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発達障害の二次障害とは?症状や対処法、支援などを詳しく解説

更新日:2024/06/20

発達障害のある方は、うつ病などの精神疾患を発症しやすい傾向があるといわれています。このような発達障害に伴って発症する精神疾患など、併存症を含め二次的にあらわれる状態を「二次障害」と呼びます。

 

例えば「発達障害の特性により仕事でミスを繰り返し、上司に叱責され続けたことで気分が落ち込み・塞ぎ込み、うつ病を発症した」という場合のうつ病が二次障害にあたります。あなたも、このような二次障害に悩んではいませんか?

 

今回は、発達障害の二次障害の症状や原因とその治療法や対処法について詳しく解説していきます。

二次障害とは?

この「二次障害」とは、診断書に記載されるような医学的な専門用語ではありません。あくまでも発達障害の特性が原因で引き起こされる精神疾患などを総称したものです。

発達障害の二次障害の原因は?

発達障害の二次障害の原因として、発達障害の特性によって生じた日常生活や仕事などでの困りごとが蓄積された結果、生じることが多いと考えられています。

 

発達障害のある方は、その特性や症状が見た目では分かりにくいことが多いです。また、発達障害と診断されていない場合でも「発達障害の傾向がある」、いわゆる発達障害のグレーゾーンにいる方もいます。見た目からは特性・障害が分かりづらいことで、周囲からの理解を得られずにひとりで困りごとを抱え込んでしまうことがよくあります。

 

例えば忘れ物が多い」「集中力が続かない」「周りの意図を汲み発言するのが困難といった特性が、単なる不注意や怠けと勘違いされ、そのミスを注意・指摘されてしまうことがあります。周囲から理解を得られていないと、本人が怠けていたり、努力が不足していると思われてしまうことがあります。

 

そうして、注意や指摘などで心身への負担が積み重なることが原因となり、さまざまな二次障害を引き起こしやすくなると考えられています。

 

二次障害を防ぐには、日常生活や仕事において工夫や対策をすること、また、周囲の人に正しく理解してもらうことや適切なサポートを受けることが大切です。

二次障害から発達障害に気づくこともある

うつ病や不安障害などの精神疾患を疑い、精神科を受診して検査を受けた結果「実は発達障害だった」「それらの精神疾患は発達障害の二次障害だった」と初めて気づくこともあります。

 

発達障害の症状の程度は、個人差があります。自分の抱えているストレスや不安が、発達障害の特性によって生じているものが原因であると気づかないまま、日常生活でつらさや不安を感じながら生活している方もいます。

 

何かしらの不安や生きづらさを感じている場合は、無理に我慢せずに、医師による診察を検討してみるといいでしょう。

発達障害の二次障害にはどのようなものがある?

発達障害の二次障害として大きく分けて、「精神・身体面」「行動面」で症状があらわれます。

精神・身体面

発達障害の二次障害として、抑うつ気分や身体の痛みなど自分に向けて症状があらわれることがあります。精神面・身体面においては、一例として、以下の通りがあります。

  • 抑うつ気分
  • 意欲の低下
  • 強い不安や緊張
  • 不眠(または睡眠過多)
  • 食欲不振(または増進)
  • 頭痛や腹痛など身体の痛み
  • ひきこもり など

行動面

発達障害の二次障害として、暴言など他者に向けて起こる症状があります。行動面にあらわれるものとして、

  • 暴力や暴言
  • 反抗的な態度

などが一例としてあります。

 

こういった発達障害の二次障害の困りごとは、単独であらわれることもあれば、いくつか併せてあらわれる可能性もあります。

発達障害の二次障害への対処法

発達障害による困りごとをしっかり把握する

発達障害の二次障害は、発達障害の特性によって生じた日常生活や仕事などでの困りごとが蓄積された結果、生じることが多くあります。二次障害へ対応するためにも、まずはどのような困りごとがあるのかを把握していくことが大切です。職場においての困りごとの例として、以下のようなものがあります。

  • 納期にいつも遅れてしまう
  • マルチタスクが苦手
  • 特定の業務が苦手
  • 業務の優先順位をつけるのが苦手
  • 一つのことに集中が続かない
  • ケアレスミスや抜け漏れが多い
  • あいまいな指示や、複数の人から指示を受けると混乱してしまう
  • 複数人の会話が苦手
  • 物音や人の動きに敏感に反応してしまう など

こういった困りごとが心身の負担となり、抑うつ気分や頭痛などの二次障害につながることがあります。そのため困りごとを軽減させ、心身の負担を減らしていくことが大切です。

 

対応方法は、困りごとによって変わってきます。本人の工夫で対応できる場合もあれば、職場の人に協力してもらう必要がある場合もあります。困りごとの把握・その困りごとへの対処法は、後ほど紹介する発達障害者支援センターなどの支援機関と一緒におこなう方法もあります。

 

支援機関によって違いはありますが、専門的な知識や経験のあるスタッフと一緒に整理していくこともできますので、一人で進めるのが難しいと感じる方は検討してみるといいでしょう。

環境調整

職場などで今の環境が合っていないと感じたときは環境調整をおこなうことで、困難を軽減し二次障害の症状を和らげることができるかもしれません。環境調整の流れですが、職場の場合は上司や人事担当者、または社内の相談窓口、産業医などへ現在抱えている困難と、その原因や解消方法を伝えて調整していきます。

 

例えば発達障害の特性により「人の話し声が気になって業務に集中できない」という場合に「聴覚過敏があることを伝えてイヤーマフをつける」ことなどがあります。

 

そのほかにも職場の人に協力をお願いできる場合は、例えば「人の出入りや動きが目に入るとそちらに注意が逸れてしまう」という特性があるときは「席をパーティションで区切る」「入り口から一番遠い席に変更してもらう」などの環境調整が考えられます。

主治医に相談する

現在、発達障害の治療で通院されている方は、二次障害についても主治医に相談をしてみるといいでしょう。その際に二次障害としてどのような症状が出ているかを伝えることで、二次障害への対処や相談先を教えてくれることもあります。もし二次障害の治療のためにほかの病院へ通うことが決まっている場合でも、主治医にはそのことを伝えておくことが大事です。

 

現在、通院されていない方は、以前通院していた病院や発達障害支援センターなどに相談をしてみるといいでしょう。発達障害のある方の相談先は後ほど掲載します。

二次障害の症状に合わせた専門医の診察を受ける

相談の後に、二次障害の症状に合わせた専門医で診察を受けることを検討してみるといいでしょう。二次障害として抑うつ状態など精神面で症状があらわれている場合は、精神科や心療内科、メンタルクリニックなどを受診しましょう。適切な治療を受けるためにも、受診する際に担当医に発達障害のあることも伝えるようにしましょう。治療方針が決まった後は、指示に従って治療に専念することが大切です。

 

精神的な症状が出ている場合は薬物療法などをおこなうことがあります。自己判断で治療を途中でやめたり、薬の服用回数を減らしたりすることは症状の改善が遅れたり、不調や悪化につながる原因にもなるので避けましょう。

 

何か気になることがある場合は、その都度相談するようにしましょう。また、場合によってはセカンドオピニオンも選択肢に入れておくといいでしょう。

支援制度・機関を利用する

発達障害のある方や二次障害の症状に悩む方が利用できる国の支援制度や公的機関のサポートを活用することも有効です。支援を利用し生活を送るうえでのストレスや負担が軽減されることで、発達障害や二次障害の症状改善につながるほか、症状の再発や予防も期待することができます。

発達障害のある方が相談できる専門機関

  • 発達障害者支援センター
    年齢を問わずに発達障害のある方やその家族からの相談を受付や対応をしている支援機関です。発達障害の未診断の方でも相談することができます。
  • 精神保健福祉センター
    発達障害を含め、こころの健康に関する相談の受付や対応をおこなっている支援機関です。
  • 障害者就業・生活支援センター
    障害のある方へ、生活と仕事への一体的な支援を提供している支援機関です。

発達障害のある方が受けられる支援制度

  • 自立支援医療(精神通院医療)
    発達障害などでの通院や薬の処方などに関する医療費の自己負担を軽減する制度です。
  • 精神障害者保健福祉手帳
    精神障害者保健福祉手帳は障害者手帳のうちの一つで、発達障害のある方はこの「精神障害者保健福祉手帳」が対象となります。取得すると税金の控除や各種割引などのサービスなどが受けられるほか、障害者雇用への応募が可能となります。
  • 障害者雇用での就職
    障害のある方一人ひとりの特性に合わせた働き方ができるように、企業や自治体などが障害のある方を雇用する制度のことです。障害者手帳を持っている方は、障害者雇用での求人へ応募することができます。
  • 就労移行支援
    一般企業への就職を希望する障害のある方を対象に、働くためのスキル取得や就職活動のサポートをおこなう支援機関です。
  • 就労継続支援
    障害のある方を対象に、働く機会や生産活動の機会を提供する支援機関です。就労継続支援には「A型」「B型」があり、雇用契約の有無などの違いがあります。

就労移行支援と就労継続支援とは?

「就労移行支援」と「就労継続支援」は障害者総合支援法で定められた障害者福祉サービスの一つです。発達障害や発達障害の二次障害により、働くことに困難やつらさを感じている方は、これらの支援制度の利用を検討してみてもいいでしょう。発達障害や発達障害の二次障害により、働くことに困難やつらさを感じている方は、これらの支援制度の利用を検討するのもおすすめです。

 

これらの就労支援サービスは、発達障害・精神疾患も支援の対象としており、発達障害の二次障害に悩む方にとっても最適な支援を受けることができます。

 

働くために必要なスキルや知識を学び、自身の発達障害の特性にあった対処法を身につけることができれば、日常生活や仕事でのストレスや社会との不適応を減らすことが期待できます。

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発達障害の二次障害のまとめ

発達障害の二次障害は、本人の工夫や治療に加えて、困難を感じる場合の対処法を学び、また周囲の人に相談し環境調整をおこなうことで、二次障害を予防することにつながります。また、発達障害の二次障害は早期発見・早期治療が重要です。

 

少しでも気になること、不安に感じることがあれば、お早めに専門機関の受診を検討するといいでしょう。

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更新日:2024/06/20 公開日:2022/02/22
  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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