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適応障害(適応反応症)で退職する流れとは?退職の流れや活用できる制度を紹介

更新日:2024/06/29

適応障害(適応反応症)は特定のストレスが原因となって発症しますが、そのストレスを軽減させることで多くの場合回復します。適応障害(適応反応症)の回復の観点から、療養に専念することは一つの選択肢となります。

 

しかし、適応障害(適応反応症)の症状が影響して仕事を続けることが難しく、退職するか悩んでいる方もいるかもしれません。

 

退職は大きな決断となるため焦って決めるのではなく、さまざまなことを考慮したうえで判断することが大切です。

 

この記事では、適応障害(適応反応症)で退職する前にできること、退職の流れ、退職した後に活用できる支援制度などを紹介します。

適応障害(適応反応症)で退職する前にできること

適応障害(適応反応症)の症状が影響して仕事を続けることが難しくなったとき、退職するかどうかで悩む方もいるでしょう。ここでは、退職を決意する前にできることを4つ紹介します。

 

※適応障害は現在、「適応反応症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「適応障害」といわれることが多くあるため、ここでは「適応障害(適応反応症)」と表記します。

職場復帰支援プログラム(リワーク)の活用を検討する

適応障害(適応反応症)で休職中の方は職場復帰支援プログラム(リワーク)(※)を活用できます。

(※)「復職支援プログラム」などの名称で呼ばれることもあります。

 

職場復帰支援プログラム(リワーク)とは、適応障害(適応反応症)など精神的な不調で休職した方を対象に、円滑に職場復帰ができるようにリハビリテーションをおこなうためのプログラムです。

 

職場復帰支援プログラム(リワーク)では、以下のようなことに取り組みます。

  • 勤怠安定に向けて、生活リズムを整える
  • 仕事を想定とした軽作業や事務作業
  • 再発防止のための症状理解やストレスコントロール など

リワークは医療機関や公的機関などで実施しています。気になる方は主治医に相談してみましょう。

症状を理解する

再発防止のために、自分の適応障害(適応反応症)の症状を理解することが大切です。どのようなときにストレスを感じ、どのような症状が出るかを理解することで、再発防止のための対処法を考えやすくなります。

合理的配慮を受けられないか相談する

合理的配慮とは、障害のある人が困難に感じていることを職場が過重な負担にならない範囲で配慮を提供する制度です。雇用分野において障害のある人もない人も平等な機会が得られるように「障害者雇用促進法」により、義務付けられています。

 

適応障害(適応反応症)については、必ずしも合理的配慮の対象となるとは限りませんが、適応障害(適応反応症)を発症する背景に発達障害や双極性障害、ほかの不安障害など、合理的配慮を必要とする疾患がある場合があります。合理的配慮によって、業務内容・量の調整や配置転換などがおこなわれストレスが軽減させることで、原疾患とともに適応障害(適応反応症)の症状の緩和にもつながるでしょう。

 

合理的配慮は職場と本人が相談しながら実施するため、希望する人は上司や産業医、人事の担当者、社内のメンタルヘルス窓口などに相談してみるといいでしょう。

外部の専門機関に相談する

適応障害(適応反応症)に関する悩みが社内で相談しづらい場合には、外部の相談窓口を活用する方法もあります。

 

厚生労働省の運営するこころの耳には相談窓口が設置されており、電話、メール、SNSで仕事に関する悩みを相談することが可能です。ほかにも自治体や民間企業などで気軽に相談できる窓口が設置されていることがあります。

 

 

ここでは、適応障害(適応反応症)の方が退職をする前にできることを紹介しました。自分ができそうなことからはじめ、それでも仕事を続けることが難しいと感じたときは退職や転職についても検討してみるといいでしょう。

 

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適応障害で退職する流れ

ここでは、適応障害(適応反応症)で退職する際のタイミングや伝え方などの流れを紹介します。

退職は2週間以上前に伝える

適応障害(適応反応症)で退職の意思を伝えるタイミングですが、民法第627条では2週間前に職場に退職を伝えれば辞めることができると定められています。(※1,※2)

 

また、就業規則に「○ヶ月前に退職を伝える」旨の定めがある場合もあります。その場合は、原則として就業規則の規定が適用されますので、事前に確認しましょう。今すぐに退職しなくてはいけない事情がないのであれば、就業規則の定める期間を目安に退職を伝えるといいでしょう。(※3)

 

(※1)期間によって報酬を定めた場合は別の定めがあります。
(※2)契約期間を定めた雇用の場合は、やむを得ない事由がある場合を除いて、原則退職をすることはできません。(例外として、契約期間である5年を超え、またはその終期が不確定である場合は、5年を経過した後いつでも退職することができるとされています)
(※3)退職申し入れ期間が極端に長い場合は、労働者の退職の自由が極度に制限され、公序良俗の観点から無効とされる場合もあります。

退職を伝えるタイミングに疑問点がある場合は、以下の窓口に相談することもできます。

退職については、まず主治医や産業医に相談するとよいでしょう。その後、遅くても退職の2週間以上前までには、上司や職場に伝えてみましょう。

主治医や産業医にも相談する

適応障害(適応反応症)の症状が影響して仕事を続けることが困難な場合は、一人で抱えこまず、主治医や産業医にも相談するといいでしょう。

 

産業医とは従業員が50人以上の職場に選任が義務付けられていて、働いている方の健康管理などを担当する医師のことです。

 

産業医のほかにも、社内にメンタルヘルスの窓口が設置されていることがあります。「これ以上働くのが難しい」「すぐに退職したい」という場合、こうした窓口に相談することもできます。

退職を上司へ伝える

基本的に退職は上司へ伝えます。ただし、就業規則に退職手続きの記載があれば、その記載通りの方法で伝えるようにしましょう。

 

適応障害(適応反応症)の有無にかかわらず、退職は双方の合意ではなく労働者から伝えれば有効となります。上司に伝えた結果、退職を引き止められた場合も退職することは可能です。ただ、引き止めを振り切って退職するのも労力がかかる可能性があります。そのような場合は、自分だけで解決しようとせずに以下のような相談窓口などを活用しましょう。

適応障害(適応反応症)を理由とした退職の伝え方

適応障害(適応反応症)を問わず、退職の理由は特に定めはありません。職場に適応障害(適応反応症)について伝えている場合はそのまま伝えてもいいでしょう。適応障害(適応反応症)のことを伝えていない場合、適応障害(適応反応症)という診断名を出して伝える必要はなく「一身上の都合」や「健康上の理由により」などと伝えるといいでしょう。

適応障害の方が退職するときのQ&A

ここでは、適応障害(適応反応症)の方が退職するときによくある質問について回答します。

Q 適応障害(適応反応症)を理由とした退職は甘えなのでしょうか。

適応障害(適応反応症)の症状が仕事に影響がでると「仕事を辞めるなんて甘いのでは」「退職は逃げなのでは」「ほかの人はできているのに」と自分を責めてしまう方がいるかもしれません。

 

しかし、仮に同じ環境でもストレスの感じ方は人によって異なります。心身の不調をきたしたことは、決して甘えではありません。自分を責めずに、自分の体調を大切にしましょう。

 

適応障害(適応反応症)は多くの場合、ストレスを軽減させることで回復します。自分がどういったことにストレスを感じやすいか、どのように対応するとそのストレスが軽減されるかを把握していくことが大切です。

 

そのため、退職することも選択肢のうちの一つです。さきほど、退職する前にできることをお伝えしましたが「試してみてもうまくいかなかったら転職や退職する道もある」という気持ちで、無理せず取り組んでみてください。

Q 退職したいけれど、なかなか会社に言い出せません。どうしたらいいのでしょうか。

職場の状況や人間関係などにより、退職を伝えづらいときは「労働条件相談『ほっとライン』」のほかにも、「日本司法支援センター(いわゆる法テラス)」や自治体の窓口などがあります。相談しやすい場所に相談してみるといいでしょう。

Q 退職を視野にいれているが、後悔しないか、また退職した後の生活や転職が心配です。

適応障害(適応反応症)はストレスが原因で発症するため、職場にストレスとなるものがある場合、退職を検討する人もいるでしょう。

 

しかし、退職によって経済的な問題や仕事探しなどで不安な気持ちがあるかもしれません。そのようなときに活用できる支援制度・機関について知っておくといいでしょう。この後詳しく紹介します。

 

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適応障害(適応反応症)の方が活用できる経済的な支援制度

この章では適応障害(適応反応症)の方が活用できる、経済的な支援制度について紹介します。

自立支援医療(精神通院医療)

自立支援医療制度(精神通院医療)は適応障害(適応反応症)などの精神障害に対する治療を続ける必要がある方を対象に医療費の自己負担を軽減する制度です。

 

自立支援医療制度が適用されると、一般的には、通常3割負担の医療費が1割負担と軽減されます。また所得区分や症状の重症度によって負担上限月額が定められます。

 

自立支援医療制度が適用されるのは通院に関する医療費のみで、入院などは対象外となります。先ほど紹介した「職場復帰支援プログラム(リワーク)」も医療機関で受ける場合は、自立支援医療の適用となる可能性があります。

傷病手当金

傷病手当金とは健康保険に加入している方を対象に、仕事以外の事由による病気やけがなどで一定期間働けない場合に支給される手当金のことです。傷病手当金を受給するには一定の条件があります。

 

受給期間は初回支給日から休んだ期間に対して通算1年6ヶ月間です。また、傷病手当金は退職前1年以上健康保険の加入期間があると、退職してからも引き続き受給できる可能性があります。

どのように適応障害(適応反応症)を発症したかによって、傷病手当金ではなく「労災保険」による休業補償等給付が受給できる可能性があります。なお、職場での人間関係がストレスでも傷病手当金を受給できる可能性も考えられるため、自身が傷病手当金の受給対象になるかどうかは、人事部や健康保険組合などに確認をしましょう。

雇用保険の基本手当(通称:失業給付など)

雇用保険の基本手当は失業給付や失業保険などとも呼ばれる制度で、退職した方が再就職するまでの生活を保障するための手当のことです。受給するには「ハローワークにて求職活動をおこなう」などの条件があります。

また受給期間は雇用保険の加入期間などによって変わります。適応障害(適応反応症)など心身の障害により退職した方は「特定理由離職者」となり、受給期間が長くなる場合もあります。

 

詳しいことは最寄りのハローワークにお問い合わせください。

障害者手帳

適応障害(適応反応症)の方は心身の状況によっては障害者手帳を取得できる可能性があります。障害者手帳は一定の障害があることを証明するもので、取得することで税金の控除や公的機関の割引などのサービスを受けることができ、経済的な助けともなります。

生活保護

生活保護は障害有無を問わず、さまざまな理由により生活が困窮している方を対象に必要な支援をおこない自立を促すための制度のことです。生活保護では衣食住などの生活に必要となる費用や医療費、就職を目的とした訓練費用などが支給されます。

 

生活保護を受けるには条件がありますので、詳しいことは自治体の生活保護課にお問い合わせください。

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適応障害(適応反応症)で退職した方の仕事への支援

ここでは、適応障害(適応反応症)で退職した後の働き方や支援について紹介します。

 

適応障害(適応反応症)で退職した方は、次の働き方として障害を職場に開示して働く方法と障害を職場に開示しないで働く方法があります。また、障害者手帳を取得すると、障害者雇用求人に応募するという選択もできます。

どの働き方が自分に合うのか分からないという方は支援機関に相談することも方法の一つです。支援機関は以下のようなものがあります。

ハローワーク(公共職業安定所)

ハローワークは仕事探しをしている人に向けて、求人の紹介や応募書類・面接などのアドバイスなど、サポートをおこなっている行政機関です。

 

ハローワークの中には、適応障害(適応反応症)など障害のある方のための相談窓口があります。障害に関して詳しいスタッフが担当制で一貫したサポートをしています。障害者手帳がなくても相談することはできます。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは「なかぽつ」や「しゅうぽつ」などとも呼ばれ、適応障害(適応反応症)などの障害のある方に対して就職面と生活面のサポートを一体的に提供している支援機関です。基本的に障害者手帳がなくても相談することは可能です。「退職しようか迷っている」といった働くことの相談から、退職後の就職活動のサポートなどの支援を幅広くおこなっています。

就労移行支援

就労移行支援とは65歳未満の障害のある方を対象として、一般企業などへの就職から職場定着まで一貫的なサポートを提供している、通所型の障害福祉サービスです。

 

業務スキルやストレスコントロールなどのプログラムの提供、書類添削や面接練習などの就職活動に関する支援の提供などをしています。

 

就労移行支援は障害者手帳がなくても相談することはできますが、利用には自治体の判断が必要になります。詳しくはお近くの就労移行支援事業所にお問い合わせください。

【無料】就労移行支援の利用について相談する

適応障害の方の仕事探しをサポート「LITALICOワークス」

LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営し、障害のある方の「働きたい」をサポートしています。

 

LITALICOワークスでは一人ひとりの症状や得意不得意、希望する就職などを伺い、計画を立てたうえで支援をおこないます。

 

例えば以下のようなサポートをおこなっています。

  • プログラムを通して自己理解を深め、ストレスコントロールを身につける
  • 企業インターンを通して、自分が安心して働けるような職場環境を探す
  • 就職後、本人と職場の定期的な面談を通して長く働き続けるためのサポートをおこなう など

障害を開示するかどうかで悩んでいる場合でも、上記のような取り組みを通して自分に合う働き方を就労支援のスタッフと一緒に検討することもできます。その結果、障害を開示せず働くこととなった場合でも長く働き続けられるようサポートをおこないます。

 

LITALICOワークスは休職中の方も一定条件を満たせば利用できる可能性があります。相談は無料で随時受け付けていますので、「適応障害(適応反応症)で退職しようか悩んでいる」「適応障害(適応反応症)で退職したあとの働き方が分からない」という方は、ぜひ一度お問い合わせください。

【無料】今後の働き方についてLITALICOワークスで相談する

適応障害(適応反応症)が発症後、退職したMさん

適応障害(適応反応症)で退職したのち、就労移行支援事業所「LITALICOワークス」を利用して再就職した方のエピソードを紹介します。

 

Mさんは前職で介護の仕事をしていましたが、「周りはできているのに何で自分はできないのだろう」と悩むことが多くなり体調を崩してしまいました。病院に行った結果「適応障害(適応反応症)」と診断され、退職をすることにしました。その後は療養期間を経て、再就職のために役所の方から紹介された就労移行支援事業所を利用することにしました。

 

最初は週3日と無理のない範囲から通い始め、自己理解プログラムや就職活動プログラムなどに参加しました。その中で、自分らしく働くために障害を開示するという選択肢もあるということに気づくことができました。一度体調を崩して入院しますが、自分の行動や感情を日記に書いていくことで、こころを整えていきました。

 

それからは、オンラインと実際の現場を合わせて企業インターンへ参加して、自分の長所や課題などを把握していきました。

 

その中でやはり人に関わる仕事がしたいと考えていたときに現在の職場の求人を見つけて応募し、企業インターンを通して採用が決まりました。

 

Mさんは入社前に職場の雰囲気を体験することができたので、早くなじむことができたと話しています。

 

現在も自己対処をするとともに、就労定着支援のサポートの一連で就労移行支援事業所のスタッフとも定期的に面談をおこない、長期就労を目指して働き続けています。

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適応障害(適応反応症)で退職する場合のまとめ

適応障害(適応反応症)の症状が発症し仕事を続けることが難しくなった場合、これからどうしたらいいか悩む方もいるかと思います。

 

適応障害(適応反応症)の症状が仕事に影響がでると自分を責めてしまう方がいるかもしれませんが、決して甘えではありません。自分を責めずに、自分の体調を第一に大切にしていきましょう。

 

仕事を無理して続けるよりも、「退職や転職という選択肢」を視野にいれることでより職場で交渉できるようになったり、気持ちが楽になったりする方もいます。

 

退職の際に、活用できる相談窓口や支援制度・機関がさまざまありますので、一人で抱えこまず、相談してみてください。

 

LITALICOワークスでは随時相談を受け付けています。今の仕事のお悩みや今後の働き方についてお悩みがあればぜひお気軽にご相談ください。

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更新日:2024/06/29 公開日:2023/08/21
  • 監修者

    産業医科大学 特命講師

    佐々木規夫

    【資格】医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/社会医学系指導医 / 労働衛生コンサルタント

    【経歴】産業医科大学医学部卒業、大手企業の専属産業医および精神科病院での勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。

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