3級は「両耳の聴力レベルが 90デシベル以上のもの」、6級では「両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの もしくは 一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの」などと記載されています。
身体障害者手帳の対象となるのは以下のような障害で、いずれも一定以上で永続することが要件となっています。
精神障害者保健福祉手帳の等級は1~3級まであり、「精神疾患の状態」と「能力障害の状態」という2つの基準において判断されます。
精神疾患の状態は診断名によって変わります。例えば統合失調症の1級の場合、「高度の残遺状態又は高度の病状があるため、高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるもの」などが等級の判定基準とされています。
能力障害の状態は日常生活や仕事においてどのような困難があるかによって判断されます。1級の場合「社会的手続をしたり、一般の公共施設を利用することができない」「金銭管理能力がなく、計画的で適切な買物ができない」「調和のとれた適切な食事摂取ができない」などがあり、いくつかに該当するものを基準として記されています。
すべての精神疾患で長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方を対象にしています。また、障害者手帳を申請するには、その精神疾患で初めて診察を受けてから6ヶ月以上経過していることが要件となっています。
精神障害者保健福祉手帳の対象となる精神疾患は以下を指します。
※双極性障害は現在、「双極症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「双極性障害/躁うつ病」といわれることが多くあるため、ここでは「双極性障害(双極症)」と表記します。
療育手帳はほかの障害者手帳と違い、等級は「重度」と「それ以外」に区別されています。ただし、自治体によってはさらに細分化しているところもあります。また、療育手帳の名称も自治体によって異なり「愛の手帳」「愛護手帳」などと呼ばれることがあります。
ここまで障害者手帳の等級について紹介しましたが、障害年金の等級と関係があるのか疑問に思う方もいるでしょう。
障害年金は独自の基準で等級を分けられています。障害者手帳の等級とはまた別の基準で判断されます。そのため、障害者手帳がなければ障害年金に申請できないというものではありません。
障害年金について詳しく知りたい方は、リンク先をご覧ください。
ここでは、障害者手帳を取得した場合のメリットとデメリットとなりえることを紹介します。
障害者手帳を持つことで経済面や就職面の支援などメリットがあります。
障害者手帳を取得すると公共料金の割引や、助成金制度、税金の軽減などが受けられます。
ただし、障害者手帳の種類や等級、各自治体などにより受けられるサービスは異なります。詳細はお住まいの自治体のWebサイトや障害福祉窓口などでご確認ください。
主な料金の割引や助成の一部を以下に紹介します。
障害者手帳を取得すると一般の求人に加えて障害者雇用求人に応募できるようになります。
障害者雇用求人は障害のある方の採用を前提としているため、障害特性に合わせた合理的配慮を受けることで働きやすくなります。ただ、一般求人に比べて、障害者雇用求人は求人数や職種の種類などが少ないという面もあります。
障害者手帳を取得することで、一般求人と障害者雇用求人の両方に応募が可能になりますので、就職の選択肢が増えます。
基本的に障害者手帳を取得することにデメリットはありません。
デメリットを挙げるとすれば、障害者手帳の申請や更新などの手続きという手間がかかることです。また、紛失や住居転居した場合なども手続きが必要となります。
手続きには書類や写真などを準備したり、自治体によっては交付されるまでに1~3ヶ月程度かかったりすることがあります。
また障害者手帳を取得することに心理的抵抗を感じる場合は、特性や困りごとに合わせた必要なサービスを享受するための手続きだと考えるといいでしょう。
ここでは、障害者手帳の申請方法を紹介します。精神障害者保健福祉手帳と身体障害者手帳は基本的な部分が同じなので合わせてお伝えします。
精神障害者保健福祉手帳と身体障害者手帳は以下のように申請を進めます。
また、本人による申請が困難な場合は代理として家族などの方による申請も可能となる場合があります。その場合は、代理人の本人確認書類や委任状などの書類も必要になります。
窓口で手続きする方法のほかに、郵送申請の方法もあります。申請手続きや交付の基準は自治体によって異なりますので、詳細はお住まいの自治体の障害福祉窓口などで確認しましょう。
療育手帳の申請手続きは以下のように進めます。
申請手続きや交付の基準は自治体によって異なりますので、障害者手帳の申請手続きは、自治体により一部異なる場合があります。取得を検討されている方はお住まいの自治体の障害福祉窓口に確認するようにしましょう。
ここでは、障害者手帳に関してよく聞かれる質問に回答します。
障害者手帳のことが誰かに知られるのではと不安に思う方もいるかもしれません。自分から障害者手帳を見せない限り、障害者手帳の保持を周りの人に知られることはありません。ただ、年末調整で障害者控除を受ける場合は会社に知られる可能性があります。
障害者手帳の取得は必須ではありません。障害者手帳の発行には申請が必要になります。そのため、申請をしていないのに自動的に障害者手帳が送られてくることはありません。
障害者手帳の交付を受けると、障害者総合支援法の対象となります。障害者総合支援法では、就職に関するサポート「就労移行支援」や医療費の助成である「自立支援医療制度」など各種サービスを受けられます。
ただし、サポート内容によっては障害者手帳がなくても利用できる場合があります。詳しくは障害福祉窓口などで確認しましょう。
就労移行支援は一般企業などに就職を希望する障害のある方々へ、働くためのさまざまなサポートをおこなう障害福祉サービスです。
LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、これまで1万3千人以上の方の就職をサポートしてきました。
障害のある方が自分らしく働くために、ストレスコントロール・パソコンプログラム・企業インターン・面接練習など一人ひとりに合わせたサポートを提供しています。
障害者手帳がなくても利用している方もいます。「一般雇用か障害者雇用で働くか悩んでいる」「体調が安定せず働けるか不安」などお悩みのある方は、まずは就職支援のプロに相談してみませんか?
大学時代に精神障害の診断を受け、その後ひきこもり生活を続けていたFさん。
体調が安定したため、就職しようとしていましたが、就活に不安な気持ちがありました。そのため、就活をサポートする支援機関を探したところ、就労移行支援事業所「LITALICOワークス」があることを知りました。そのときに障害者手帳がなくても利用できる可能性があると知り、相談することにしました。
その後、住んでいる市役所にも確認し、障害者手帳なしで利用を開始することができました。
利用当初は障害者雇用で働くことへ抵抗がありました。しかし、障害理解を深め、企業インターンで実際の職場で働く体験をしていくうちに、「自分は合理的配慮を得て働くことで安定して働き続けられるだろう」と気づきました。その後、障害者手帳を取得して障害者求人での就職を果たしました。
このように障害者手帳を取得した方もいます。またFさんとは違い、障害者手帳を持っていても一般雇用で働いている方もいます。もし今後の働き方にお悩みがありましたら、お気軽にLITALICOワークスまでご相談ください。
障害者手帳を取得することで、税金の控除や公共料金の割引などが受けられ、生活するうえでの助けとなるでしょう。また、働くうえでも障害者求人に応募ができるようになるため、選択肢が広がります。
障害者手帳の取得におけるメリット・デメリットを整理したうえで取得を検討するといいでしょう。
障害があって働くことに悩んでいる方は、支援機関を活用しながら自分に合った仕事を探すことが大事です。LITALICOワークスでは障害のある方が自分らしく働くためのサポートをしています。「仕事が長続きしない」「体調優先で働きたい」「自分に合った仕事が分からない」という方はぜひ一度お問い合わせください。
監修
行政書士/親なきあと相談室主宰/社会保険労務士
渡部伸先生
慶應義塾大学法学部卒後、出版社勤務を経て、行政書士、社会保険労務士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。現在、渡部行政書士社労士事務所代表。自身も知的障害の子どもを持ち、知的障害の子どもをもつ親に向けて「親なきあと」相談室を主宰。著作、講演など幅広く活動中。
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