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自立支援医療制度とは?対象者や申請・更新手続きなど解説

更新日:2024/06/28

自立支援医療制度とは、障害の治療にかかる医療費の自己負担を軽減する制度です。

 

自立支援医療制度には3つの種類がありますが、うつ病や発達障害など、精神障害に該当する場合は「精神通院医療」が対象となります。

 

この記事では自立支援医療制度の「精神通院医療」を中心に、制度内容や対象疾患、申請方法、メリット・デメリットなどを解説します。

自立支援医療制度とは

自立支援医療制度とは、障害の治療にかかる医療費の自己負担を軽減する制度です。

 

自立支援医療制度は対象者によって「精神通院医療」「更生医療」「育成医療」の3つに分かれています。対象者は以下の通りです。

  • 精神通院医療
    うつ病や統合失調症などの精神障害のある方で、通院による継続的な治療が必要な方
  • 更生医療
    18歳以上の身体障害者手帳を所持している方が対象で、その障害に伴う症状を軽減する手術などの治療により改善が見込まれる方
  • 育成医療
    18歳未満の身体障害のある児童が対象で、その障害に伴う症状を軽減する手術などの治療により改善が見込まれる児童

本記事では「精神通院医療」について詳しく解説します。

自立支援医療制度(精神通院医療)の対象者

精神通院医療の対象疾患は以下のようになります。

  • 統合失調症
  • うつ病、双極性障害(双極症/躁うつ病)(※1)などの気分障害
  • 薬物などの精神作用物質による急性中毒またはその依存症
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)などのストレス関連障害
  • パニック障害などの不安障害
  • 知的障害(知的発達症)(※2)、心理的発達の障害
  • アルツハイマー病型認知症、血管性認知症
  • てんかん など

発達障害も対象疾患に含まれるため、自立支援医療制度の対象になります。

 

なお、自立支援医療制度が適用されるのは、これらの対象疾患について通院による継続的な治療が必要と判断された場合に限られます。

※1 双極性障害は現在、「双極症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「双極性障害/躁うつ病」といわれることが多くあるため、ここでは「双極性障害(双極症/躁うつ病)」と表記します。

※2 現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。

指定自立支援医療機関について

自立支援医療制度は「指定自立支援医療機関」と呼ばれる、都道府県または政令指定都市によって定められた医療機関でのみ利用することができます。すべての病院で利用できるわけではないので、注意が必要です。ここでの医療機関とは病院、診療所、薬局、訪問看護ステーションなどを指します。

 

申請する際は、通院している医療機関が「指定自立支援医療機関」に該当するか確認しましょう。通院している医療機関またはお住まいの市区町村の障害福祉課などの窓口で確認できます。

自立支援医療制度の自己負担額

自立支援医療制度を利用すると、通院治療などの医療費が原則1割負担となります。また、世帯所得や「重度かつ継続(※)」の該当有無によって、月ごとの負担上限額が決まっています。ここでいう「世帯」の範囲とは、本人と通院される方と同じ健康保険などの公的医療保険に加入する方です。

 

(※)「重度かつ継続」とは費用が高額な治療を長期にわたり継続しなければならない場合を指します。

 

月額上限負担額を超えた分の金額は公費でまかなわれます。詳細は以下の表の通りです。

 

 

例えば世帯所得が「中間所得1」で「重度かつ継続」に該当する場合、1ヶ月に支払う医療費の上限額は「月額5,000円」となります。

自立支援医療制度の適用対象となるもの・ならないもの

ここでは、自立支援医療制度の精神通院医療が適用される治療、適用されない治療を分けて紹介します。

 

自立支援医療制度の適用対象

自立支援医療制度の精神通院医療では、基本的に通院に関わる治療費に適用されます。

 

主な適用対象となる治療は以下のものです。

  • 通院での診察
  • 薬の処方
  • 精神科デイケアの利用
  • 訪問看護 など

自立支援医療制度の適用対象外

次に、自立支援医療制度の精神通院医療の適用対象外となる治療費を紹介します。

 

主に以下の治療費が対象外です。

  • 入院医療の費用
  • 公的医療保険が対象とならない治療費(例:病院や診療所以外でのカウンセリングなど)
  • 精神障害と関係のない疾患の医療費 など

治療を受ける前に、自立支援医療制度の対象となるか事前に確認しましょう。

 

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自立支援医療制度の申請方法は?

自立支援医療制度は、必要な書類をそろえたうえでお住まいの自治体の障害福祉課の窓口などで申請します。

自立支援医療制度の申請に必要な書類

自立支援医療制度を申請する際に必要となる書類は以下のようなものがあります。

  • 申請書(自立支援医療費(精神通院医療)支給認定申請書)
  • 医師の診断書(自立支援医療費(精神通院医療)用診断書)
  • 健康保険証(国民健康保険・後期高齢者医療制度加入者の場合は世帯全員、その他の健康保険加入者の場合は受診者と被保険者本人の健康保険証が必要になります。ただしマイナンバーの確認により省略できる場合もあります。)
  • マイナンバーが確認できるもの
  • 受診者の収入が確認できるもの(市町村民税非課税の場合)
  • 身分証明書(マイナンバーカードや運転免許証など)
  • その他

自治体によって必要書類が異なります。事前に自治体へご確認ください。

医師の診断書は発行までに時間がかかる場合がありますので、早めに主治医に相談するようにしましょう。

自立支援医療受給者証の交付

申請が通ると「自立支援医療受給者証」が交付されます。また、月額負担上限額が設定された方は「自己負担上限額管理票」も同時に交付されます。

 

この自立支援医療受給者証と自己負担上限額管理票を医療機関へ都度提示することで、自立支援医療制度が適用されます。

自立支援医療受給者証の交付までどれくらいかかる?

自立支援医療受給者証が交付されるまで2ヶ月程度かかることがあります。

 

その間は申請後にもらえる「申請書の控え」などを提出することで、自立支援医療制度が適用される場合があります。市区町村により違いがありますので、お住まいの自治体に確認しましょう。

自立支援医療費の払い戻しの手続きについて

自立支援医療受給者証が届くまでの間に申請書の控えがあっても自立支援医療制度が適用されず、医療機関での払い戻しができない場合もあります。その場合、市区町村により払い戻しが受けられます。払い戻し金額は、申請日から自立支援医療受給者証が届くまでの間に支払った医療費のうち、自立支援医療制度を利用した場合の自己負担額との差額分になります。

 

払い戻しの手続きには以下のような書類が必要になります。

  • 自立支援医療費(精神通院医療)医療費支給申請書
  • 領収書(原本)
  • 上限管理票の写し など

払い戻しの内容や手続きは自治体によって異なりますので、事前に確認しましょう。

 

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自立支援医療受給者証の更新方法は?

自立支援医療受給者証の有効期限は原則1年です。継続するためには都度更新手続きをする必要があります。また、手続きは自立支援医療受給者証の有効期限の3ヶ月前から申請できます。

 

更新時に必要となる書類は以下のようなものがあります。(自治体によって異なります)

  • 申請書(自立支援医療費(精神通院医療)支給認定申請書)
  • 医師の診断書(自立支援医療(精神通院医療)費申請用)
  • マイナンバーが確認できるもの
  • 健康保険証(国民健康保険・後期高齢者医療制度加入者の場合は世帯全員、その他の健康保険加入者の場合は受診者と被保険者本人の健康保険証が必要になります。ただしマイナンバーの確認により省略できる場合もあります。)
  • 指定したい病院・薬局などが分かるもの(病院や薬局を変更する場合)
  • 受診者の収入が確認できるもの(市町村民税非課税の場合) など

診断書の提出については、治療方針に変化がない場合2年に1度の提出となる場合があります。

 

また、自立支援医療受給者証の有効期限が切れた場合は、更新ではなく新規発行(もしくは再申請発行)と同じ手続きが必要になります。

自立支援医療制度のデメリットはある?

自立支援医療制度を利用することに、デメリットがあるのかを気にされる方もいるかもしれません。自立支援医療制度を利用するうえでデメリットと考えられるものを紹介します。

毎回書類を提示する必要がある

通院などのたびに「自立支援医療受給者証」と「自己負担上限額管理票」を病院や薬局へ提出する必要があります。このように毎回書類を持っていくことをデメリットと感じる方もいるかもしれません。

 

また、上記の書類を忘れた場合は公的医療保険が適用され、原則3割負担となります。後日の払い戻しについては医療機関によって扱いが異なります。医療機関へ直接ご確認ください。

原則的に特定の医療機関でしか使えない

自立支援医療制度が利用できるのは「指定自立支援医療機関」のみになります。さらに申請の際に指定自立支援医療機関の中から自分が利用する医療機関や薬局などを選択します。どの医療機関でも利用できるわけではないことも、デメリットと感じるかもしれません。

自立支援医療受給者証の更新が都度必要

継続して利用するためには毎回更新の手続きをおこなう必要があります。更新手続きも2ヶ月程度の時間がかかるため、診断書が必要な場合は早めに主治医に依頼するなど準備をしておきましょう。

 

更新手続きが必要で時間もかかる点もデメリットとして考えられます。

 

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自立支援医療制度に関するQ&A

ここでは、自立支援医療制度に関してよくあげられる質問について回答します。

Q.自立支援医療制度は、発達障害のある方も対象となる?

精神通院医療という名称から、「発達障害は対象外なのでは」と考える方もいるかもしれません。

 

自立支援医療制度の精神通院医療では、発達障害のある方も対象です。発達障害のある方も申請方法や負担割合をふくめ、ほかの対象疾患と変わりません。

Q.自立支援医療制度を使っていることを周りの人に知られる?

自立支援医療制度を使うことで、「周りや会社に知られてしまうのでは」と心配される方もいるかもしれません。しかし、基本的には自分から伝えない限り、勤務先など他者に自立支援医療制度の利用が伝わることはありません。

Q.転院した場合、自立支援医療制度はどうなる?

自立支援医療制度は先に指定した医療機関でしか利用できないため、「転院したら使えなくなるのでは?」と気になる方もいるでしょう。

 

転院した場合は変更申請をおこないます。変更申請は、指定医療機関の変更を希望する場合のみでなく、引っ越しした場合の住所変更などの申請をおこなう必要があります。

 

詳しいことは自治体の障害福祉課へお問い合わせください。

Q.自立支援医療制度のほか、活用できる支援制度はある?

自立支援医療制度のほかにも、障害のある方が活用できる経済的な助けとなる制度があります。

 

主なものとして、

  • 傷病手当金
  • 雇用保険の基本手当
  • 障害年金
  • 障害者手帳

などがあります。

 

それぞれ利用するには条件などがありますので、確認しておくといいでしょう。

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精神障害・発達障害のある方の就職をサポート「就労移行支援事業所」

体調が安定した頃に就職を考えている方は、仕事における支援制度の利用を検討してみてもいいでしょう。

 

就労移行支援はそういった支援の一つで、障害のある方を対象に一般企業などに就職するためのサポートを提供しています。

 

LITALICOワークスでは各地に就労移行支援事業所を展開し、精神障害や発達障害のある方が自分らしく働くための支援を提供しています。一人ひとりの状況に合わせて体調安定や自己理解、ストレスコントロールなど、その方が働き続けるために必要なサポートをおこなっています。

 

また、企業インターン(実際の職場で試しに働く機会)を通して自分に合った職場探しをサポートしたり、模擬面接などの就職活動のサポートをおこなったりしています。

 

就職後も長く働き続けるために、働くうえで困ったことがあった際は、職場の方と本人との間に入って双方が働きやすくなるよう解決法を一緒に考えます。

 

「体調優先で働きたい」「自分に合う職場が分からない」「居心地のよい職場で働きたい」などがあれば、お気軽にLITALICOワークスまでご相談ください。

自立支援医療制度のまとめ

自立支援医療制度とは、障害にかかる治療費の負担を軽減するための制度のことです。自立支援医療制度には3つの種類があり、精神障害や発達障害のある方は「精神通院医療」が対象となります。

 

治療には長い時間がかかることがあり、その分医療費もかかります。治療に専念するためにも、自立支援医療制度を活用しましょう。

 

また、障害のある方が利用できる仕事における支援機関もあります。治療を続けて体調が安定したあとに就職を考えている方は、こうした支援機関を上手に活用しながら就職活動を進めていくとよいでしょう。

 

もし仕事のお悩みがあればお気軽にLITALICOワークスまでご相談ください。一緒に自分らしい働き方を考えていきましょう。

更新日:2024/06/28 公開日:2021/09/27
  • 監修者

    社会保険労務士 行政書士

    高橋 悠

    行政書士事務所にて約8年間、介護・障害福祉サービス事業所の立ち上げ・運営支援に携わった後、2016年10月に独立開業。顧問先のうち7割以上は介護・障害福祉サービス事業所介護・障害福祉サービス事業所であり、別会社「合同会社サニープレイス」にて小規模保育所B型及び企業主導型保育所を経営している。

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