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お役立ち仕事コラム

発達障害の検査方法や診断について|受診先や相談先も解説

更新日:2024/08/12

仕事において「スケジュール管理ができない」「職場の人とコミュニケーションが上手にとれない」などで悩んだ場合に「もしかしたら、自分は発達障害の傾向があるのかもしれない」と疑うことは、決して珍しいことではありません。

 

近年では、インターネットや書籍においても「大人の発達障害」を取り上げたものも多いため、自分に当てはまることが記載されていた場合には「発達障害の検査を受けるべきだろうか」と考える方もいるのではないでしょうか。

 

発達障害に関連する検査は、脳波や脳画像などの生理学的検査のほか「心理検査」があります。心理検査には、さまざまな種類や方法があります。

 

そこで、本記事では、心理検査を中心に、発達障害の診断を受けるまでの流れや検査方法、また「発達障害の傾向があるのかもしれない」と悩んだときの相談先などについてもご紹介します。

発達障害の検査・診断の流れ

発達障害の検査・診断を受けてみたいなと思ったときに、どのような流れで進めるのかな?と疑問に思うかもしれません。そこで、発達障害の検査・診断の流れについて、説明をしていきます。

 

まず、発達障害の診断ができるのは医療機関のみになります。診療科としては「精神科」や「心療内科」で受診します。受診の際の具体的な流れは以下の通りです。

【発達障害の診断までのフロー】

  1. 診察・問診
  2. 検査
  3. 診断

それぞれ簡単に説明していきます。

診察・問診

発達障害の診断の際には、まずは主治医による問診をおこないます。

 

問診では、今の生活の中で困っていることや悩みについて話します。また、発達障害は生まれつきの特性のため、子どもの頃の様子や、家族関係、学校生活でのできごとなどについて聞かれる場合もあります。

検査

医師が診断のために必要と判断した場合には、脳波や脳画像を調べる検査(CT・MRI)や、各種の心理検査をおこなう場合があります。発達障害の診断材料のひとつとして活用されている心理検査については、後ほど、詳しくご説明します。

診断について

発達障害の診断には、アメリカの精神医学会が発行している『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)が用いられます。

 

医師は問診で得られた情報や各種の検査結果、さらに診断基準を総合的に踏まえたうえで、発達障害の診断をします。

発達障害かどうかの検査・診断をうけるかお悩みの方へ

発達障害かもしれないと思ったときに、発達障害かどうかの検査や診断を受けようかどうか、悩んでしまうこともあるかもしれません。

 

発達障害とは、生まれつきの脳のタイプの違いにより、物のとらえ方や行動に特性があり、そのために社会生活で問題や不適応が続いている状態をいいます。

 

例えば、仕事上で「あいまいな指示が理解できない」「職場の人との雑談が苦手で会話が続かない」「急な予定変更にパニックになってしまう」などの困りごとが長期にわたって続いている場合、もしかしたら発達障害の傾向があるかもしれません。

 

発達障害かもしれないと思うと不安になってしまうかもしれませんが、発達障害かどうかの検査・診断を受けることによって、ご自身の特性について理解を深めるきっかけになります。そのうえ、困りごとに対する対処法を考えることで、その困りごとが軽減できる可能性があります。

 

発達障害の検査・診断を受けた方の中には、なぜ仕事がうまくいかないのか、その理由が分からず、迷走していたけれど、発達障害と分かってからは自分の特性を知り、それまでの困りごとに対する対処法を考えられるようになってからは、迷走せずに過ごすきっかけになったという方もいます。

 

もし困りごとが長期にわたって続いている場合、今回を機に受けてみてもいいかもしれません。

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発達障害の検査の方法

ここでは「心理検査」を中心に解説していきます。心理検査とは、人の知能、発達、パーソナリティ(人格)、認知機能、心理状態を客観的に測定するための検査のことをいいます。

 

大人の発達障害の場合は、心理検査のうちの「知能検査」「適応能力検査」、ほか精神障害の症状と合併していないかどうかを確認するための検査をおこなうことが多いです。

 

発達障害の傾向があるかもしれないと思って病院や支援機関などで相談をすると、ご本人の状況に合わせた心理検査をすすめられることがよくあります。そのうえ、受けるかどうかを判断し、受ける場合は後日におこないます。心理検査の結果については、検査実施日より数日後に共有されることが多いです。

 

では、心理検査の「知能検査」や「適応能力検査」について、具体的にどのような検査・内容があるのか、詳しくご説明します。

検査の種類と内容について

心理検査は大きく分けて「知能検査」「適応能力検査」というものがあります。

 

知能検査

知能検査とは、物事に対する理解や知識、課題を解決するための認知能力を測る検査です。知能検査は、発達障害の診断というよりは、併存する知的障害を診断したり、認知能力の偏りなどを調べるために用いられます。

 

知能検査で主に使われるものは「成人用WAIS」です。ほかに「鈴木ビネー知能検査」「田中ビネー知能検査」なども使われる場合もありますが、ここでは「成人用WAIS」について詳しく説明します。

 

成人用WAIS(適用年齢:16歳~90歳11ヶ月)

世界で広く使用されている成人用の知能検査です。WAISの内容は知識を問う問題や、計算問題、パズルなどで構成されています。WAISを通して、全体的な知的能力(全検査IQ)、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度を測ることができます。また全般的なIQだけでなく、個人内での能力のばらつきなどを分かりやすく知ることができるのが特徴です。

 

適応能力検査

適応能力検査とは、どれくらい社会へ適応能力があるかどうかを見るための検査です。

 

主に使われるものは「VinelandⅡ(ヴァインランド・ツー)適応行動尺度」です。ほかに「SM(社会生活能力検査)」なども使われる場合もありますが、ここでは「VinelandⅡ(ヴァインランド・ツー)適応行動尺度」について説明します。

 

適応能力検査「VinelandⅡ(ヴァインランド・ツー)適応行動尺度」

成人用WAISと同様、世界で広く使用されている適応能力検査です。その検査は、ご本人ではなく、ご本人の様子に詳しい保護者など関わる人との面接をおこない、ご本人に必要な支援を考えるうえでの指標のひとつとなっています。

 

同じ年齢の一般の方の適応行動を基準に、客観的に適応能力を数値化できるようになっています。VinelandⅡ(ヴァインランド・ツー)適応行動尺度を通して、コミュニケーションや社会性、日常生活スキルなどにおいて、どれくらい適応能力があるかを測ることができます。

発達障害の検査はどこで受けられる?

発達障害の検査は、基本的には病院や支援機関で受けることができます。

病院の場合

発達障害かどうかの診断を受けたい場合は病院にいく必要があります。診療科は「心療内科」や「精神科」になります。しかし、すべての心療内科や精神科で発達障害の検査が受けられるとは限らないため、あらかじめインターネットで調べ、発達障害の検査をおこなっているか確認してから受診するといいでしょう。インターネットで調べる方法以外にも、最寄りの発達障害者支援センターに問い合わせ、医療機関の情報を得るのも一つの方法です。

 

なお、病院の場合、発達障害の検査が必要かどうかは、診察内容に応じて医師が判断するため、必ずしも希望する検査が受けられるとは限らないことを留意しておく必要があります。

支援機関の場合

発達障害者支援センターなどの支援機関の中には、「特性を理解する」という目的で心理検査を実施しているところがあります。

 

そのため、発達障害かどうかの診断を受けるよりも前に、まずは心理検査の結果から得意・不得意について知りたい場合は、相談ができたり、心理検査を通じて自分の特性について理解を深めることが可能になります。

 

ただし、すべての発達障害者支援センターなどの支援機関でおこなっているわけではないため、こちらもあらかじめ発達障害の検査をおこなっているか事前に確認することをおすすめします。

検査にかかる料金はどれくらい?

発達障害の検査にかかる料金は、発達障害者支援センターなどの支援機関の場合は基本的に無料で受けられます。

 

病院の場合は「保険適用」か「保険適用外」かによって、費用は大きく異なってきます。

 

例えば、知能検査「成人用WAIS」の場合、病院で診察上必要と認められた検査は保険内診療となります。そのため、数千円単位の費用で受けることができます。なお、診断書や報告書を書いてもらう場合には、別途料金がかかります。

 

一方、知能検査の必要性が認められない場合や、保険診療をおこなっていないクリニックで発達障害の検査を受ける場合には、自費での検査となります。料金設定は各病院ごとに異なります。病院で知能検査を希望される場合には、受診する病院にその知能検査にかかる費用などを確認するのがいいでしょう。

 

また、保険適用でき、かつ、自立支援医療制度の「精神通院医療」を活用できる場合は、医療費の自己負担が軽減されることもあります。詳しくはお住まいの市区町村の障害福祉窓口へ確認してみてください。

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発達障害に関する相談先

ここからは発達障害に関する相談先についてご紹介します。

発達障害者支援センター

発達障害に関する総合的な相談先としては、発達障害者支援センターがあります。発達障害者支援センターは各都道府県ごとに設置されています。

 

発達障害者支援センターは、まだ発達障害の診断がついていない方の利用も可能です。そのため、発達障害かどうかの診断を受けるべきかどうか迷っている段階でも、相談ができます。

 

具体的な支援内容は発達障害者支援センターにより異なりますが、一般的には日常生活の中で困っていることについて相談できたり、就職についての情報提供やアドバイスを得られたりします。

発達障害の方が利用できる就職支援とは

ここからは、発達障害の特性によって生じる働きづらさを感じたり、新たな就職先を探したりする際に利用できるサービスについてご紹介します。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターでは、障害のある方の就業面と生活面についてサポートをおこなっています。利用にあたっては、障害者手帳をもっていない場合でも利用できる可能性があるため、まず最寄りの施設に利用できるかどうか確認してみましょう。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターとは、障害のある方の職業リハビリテーションをおこなっている専門機関で、各都道府県に設置されています。具体的には、職業準備支援やジョブコーチによる支援などがあります。

ハローワーク

ハローワークには、障害のある方などの就労を支援する「専門援助部門」という窓口があります。就職に関する相談や情報提供、障害や疾患がある方を対象とした求人の紹介などをおこなっています。

就労移行支援

就労移行支援は、就労をサポートする、障害福祉サービスの1つです。一般企業への就職のために必要となる知識や能力を高められたり、自己理解を深め自分に合った仕事を見つけるサポートをおこなっています。診断書があれば、障害者手帳を持っていなくても利用できる可能性があります。具体的な支援内容は事業所ごとによって異なります。

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LITALICOワークスの就労支援について

 

LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営し、障害のある方の「働きたい」をサポートしています。

 

LITALICOワークスでは一人ひとりの症状や得意不得意、希望する就職などを伺い、計画を立てたうえで支援をおこないます。

 

例えば以下のようなサポートを行なっています。

  • プログラムを通して自己理解を深め、ストレスコントロールを身につける
  • 企業インターンを通して、自分が安心して働けるような職場環境を探す
  • 就職後、本人と職場の定期的な面談を通して長く働きつづけるためのサポートを行う など

障害を開示するかどうかで悩んでいる場合でも、上記のような取り組みを通して自分に合う働き方を就労支援のスタッフと一緒に検討することもできます。その結果、障害を開示せず働くこととなった場合でも長く働き続けられるようサポートをおこないます。

 

LITALICOワークスは相談は無料で随時受け付けています。「仕事が長続きしなくて悩んでいる」「体調が安定しない」「自分に向いている仕事を探したい」という方は、ぜひ一度お問い合わせください。

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発達障害の検査についてまとめ

発達障害の検査として活用されている「心理検査」には、いくつか種類があります。

 

心理検査は一部の病院や支援機関で受けることが可能になりますが、発達障害かどうかの診断を受けたい場合は、病院で受けるといいでしょう。心理検査を通して、ご自身の特性(得意・不得意など)について理解を深められ、困りごとへの対処法の検討がしやすくなります。

 

「発達障害の傾向があるかもしれない」「発達障害の診断や心理検査を受けるべきかどうか悩んでいる」といった場合には、1人で抱え込まずに、病院や発達障害者支援センターなどへ相談してみるといいでしょう。

 

発達障害の特性によって生じる働きづらさを感じている場合、ぜひ就労移行支援事業所のLITALICOワークスへお気軽にご相談ください。

更新日:2024/08/12 公開日:2023/01/31
  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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