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精神障害者手帳の等級とは?申請のメリットやデメリットはある?1級・2級・3級の違いや就労支援も解説

更新日:2024/06/28

精神障害者保健福祉手帳とは、精神障害のある方を対象とした障害者手帳のことです。

 

精神障害者保健福祉手帳は、その症状やどの程度生活に支障をきたしているかによって、1級から3級に区分されています。 

 

この記事では、精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)について 、以下を中心に解説していきます。

  • 障害等級の違い(1級・2級・3級) 
  • 精神障害手帳の等級ごとの受けられるサポート
  • 精神障害者手帳の申請・取得・更新方法 

また記事の最後には、「精神障害のある方のための就労支援」についても、簡単にまとめています。

自分の精神疾患についての理解を深めたい方はもちろん、ご家族や職場に、精神障害を抱えられている人がいる方も、正しい知識を身につけて、さまざまなサポートのきっかけにして頂ければ幸いです。

精神障害者手帳とは?

まず日本には、自治体に認定されると発行される、障害があることを証明する証として「障害者手帳」があります。

 

この障害者手帳とは、以下の3つの手帳を総称したものです。

  • 身体障害者手帳(1級~6級) 
  • 療育手帳(重度、その他) 
  • 精神障害者保健福祉手帳(1級~3級)

今回、詳しく解説する「精神障害者手帳(正式名称:精神障害者保健福祉手帳)」とは、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。

 

精神障害のある方の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には、さまざまな支援策が講じられています。

精神障害者手帳の対象となる精神障害とは

精神障害者手帳発行の対象となるのは、「何らかの精神障害が理由で、長期にわたって日常生活や社会生活に制約が生じている方」です。 

 

具体的には、下記のような精神障害が対象になります。

  • 統合失調症 
  • 薬物依存症 
  • てんかん 
  • うつ病・双極性障害(双極症/躁うつ病)※1などの気分障害 
  • 発達障害 
  • 高次脳機能障害 
  • その他の精神疾患 

発達障害の中には、「ASD(自閉スペクトラム症)※2」「アスペルガー症候群※3」「ADHD(注意欠如多動症)※4」「LD・SLD(限局性学習症)※5」などが含まれます。

 

また、そのほかの精神疾患とは、急性または慢性の心理社会的ストレスが主な原因となる「ストレス関連障害」などが該当します。 

※1 双極性障害は現在、「双極症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「双極性障害/躁うつ病」といわれることが多くあるため、ここでは「双極性障害(双極症/躁うつ病)」と表記します。

 

※2 以前は「自閉障害」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事では以下、ASD(自閉スペクトラム症)と記載しています。

 

※3 以前は、言葉や知的の発達に遅れがない場合「アスペルガー症候群」という名称が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。
成人の方の中には、旧診断名の「アスペルガー症候群」で診断された方も多いため、本記事では「アスペルガー症候群」の名称を使用します。

 

※4 以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事では以下、ADHD(注意欠如多動症)と記載しています。

 

※5 学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。

 

<ワンポイント補足情報> 

精神障害(発達障害など)と知的障害(知的発達症)※の両方がある方は、「精神障害者手帳」と「療育手帳」の両方の手帳を持つことが可能です。 

 ※現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。

精神障害者手帳は、その方の「精神疾患の状況」と、それに伴う「能力障害の状態」によって等級が分けられています。

 

障害により困難が多いほど、1級、2級、3級と分けられています。

詳しくは、次の章で解説します。

 

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精神障害者手帳の等級とは?

精神障害者手帳の等級は、前述の通り、1級から3級に分けられています。 

 

障害等級の判定については以下の観点から、申請後に精神保健福祉センターで等級を判断することになっています。

  • 精神疾患の存在の確認 
  • 精神疾患(機能障害)の状態の確認 
  • 能力障害(活動制限)の状態の確認 
  • 精神障害の程度の総合判定 

分かりやすくいうと、生活をしていくうえで「どの程度支障をきたすか」「どのような症状が出るか」ということになります。 

 

厚生労働省のWebサイトでは、精神障害者手帳の等級について、以下の判断基準を設けています。

 

精神障害者保健福祉手帳

 

難しい表現となっていますので今回の記事では、等級判断の分かりやすい、基本的なとらえ方のみご紹介します。 

 

※詳しくは、厚生労働省の「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」以下からご確認ください。 

精神障害者手帳の具体的な申請方法は後ほど解説いたします。

障害等級の基本的なとらえ方

等級ごとの判断の目安になる、基本的なとらえ方を紹介します。 

精神障害者手帳1級 

厚生労働省の基準によりますと、「周囲の人の援助がなければ、ほとんど自力だけでは生活を送ることができない程度 」にある方のことです。

 

(例) 

  • 医療機関への外出は、付き添いがなければできない 
  • 食事の準備、片づけが一人ではできない 
  • 金銭管理が困難 など 
精神障害者手帳2級 

必ずしも周囲の人のサポートが必要なわけではないが、日常生活は困難な程度の方です。

 

(例) 

  • 付き添いなしでも外出はできるが、ストレスがかかる出来事が起こると、一人では対処できない 
  • 清潔保持が、自発的かつ適切におこなうのが難しい 
  • 日常生活の中で適切な発言ができないことがある など 
精神障害者手帳3級 

日常生活、社会生活に一定の制限がかかる、もしくは制限をかける必要がある程度の方です。

 

(例) 

  • 日常的な家事はできるが、状況や手順が変わると、対応できないときがある 
  • ひきこもりがちではない 
  • 行動のテンポは、ほぼ周囲の人と合わせられる など 

精神障害者手帳1級をお持ちの方が受けられるサポートとは?

ここからは精神障害者手帳を取得することで、どのようなサポートが受けられるのかを等級ごとに確認していきましょう。  

 

まずは、精神障害者手帳1級を所持した際に受けられるサポートについてです。

 

どの等級の精神障害者手帳についてもいえることですが、精神障害者手帳を持つことで得られるサポートやメリットの多くは、経済的側面が多くなっています。 

 

  • NHK放送受信料の減免:半額免除【1級のみ】※障害のある方が世帯主でNHK契約者の場合
  • 所得税の控除:40万円
  • 住民税の控除:30万円
  • 相続税の控除:85歳に達するまでの年数1年につき20万円を控除
  • 贈与税の控除:6,000万円まで非課税
  • 自動車税の控除:環境性能割+種別割【1級のみ】
  • 軽自動車税の控除:環境性能割【1級のみ】
  • 新マル優制度(銀行):全国の銀行の定期預金350万円(マル優)+個人向け国債・地方債350万円(特別マル優) 計700万円までが非課税
  • 生活福祉資金の貸付
  • 障害者職場適応訓練の実施(実際の職場で作業についての訓練を受けることができる)

精神障害者手帳の取得のデメリットはある?

精神障害者手帳を取得することによるデメリットは基本的にはないといえます

 

デメリットではありませんが、注意しておくこととして下記のような点があげられますので参考にしてください。 

申請の手続きに時間がかかる

精神障害者手帳を発行するためには、医師の診断書が必要です。(申請方法については、後ほど詳しく解説します) 

 

診断書の作成にも費用がかかります。

 

また、診断書の作成には1ヶ月ほどの時間をみておきましょう。

2年に1回、更新手続きをおこなう必要がある

精神障害者手帳には有効期限があります。 

 

自動更新されることはなく、2年ごとに更新手続きをおこなう必要があります。 

 

更新手続きをおこなうためには、改めて医師の診断書が必要です。

 

もし症状が軽くなった場合には、更新手続きの審査の過程で「非該当」となり、手帳の返還をおこないます。

 

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精神障害者手帳2級をお持ちの方が受けられるサポートとは?

  • 所得税の控除:27万円
  • 住民税の控除:26万円
  • 相続税の控除:85歳に達するまでの年数1年につき10万円の控除
  • 贈与税の控除:3,000万円まで非課税
  • 新マル優制度(銀行):全国の銀行の定期預金350万円(マル優)+個人向け国債・地方債350万円(特別マル優) 計700万円までが非課税
  • 生活福祉資金の貸付
  • 障害者職場適応訓練の実施(実際の職場で作業についての訓練を受けることができる)

精神障害者手帳3級をお持ちの方が受けられるサポートとは?

  • 所得税の控除:27万円
  • 住民税の控除:26万円
  • 相続税の控除:85歳に達するまでの年数1年につき10万円の控除
  • 贈与税の控除:3,000万円まで非課税
  • 新マル優制度(銀行):全国の銀行の定期預金350万円(マル優)+個人向け国債・地方債350万円(特別マル優) 計700万円までが非課税
  • 生活福祉資金の貸付
  • 障害者職場適応訓練の実施(実際の職場で作業についての訓練を受けることができる)

精神障害者手帳の取得により受けられるそのほかのサポートは?

精神障害者手帳の等級ごとのサポートを紹介しましたが、基本的には全国一律でおこなわれているサービスです。

 

そのほかにも、受けられることができるサービスは数多くあります。

 

地域や事業者によっておこなわれているサービスの一部を紹介いたします。

 

詳細については、お住まいの自治体や関連事業者に直接お問い合わせください。

地域や事業者ごとにおこなわれていることがあるサービス一覧

■公共料金などの割引

  • 鉄道・バス・タクシー・飛行機・レンタカーなどの運賃の割引
  • 携帯電話料金の割引(au/docomo/softbank など)
  • 心身障害者医療費の助成
  • 上下水道料金の割引
  • 各種公共施設の入場料の割引
  • レジャー、スポーツ施設などの利用料金の割引(ゴルフ場、美術館、カラオケなど)

■手当の支給

  • 福祉手当(特別障害者手当など)
  • 通所交通費の助成

■その他

  • 公営住宅の優先入居 など

手帳の有無に関係なく受けられるメリットもある

自立支援医療による医療費助成や、障害者総合支援法による障害福祉サービスは、精神障害のある方は、等級を問わないことはもちろん、精神障害者保健福祉手帳の有無にかかわらず、各種サービスを受けることができます。

精神障害者手帳の取得は、就職・転職シーンでもメリットがある

また、一般企業への就職を目指す際、障害者手帳を持っていると、一般雇用としてだけでなく、障害者雇用で、応募することができます

 

障害者雇用促進法に基づいて、一般企業には障害者雇用が求められています。(企業は、障害者雇用率【従業員が43.5人以上の民間企業の場合:2.3%】を守ることが義務付けられており、未達の場合納付金が徴収されます。)

 

障害者雇用で就職することで、会社に通院や治療についてあらかじめ配慮してもらえたり、長く働きやすい環境を得られやすくなるというメリットもあります。

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精神障害者手帳の申請方法や取得方法は?

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)は、法律に基づいて交付されるため、各市区町村へ申請をおこなう必要があります。

 

申請に必要なものや申請の方法、申請場所についてここでチェックしておきましょう。

 

なお、手帳の申請は、家族や医療機関関係者の方が代理でおこなうことも可能です。その場合は、代理権の確認書類や身元確認書類が必要です。

精神障害者手帳を申請するために用意すべきもの

  • 申請書(申請窓口で直接もらう、または各市町村のWebサイトからダウンロードする)
  • 診断書
  • 本人写真(縦4cm×横3cm)

診断書について

精神障害の診断書を書くのは、原則として精神科医になります。

 

精神障害による障害年金を受給している方の場合は、診断書ではなく、その証明などの写しを提出すれば問題ありません。

 

※1 てんかん、発達障害、高次脳機能障害などについて、精神科以外の科で診療を受けている場合は、それぞれの専門の医師が記載したもの

 

※2 診断書は精神障害の初診日から6ヶ月以上経過してから、精神保健指定医(または精神障害の診断、または治療に従事する医師 ※1)が記載したものでなければいけません。

精神障害者手帳を申請する場所

精神障害者手帳の申請の窓口は、市町村の担当窓口(障害福祉窓口)になります。

 

市役所や町村役場の障害者福祉主管理課、特別区だと保健所や保健センターです。

 

申請が完了すると、各都道府県・政令指定都市にある精神保健福祉センターによって審査がおこなわれ、無事申請が認められると手帳が交付されます。

 

申請から交付までの期間は、およそ1ヶ月~2ヶ月程度です。

 

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精神障害者手帳の更新方法は?

精神障害者保健福祉手帳のデメリットを紹介するときに少し触れましたが、精神障害者手帳の有効期限は2年間となっており、一度発行されたら一生使えるものではありません。

 

手間はかかりますが、続けて手帳が必要な場合は、2年に1回更新手続きが必要です。

  • 現在持っている手帳の写し
  • 申請書
  • 診断書
  • 本人写真(縦4cm×横3cm)

 

基本的には、申請時に必要なものと同じです。

 

更新の手続きは、有効期限の3ヶ月前からおこなうことができるようになっています。

 

主治医の診断書が改めて必要になりますので、早めに準備を始めることをお勧めします。

 

有効期限は手帳に記載してありますので、あらかじめ確認しておくといいでしょう。

障害等級の変更について

更新手続きをおこなう際に、障害が日常生活にもたらす影響が大きくなった(もしくは小さくなった)場合、障害等級の変更を申請することもできます。

 

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精神障害のある方のための就労支援とは?

最後に、精神障害のある方が利用できる就労支援についてです。

 

ここでは、精神障害を含む障害のある方の就労を支援するサービスを3つ紹介します。

  • 就労継続支援A型事業所
  • 就労継続支援B型事業所
  • 就労移行支援事業所

就労継続支援事業(A型・B型)とは

「就労継続支援事業」とは、今の状態・状況では、一般企業への就職に不安がある、または困難である方に対して、働く場所を提供することを目的とする支援サービスです。

 

就労継続支援A型と就労継続支援B型に分かれています。

 

A型とB型を比べると、B型の方が、重度の障害がある方が対象になります。

 

B型の特徴としては、A型とは違い、直接雇用形態を結ばないため、賃金(工賃)は低くなりますが、自分の障害や体調に合わせて、無理せず自分のペースで働くことができる点がポイントです。

就労移行支援事業とは

「就労移行支援事業」とは、一般企業に、一般枠もしくは障害者雇用での就職・転職を希望する障害のある方に対して、就職に必要なスキル(希望職種に必要な技術の習得や面接対策、履歴書添削などのサービスを受けることも可能)を身につけることを目的とした支援サービスです。

 

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就労移行支援事業所「LITALICOワークス」

無理のない働き方をサポート「LITALICOワークス」

 

LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、これまで1万3千人以上の方の就職をサポートしてきました。

 

障害のある方が自分らしく働くために、ストレスコントロール・パソコンプログラム・企業インターン・面接練習など一人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

 

「働くことに悩んでいる」「体調が不安定で働けるか分からない」「一人で就職活動がうまくいかない」などお悩みのある方は、まずは就職支援のプロに相談してみませんか?

【無料】仕事の悩みや働き方についてLITALICOワークスで相談する

<参考>就労支援に関する相談先一覧

  • 市区町村の窓口(福祉課など)
  • ハローワーク
  • 地域障害者職業センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 在宅就業支援団体
  • 障害者職業能力開発校
  • 発達障害者支援センター
  • 難病相談支援センター など

精神障害者手帳のまとめ

今回は精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)の等級の違いについてと、手帳取得のメリット・デメリット、手帳申請・更新の方法について解説しました。 

 

精神障害者手帳を持っていると、紹介したようなさまざまな制度やサービスを活用できることもあります。

 

今回の内容を参考に、各種サービスやサポートを受けるのかどうか、判断することが難しいとなどがありましたら、お気軽にLITALICOワークスまでご相談ください。

更新日:2024/06/28 公開日:2021/11/15
  • 監修者

    帝京科学大学 医療科学部 医療福祉学科 准教授

    中里 哲也

    EBP(Evidence Based Practice)に基づいたソーシャルワーク支援展開を目指し活動中。
    専門は「医療福祉」「教育福祉」「地域福祉」「人材育成」など多岐に渡る。

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