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お役立ち仕事コラム

知能検査とは?目的や種類、受けられる場所を解説

更新日:2023/11/29

「職場の人とうまくコミュニケーションがとれない」「業務の見通しを立てられず困っている」などの仕事のお悩みがある場合、もしかしたら自分は発達障害の傾向があるかもしれないと思い、発達障害を調べるのは決して珍しいことではありません。

 

大人の発達障害を調べ、自分に当てはまることが記載されていた場合、発達障害の検査をうけたほうがいいのかどうか、気になる方もいるのではないでしょうか。

 

発達障害の診断に関連する主な心理検査には、「知能検査」や「適応能力検査」があります。本記事では最も活用されることが多い「知能検査」を中心に、知能検査の内容や種類、大人の方が知能検査を受ける場合どこで受けるといいのか、知能検査にかかる費用面などもご紹介します。

知能検査とは?

知能検査とは、主に物事の理解力や知識、課題を解決する力といった、認知能力を測定するための心理検査の一つです。

 

知能検査では「Inteligence quotient(知能指数)」を略した「IQ」という値が基本的な指標になりますが、知能検査によって知能の概念や測定方法は異なります。そのため、決して「IQが高いから優秀」「IQが低いから優秀でない」と一概に言えるものではありません。

 

知能検査は、発達障害の診断というよりは、併存する知的障害を診断したり、認知能力の偏りなどを調べるために用いられます。そのため、知能検査の結果だけで発達障害と診断されることはありません。

 

発達障害の診断は、医師が問診から得た情報や各種検査結果を踏まえ、診断基準(アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版))に沿って、総合的に判断されます。

 

また、知能検査は病院での診断材料として使われるだけでなく、特性(得意、不得意など)を理解することを目的に、支援機関などで使われる場合もあります。

知能検査をうけることのメリット

知能検査を受けること自体がハードル高く感じられるかもしれません。しかし知能検査は、知的障害の診断だけではなく、ご自身の特性への理解を深めるのに役に立ちます。ここでは、知能検査を受けることで得られるメリットをお伝えします。

 

自分の特性への理解

知能検査では、ご自身のIQと年齢に応じた平均的なIQと比べることによって、自分の特性について理解を深めることができます。

 

例えば、言語や概念の理解や視覚的な情報の読み取りが得意であるが、音声言語による聴覚的な情報処理が苦手であるなど、個人の能力でのばらつきをしることができます。

 

職場での困りごとに対する対処法の検討

知能検査で出た結果をもとに、今感じている働きづらさが、どのような特性(理由)から生じているかのヒントが得られるため、対処法を考えやすくなります。

 

例えば、知能検査の結果からワーキングメモリー(作業記憶)において耳から入った情報を同時に処理することが苦手であることがわかった場合、業務中の指示方法は口頭ではなく、文字情報(チャットやメール)にしてもらうことで、業務がスムーズになる可能性があります。

 

周囲の人への説明

信頼関係を前提として職場の上司や仲間へ知能検査の結果を共有することで、周囲に自分の困りごとや働きづらさの背景を理解してもらうことにつながる可能性があります。そうすると自分の苦手な部分を補う工夫や仕組みを取り入れることや、周囲からの配慮を得やすくなることがあります

 

このように知能検査を受けることのメリットは、ご自身の特性について理解を深め、働きづらさの対処法を考えたり伝えたりすることで、今よりも働きやすくなる可能性があることです。

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知能検査の種類と内容

発達障害かもしれないと思って病院や支援機関などで相談をすると、ご本人の状況に合わせた心理検査をすすめられることがよくあります。

 

そのなかで、知能検査で主に使われるものは「成人用WAIS」です。そのほかに「田中ビネー知能検査」なども使われる場合もあります。

 

また、知能検査とは別で適応能力検査が使われる場合もあります。適応能力検査とはどれくらい社会へ適応能力があるかどうかを見るための検査のことで、主に「VinelandⅡ(ヴァインランド・ツー)適応行動尺度」が使われることが多いです。

 

ここでは、知能検査のうちの「成人用WAIS」「田中ビネー知能検査」を中心に説明をしていきます。

成人用WAIS(適用年齢:16歳~90歳11ヶ月)

世界で広く使用されている成人用の知能検査です。知能検査「WAIS」の内容は知識を問う問題や、計算問題、パズルなどで構成されています。

 

知能検査「WAIS」を通して、全体的な知的能力(全検査IQ)、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度を測ることができます。また知能検査「WAIS」は全般的なIQだけでなく、個人内での能力のばらつきなどをわかりやすく知ることができるのが特徴です。

田中ビネー知能検査V(適用年齢:2歳~成人)

子どもから大人まで使用されている知能検査のひとつです。子ども用(2~13歳)、成人用(14歳以上)の二つに分けられており、大人の場合は成人用(14歳以上)の知能検査に取り組みます。

 

田中ビネー知能検査Vの内容は、単語理解や、計算、図形、推理などの問題で構成されています。田中ビネー知能検査V成人用の場合は、過去の経験や学習から確立された判断力や習慣、新しい場面で適用を必要とするときに働く知的能力、記憶、論理や推理する能力の4つの偏差知能指数(DIQ)が産出されます。

知能検査を受けられる場所

知能検査は、基本的に病院や支援機関などで受けることができます。発達障害かどうかの診断を受けたい場合には病院へ、発達障害があるかもしれないから、まずは知能検査などを受けてみてから病院にいくかどうかを考えたい場合は、支援機関へ相談してみるという方法もあります。

病院の場合

発達障害の診断ができるのは、医師のみです。そのため、知能検査を受けるだけでなく発達障害かどうか診断を得たい場合は、病院にいく必要があります。

 

診療科としては「心療内科」や「精神科」を受診します。しかし、すべての心療内科や精神科で知能検査が受けられるとは限らないため、予めインターネットで調べ、知能検査をおこなっているか確認してから受診するといいでしょう。インターネットで調べる方法以外にも、最寄りの発達障害者支援センターに問い合わせ、医療機関の情報を得るのも一つの方法です。

 

なお、病院の場合、知能検査が必要かどうかは診察内容に応じて医師が判断するため、必ずしも希望する知能検査が受けられるとは限らないことを留意しておく必要があります。

支援機関の場合

発達障害者支援センターなどの支援機関の中には、知的障害の診断ではなく、あくまでも「特性を理解する」という目的で知能検査を実施しているところがあります。知能検査を通じてご自身の特性への理解を深めるだけではなく、知能検査の結果を活用して助言や支援に活用される場合もあります。

 

発達障害かどうかの診断を受けるよりも前に、まずは知能検査の結果から得意・不得意について知りたい場合は、支援機関を活用するのがいいでしょう。また、知能検査を受けるかどうか迷っている段階でも相談ができます。

 

ただし、すべての発達障害者支援センターなどで知能検査をおこなっている訳ではないため、こちらも予め知能検査をおこなっているかどうか、事前に確認してみましょう。

 

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知能検査にかかる費用

知能検査の費用については、発達障害者支援センターなどの公的な支援機関の場合は、基本的に無料で受けられます。

 

病院の場合は、保険適用か保険適用外かによって、知能検査の費用は大きく異なってきます。

 

例えば知能検査「成人用WAIS」の場合、病院で診察上必要と認められた知能検査は保険内診療となります。そのため数千円単位の費用で知能検査を受けることができます。なお、診断書や報告書を書いてもらう場合には、別途料金がかかります。

 

一方、診察上、知能検査の必要性が認められない場合や、保険診療をおこなっていないクリニックで知能検査を受ける場合には、自費での検査となります。料金設定は各病院ごとに異なります。病院で知能検査を希望される場合には、受診する病院にその知能検査にかかる費用などを確認するのがいいでしょう。

 

また、保険適用でき、かつ、自立支援医療制度の「精神通院医療」を活用できる場合は、医療費の自己負担が軽減されることもあります。詳しくはお住まいの市区町村の障害福祉窓口へ確認してみてください。

知能検査についてまとめ

知能検査は、発達障害に併存する知的障害の診断や認知能力の偏りを評価するために用いられます。

 

しかし、それだけではなく、知能検査の結果をもとに、ご自身の特性(得意・不得意など)によって生じる困難さを理解し、その対処法を考えることによって、自分に合った仕事の進め方やコミュニケーションの取り方などが見つかる可能性があります。

 

知能検査は、病院や支援機関で受けることができます。知能検査を受けるかどうかを迷っている場合には、発達障害者支援センターなどの支援機関で相談することもできます。

 

職場での困りごとが続いて「もしかしたら、自分は発達障害の傾向があるのかもしれない」と思ったときは、一人で抱え込まず、病院や支援機関へ相談するといいでしょう。

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発達障害の方の就職をサポート

 

LITALICOワークスでは「就労移行支援事業所」を運営しています。これまで、多くの発達障害の方の就職をサポートしてきました。障害者手帳や診断の有無を問わず、医師や自治体の判断などにより、就職に困難が認められる方も利用することができる可能性があります。

 

発達障害の特性によって生じる困難さを理解し、自分でできる対処法や自分に合う職場環境を知ることができるようにサポートしています。具体的には、自己理解を深めるプログラムや職場への体験実習(インターンシップ)などをおこなっています。また支援スタッフが職場環境へ働きかけることで合理的配慮を得るためのサポートもしています。

 

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更新日:2023/11/29 公開日:2023/01/31
  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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