朝起きたときに「仕事に行きたくないな」と思うことはありませんか?
仕事に行きたくないと感じる理由には仕事のプレッシャーや人間関係などさまざまありますが、そのうちの一つとしてうつ病の症状が影響している可能性もあります。
うつ病の症状が仕事に影響しているときは無理をせず、適切な治療を受け、症状を軽減させることが大切です。
この記事では仕事に行きたくないと思ったときに理由として考えられること、うつ病かどうかの目安や受診先、対処法などについて解説します。
朝起きたときに「仕事に行きたくないな」と思うことはありませんか?
仕事に行きたくないと感じる理由には仕事のプレッシャーや人間関係などさまざまありますが、そのうちの一つとしてうつ病の症状が影響している可能性もあります。
うつ病の症状が仕事に影響しているときは無理をせず、適切な治療を受け、症状を軽減させることが大切です。
この記事では仕事に行きたくないと思ったときに理由として考えられること、うつ病かどうかの目安や受診先、対処法などについて解説します。
目次
仕事に行きたくないと感じる理由はさまざまあります。たとえば「仕事で責任ある仕事を任され、プレッシャーを感じる」「職場の人間関係がうまくいかない」などが原因でストレスを感じる場合もあるでしょう。
仕事に行きたくないと感じる理由として考えられるものを3つ挙げて紹介します。
仕事に行きたくないと感じる理由の一つとして、担当している仕事の内容や量が合わず、ストレスとなっていることが考えられます。
仕事の責任が重いこともストレスの原因となり得ます。負っている責任が自分の能力に釣り合っていないと感じたり、失敗したときにリカバリーが難しい職場環境だったりすると、「仕事に行きたくない」と感じることもあるでしょう。
人間関係の悩みがストレスになっている方もいます。職場では毎日同じ人たちと長い時間一緒にいることが多いため、同僚や上司との人間関係がうまくいかない場合はストレスも大きくなります。
「仕事に行きたくない」と感じる背景には、うつ病の症状が影響している可能性もあります。
うつ病は抑うつ気分や興味または喜びの喪失などの精神面の症状とともに、不眠や疲労感などの身体面の症状が表れることのある精神疾患の一つです。その症状によって、仕事に対する意欲が低下したり、疲労感が強く仕事ができなかったりすることも考えられます。いずれにしても、本人の努力だけで解消できるものではなく、甘えや怠けのせいでもありません。休養や治療など適切な対応が必要な状態といえます。
うつ病は生涯に日本人の約16人に1人が経験するといわれており、決して珍しい病気ではありません。
うつ病は早期発見・早期治療をすることで、早期回復にもつながります。「仕事に行きたくない」という気持ちだけでなく、精神面や身体面に症状が表れている場合は精神科もしくは心療内科を早めに受診するようにしましょう。
仕事に行きたくないことは誰にでもあるため、それだけではうつ病かどうかは判断できません。見分けるポイントとして「症状」と「期間」があります。
以下のような症状が2週間以上続いている場合は、うつ病の可能性があるといわれています。
精神面
身体面
仕事においては「頭がぼーっとすることが増え、その結果ケアレスミスが増えたり、新しい業務を覚えられなくなったりする」「気分が落ち込み、仕事に行けなくなる」「周囲の人とのコミュニケーションを苦痛に感じる」などの影響が出る場合もあります。
これらの精神面・身体面での症状がすべて一度に表れるわけではありませんが、思い当たる症状があり、それが2週間以上続いている場合は、病院の受診を検討しましょう。
仕事に行きたくない原因がうつ病かもしれないと思ったときに、どういった流れで診察を受けるのかを紹介します。
うつ病の診断は精神科や心療内科などで受けることができます。精神科や心療内科というとなじみがなく不安を覚える方もいるかもしれませんが、受診の流れはほかの疾患と大きくは変わりません。
診察では、どのような症状がいつから出ているのかを聞かれますので、事前に症状についてまとめたメモを用意するといいでしょう。
うつ病と診断された後は、治療を進めます。治療は休養・薬物療法・精神療法などをおこないます。
うつ病は休養を取って心身を回復させていくことが大切です。主治医にどのくらいの休養が必要か確認したうえで、残業を減らす、残業をしない、勤めている会社で休職の制度があれば活用するなど、休める時間を確保していきましょう。
次に、治療では薬を用いて症状を緩和させていきます。うつ病は脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで生じると考えられています。そのバランスを整えるために、主に抗うつ薬を用いて治療を進めていきます。
薬は個人個人で合う・合わないがあり、また抗うつ薬は効果が出るまで2週間前後かかることがあります。 自己判断で服薬を中断すると症状が悪化する可能性があります。「効き目が感じられない」「副作用がつらい」など気になることがあったらまずは主治医に相談しましょう。また、精神療法では、認知行動療法などが主におこなわれます。認知行動療法とは、悲観的に考えてしまうパターンなどに気づき、バランスのとれた考え方ができるようにすることで、ストレスを緩和させる手法です。
うつ病の症状が影響して仕事に行きたくないという気持ちが出ているときは、無理してそのまま働き続けると症状が悪化することも考えられます。そのため、状況に合わせてなんらかの対処をしていくことが大切です。
うつ病で仕事に行きたくないと思うときの対処法について、5つ紹介します。
ストレスの原因が分かっている場合(例:業務過多や上司との人間関係など)は、職場へ相談をして業務量の調整や配置転換などをしてもらうことも有効です。
相談先としては上司や人事の担当者、産業医、メンタルヘルス窓口などがあります。勤める会社にそういった窓口がないか確認し、自分が相談しやすいところから相談してみるといいでしょう。
うつ病と診断された場合、休職して療養に専念するのも一つの方法です。まずは主治医にどのくらいの休養が必要か確認しましょう。そのうえで、休職期間や給与の有無など就業規則で確認してみましょう。不明な点は人事部に確認してみるといいでしょう。
会社から給与の支給がない場合には、一定の条件を満たせば傷病手当金が受給できます。傷病手当金は給与の約3分の2程度が支給される制度です。支給されるには各種条件などがありますので、詳しいことは以下の記事をご参考ください。
休職してから復職する際はリワークと呼ばれる職場復帰支援プログラム(※)を受けることもできます。復職に不安がある方は検討してみることをおすすめします。
(※)復職支援プログラムなどの名称で呼ばれることもあります。
休職制度がない場合や、会社に業務内容や配置変えなどを相談しても状況が変わらず働くことが困難な場合などがあれば、退職や転職を検討することも必要になるでしょう。
うつ病の症状が出ているときはまずはうつ病の回復を優先し、症状が落ち着いてきた頃に検討するようにしましょう。また、自分一人だけでは判断せずに主治医や専門機関、家族などに相談をしながら進めることが大切です。
うつ病の方が転職をする場合は、障害者雇用で働くという選択肢もあります。障害者雇用で働くことで、障害のある方が働きやすくなるための配慮(合理的配慮)を受けやすくなるメリットがあります。
障害者雇用で働くためには、障害者手帳の取得が必要となります。うつ病の場合は精神障害者保健福祉手帳の対象となる可能性があります。取得には条件がありますので、詳しくは下記の記事でご確認ください。
勤めている会社以外の専門機関に相談する方法もあります。仕事について相談できる窓口は複数あり、たとえば厚生労働省の運営する「こころの耳」では電話、SNS、メールで相談を受け付けています。「仕事に行きたくない」と感じて困っているときは外部の専門機関も上手に活用しましょう。
うつ病の影響で「仕事に行きたくない」「仕事ができない」と悩んで転職を考えている方は、支援機関を活用して転職活動を進めていく方法もあります。障害や体調についての相談や具体的なサポートの説明を受けることができます
ハローワークには専門援助部門などのような障害者相談窓口があり、障害への専門的な知識がある担当者が仕事に関する相談対応や求人紹介、それに就職活動・就職した後のサポートなど幅広く実施しています。
一般求人と障害者求人を併用して就職活動をされている方もいるため、障害者求人で働くかどうか悩んでいる方も、まずは障害者相談窓口で相談してみてもいいでしょう。
地域障害者職業センターでは、作業スキルや精神面の特徴などを把握したうえで、必要なサポートをおこなっています。具体的には働くために必要なスキルやストレス対処法などを学ぶプログラムの提供や、就職活動などのサポートがあります。また、就職した後も一定期間(標準2~4ヶ月)「ジョブコーチ」と呼ばれるスタッフを職場に派遣して長く働くためのサポートもおこなっています。
障害者就業・生活支援センターはうつ病などの障害がある方へ、日常生活と仕事の一体的なサポートを提供している支援機関です。生活面では困りごとの相談ができるだけではなく、金銭管理や健康管理などのアドバイスなどもしています。仕事の面では就職に向けた業務スキルなどのプログラム、企業で職場を体験する実習の斡旋、就職活動のサポートなどの提供をしています。
就労移行支援事業所は、障害者総合支援法に基づき、障害のある方の一般企業などへの就職をサポートする通所型の福祉サービスです。一般企業への就職を目指す障害のある方(65歳未満)を対象に、就職に必要な知識やスキル向上のためのサポートをおこないます。また就職だけではなく、就職した後長く働き続けられるようにサポートもおこないます。
就労移行支援事業所のLITALICOワークスでは、障害のある方が自分らしく働くことができるように、一人ひとりにあったサポートを大切にしています。
たとえば、うつ病の症状を理解し、職場で長く働き続けるために、自己分析や障害理解、ストレス対処法、対人関係のスキルを取得するためのプログラムなどを提供しています。それだけではなく、企業インターンを通して自分に合う職場はどのようなものなのか、就労支援スタッフと一緒に考えていきます。
就職した後も、本人が長く働き続けられるように、本人が不安に感じるところをスタッフと一緒に解決法を考えたり企業との3者面談を通して双方の理解を促したりします。
休職中の方も一定の条件を満たせば、利用できる可能性があります。「復職や再就職に不安を感じる」「無理のない働き方がしたい」などお悩みのある方はぜひ一度ご相談ください。
ここではうつ病が原因で仕事に行きたくないと感じていた方が就労移行支援事業所「LITALICOワークス」を利用して就職した事例を紹介します。
Cさんは新卒で入社した会社に勤めて7年目で、朝起きると「仕事に行きたくない」と思うことが増えました。それでも「職場に迷惑がかかる」「自分が行かないと…」と無理やり出社していました。しかし、あるときベッドから起き上がることができず、病院に行き、そこで「うつ病」と診断されました。
Cさんは療養に専念するため退職しました。しばらく療養したのちに、Cさんは主治医の勧めで就労移行支援事業所「LITALICOワークス」の利用を開始します。
自己分析のプログラムを通じて、何かあったときに「自分のせいだ」と悲観的に考え、ストレスがたまる傾向があることが分かりました。そこでどうすれば気持ちが楽になるのかをスタッフと一緒に考えました。たとえば「ネガティブな気持ちを紙に書き出す」「好きな音楽を聴いて切り替える」などに取り組み、自分に合う対処法をみつけていきました。
また、「企業インターン」にも参加し、業務量や納品日など上司と相談しながら、自分のペースで働くことができる職場環境だと安心して働けることに気づくことができました。
ストレス対処法と自分に合う職場環境について分かってきたCさんはスタッフのサポートを受けながら、就職活動を進めていきました。その結果、就職が決まりました。
就職後も就労定着支援のサポートの一連で定期的にスタッフと面談をしながら働いています。また、職場に伝えづらいことでもスタッフと一緒に解決方法を考え、そのうえで企業との3者面談で相談できるため、Cさんは困ったことがあっても安心して長く働けているようです。
Cさんは前職では「仕事に行きたくない」と悩むこともありましたが、現在では自分のペースで働くことができ、充実感を得ることができています。
「仕事に行きたくない」と思うことは社会人なら誰しも思ったことがあるでしょう。ですが、仕事に行きたくない背景に、うつ病の症状が影響している可能性もあります。
仕事に行きたくないと感じたときは、自分の心身の状態をチェックしてみて症状が少しでも表れたら、早めに精神科や心療内科などを受診しましょう。また転職を考える場合は、支援機関の活用も検討してみるといいでしょう。
LITALICOワークスでは障害のある方が自分らしく働けるようサポートをしています。仕事や働き方のお悩みがあればお気軽にご相談ください。
監修者
監修 医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント
染村 宏法
大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。
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