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心の病気の種類や診断方法とは?仕事を続けるうえでのポイントも解説

更新日:2024/06/25

職場や学校、家庭などでストレスがかかり心身に不調が出てくると、「心の病気なのでは」と考える方もいるのではないでしょうか。

 

よく知られている心の病気(※)には、うつ病や双極性障害(双極症)、統合失調症などがあります。

 

※一般に「心の病気」とよばれている病気は、実際には脳の伝達物質の異常などで症状が起きる「脳の病気」と言えますが、心に症状が出ることが多いため、ここでは「心の病気」という言葉で説明をしていきます。

 

心の病気は早めに治療をすれば、重症化や慢性化、再発を防ぐことができます。

 

この記事では、心の病気の種類と症状、診断先や治療方法を説明します。また、心の病気があっても無理なく仕事を続けたい方のためのヒントをお伝えします。

心の病気とは?

心の病気とは正式な診断名ではありません。よく知られている心の病気には、うつ病や双極性障害(双極症)、統合失調症などがありますが、それらを総称したものです。

 

心の病気の中には、気分が沈む、何をするにも元気が出ない、周りに誰もいないのに人の声が聞こえてくる、何も食べたくないなどといった症状が出る人もいます。

 

心の病気の明確な原因は分かっていません。一部の心の病気はストレスが原因になるといわれています。

心の病気は誰もがかかりうる病気

心の病気で通院や入院をしている人たちは国内で約420万人にのぼり(平成29年)、これは日本人のおよそ30人に1人の割合です。また、生涯を通じて5人に1人の割合で心の病気にかかるともいわれています。

 

心の病気にかかったとしても、多くの場合は早期に適切な治療をすれば回復します。最近では、効果が高く副作用の少ない治療薬も出ているので、心の病気は以前よりも回復しやすくなっているともいわれています。

 

一方で、早く治そうと焦って無理をしてしまうと回復が遅れてしまうこともあります。心の病気は周囲からは分かりにくいという特徴があるので、ついつい無理をしてしまうかもしれませんが、「焦らずしっかりと治す」という心持ちでいることが大切です。

 

心の病気以外にも精神疾患といった言葉がありますが、表記の違いだけで類似した意味で使われています。

 

この記事内では、心の病気と用語を統一して説明します。

心の病気の種類

心の病気といっても、種類はさまざまです。ここでは主な心の病気について簡単に紹介していきます。

うつ病

うつ病は、100人に約6人が生涯に発症しているといわれています。うつ病は、気分の落ち込みや不安といった精神症状や、身体がだるい、眠れない、食欲がないなどの身体症状が表れる特徴があります。

 

うつ病が発症する明確な原因は未だ解明されていません。

双極性障害(双極症)

双極性障害(双極症)※は、躁状態(気分が高まり活動的な状態)と、抑うつ状態(気分が落ち込んだ状態)をいったりきたり繰り返す特徴があります。かつては躁うつ病とよばれていましたが、現在は双極性障害(双極症)とよばれています。

 

双極性障害(双極症)は、主に20代〜30代で発症することが多く、100人に1人が発症するといわれています。うつ病ほどの発症頻度ではありませんが、決して稀な病気ではありません。

 

※双極性障害は現在、「双極症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「双極性障害」といわれることが多くあるため、ここでは「双極性障害(双極症)」と表記します。

統合失調症

統合失調症は、陽性症状(幻覚や妄想など)と陰性症状(意欲の低下や感情の起伏がなくなるなど)が表れる病気です。

 

統合失調症でよく知られている症状が幻覚と妄想です。幻覚とは聞こえるはずのない声が聞こえる(幻聴)、ないはずのものが見える(幻視)といったもので、妄想とは誤った内容を信じてしまう、嫌がらせをされているといった被害妄想などがあります。

 

統合失調症は、統合失調症になりやすい要因をいくつか持っている人がストレスをきっかけとして発症するのではないかと考えられていますが、発症の原因はよく分かっていません。

 

統合失調症は、主に20代、ついで10代、30代、40代で発症することが多く、100人に1人が発症するといわれています。

発達障害

発達障害とは、生まれつきの脳のタイプの違いにより、物のとらえ方や行動に特性があり、そのために社会生活で問題や不適応が起きている状態を言います。

 

心の病気に発達障害も含まれるのかと思われるかもしれませんが、行政で使用する診断基準では精神障害(精神疾患)に分類されています。

 

発達障害には、ASD(自閉スペクトラム症)※(1)、ADHD(注意欠如多動症)※(2)、LD・SLD(限局性学習症)※(3)などがあり、これらは生まれつき脳の違いがあるという点が共通しています。

 

※(1)以前は「自閉症スペクトラム」という名称が用いられることもありましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本語版は2023年)年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事では以下、ASD(自閉スペクトラム症)と記載しています。

 

※(2)以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事では以下、ADHD(注意欠如多動症)と記載しています。

 

※(3)学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。

適応障害

適応障害は、ストレスが原因で憂うつな気分になったり、不安を感じたりする症状が表れる特徴があります。適応障害の症状はうつ病と似ていますが、ストレスの原因と一定の距離を置くと症状が和らぐことがある点が、うつ病との違いです。

強迫性障害(強迫症)

強迫性障害(強迫症)※は、強い不安やこだわりによって日常生活に支障が出る病気です。

症状には、強迫観念(自分の意思に反してある考えやイメージが頭に浮かんできて離れない)や、強迫行為(同じ行為を何度も繰り返してしまう)があります。

 

過剰に手洗いや入浴を繰り返す、火や戸締りを何度も確認せずにはいられないなど、自分でもやりすぎで無意味だと分かっていてもやめられないという点が特徴です。

 

※強迫性障害は現在、「強迫症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「強迫性障害」といわれることが多くあるため、ここでは「強迫性障害(強迫症)」と表記します。

不安障害

不安障害とは、強い不安や恐怖心によって日常生活に支障が出ている状態のことです。

 

不安障害の主なものとして、全般性不安障害(全般不安症)※(1)、社交不安障害、パニック障害(パニック症)※(2)、限局性恐怖症などがあり、それぞれ症状が異なります。

 

※(1)全般性不安障害は現在、「全般不安症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「全般性不安障害」といわれることが多くあるため、ここでは「全般性不安障害(全般不安症)」と表記します。

 

※(2)パニック障害は現在、「パニック症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「パニック障害」といわれることが多くあるため、ここでは「パニック障害(パニック症)」と表記します。

摂食障害

食事に関連した行動に問題が続き、心身に深刻な影響をおよぼす病気をまとめて摂食障害とよびます。

 

具体的には、食べすぎてしまう、食事をとらない、食後に自分で吐いてしまうなど、その人によって症状は異なります。

 

摂食障害は10代から20代の女性が発症することが多く、日本国内では医療機関を受診している摂食障害がある人は年間21万人いるといわれています。

依存症

依存症は、日常生活や健康、人間関係などに悪影響をおよぼしているにもかかわらず、ある特定の物質や行動をやめられない状態になっている病気のことです。

 

依存症にはアルコール、ニコチン、薬物などへの物質依存症と、ギャンブルなどへの行動嗜癖があります。

 

日本国内では、アルコール依存症は約10万人、薬物依存症は約1万人、ギャンブルなど依存症は約3000人が医療機関で治療を受けています。

心の病気の診断について

ここまで読んで「心の病気なのでは」と思った方も、自己判断するのではなく医療機関へ相談・受診をおすすめします。心の病気は早めに治療をすれば、重症化や慢性化、再発を防ぐことができるためです。

 

また、医師が発行する診断書は、休職したいとき、公的な福祉サービスや手当を利用したいときに使えます。

 

ここでは、心の病気に関する診断先や診断方法について説明します。

心の病気に関する診断先

ここまでご紹介した病気の専門科は「精神科」になります。「心療内科」は、内科疾患の中でも身体と心のつながりが深い病気を専門としています。どちらの科でも、心の病気について相談することができます。

 

医療機関によっては精神科と心療内科の両方を表記しているところがあったり、「メンタルクリニック」と表記しているところがあったりします。

 

どちらを受診すればよいのか迷ったら、クリニックや病院の窓口に電話をして問い合わせてみるといいでしょう。

心の病気の診断方法

心の病気の診断は、心身の症状や原因になりそうなストレスなど、医師からの質問に答える問診によっておこなわれます。また、場合によっては血液検査などをおこなうこともあります。

 

一般的に心の病気は「DSM-TR」や「ICD-10」という診断基準をもとに診断されます。「DSM-5」とはアメリカ精神医学会が作成した精神疾患の診断・統計マニュアルで「ICD-10」とは世界保健機関(WHO)が作成した疾病全般の分類を記載したものです。

 

心の病気の分類方法や診断名が異なる点はあるものの、DSM-TRもICD-10もほぼ変わりはありません。

受診するのに不安な方へ

心の病気かなと思っても、医療機関に行くことを躊躇してしまう、仕事や家庭の事情で医療機関に行く時間がとりづらい方は、支援機関やサービスを活用してみてはいかがでしょうか。以下に心の病気に関する相談先を紹介します。

 

保健所や保健センター、精神保健福祉センター

こころの健康、保健、医療、福祉について幅広く相談することができます。

 

こころの健康相談統一ダイヤル

相談は月曜日〜金曜日の18時30分〜22時30分までで夜間も相談できます。通話料はかかりますが、相談は無料です。

働く人の「こころの耳相談」

電話、SNS、メールでの相談ができます。電話、SNSでは土曜日と日曜日の10時〜16時、月曜日と火曜日の17時〜22時に相談できる点が特徴です。

心の病気の治療方法

心の病気は、適切な治療をおこなえば多くの場合、症状をコントロールし安定した生活を送ることができます。心の病気の治療方法は主に「薬物療法」と「精神療法」がありますが、一人ひとりの症状に合わせて治療をおこないます。

薬物療法

薬物療法とは、脳に直接作用する薬を使用し治療をすることです。心の病気の症状に合わせて抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬などが使われます。

精神療法

精神療法(心理療法)には、認知行動療法、対人関係療法、支持的精神療法などが含まれます。

 

認知行動療法

医師やカウンセラーとの面談により物事のとらえ方や考え方などへアプローチします。

 

対人関係療法

自分の身近にいる重要な人との関係性にフォーカスを当てて対策を考えることで、症状の改善を目指すものです。

 

支持的精神療法

話しやすいような雰囲気づくりをし、本人自身の困りごとを解決する力を高めるアプローチをします。心の病気の治療は医師の指示に従い、継続することが大切です。心の病気の治療を進めるうえで不安を感じたり悩んだりした場合は、医師に相談するようにしましょう。

心の病気のある方が無理なく仕事を続けるうえで大切なこと

心の病気のある方ができるかぎり心身に負担をかけずに無理なく仕事を続けるためには、医療機関を受診し、医師と相談しながら心の病気の治療を進めていくことが大切です。気分の落ち込みや眠れない、食欲がないといった症状は治療によって和らぐことも多いです。

 

また、心の病気の症状によって生じる働きづらさは、自身の特性だけではなく、それを取り巻く環境(※)によって生じています。

 

(※)ここでいう「環境」とは、バリアフリーなどの物理的な環境面だけでなく、仕事内容や仕事の進め方、人間関係や職場のルールなどさまざまな意味を含んでいます。

 

症状の安定や心の病気の再発防止のためにも、自身の特性を理解することから始めてみるといいでしょう。人は誰しも苦手なこと・得意なこと、考え方やとらえ方の癖といった特性があります。例えば、「突発的な仕事の依頼が増えるとストレスに感じてしまう」「音や光に過剰に反応してしまい集中できない」というようなものです。

 

自身の特性を理解できると、その特性に合わせた働き方の工夫や環境調整、周りへのお願いがしやすくなり、働きやすさにつながります。

 

自身の特性を理解するためには、医師やカウンセラーなど専門家に頼るのも選択肢の一つです。

休職・退職を考えるときに大切なこと

仕事を続けることが辛くなったなら、無理をせずに休養をとることも大切です。無理をしてしまうと心の病気の回復が遅れてしまうこともあります。

 

もしも休職するなら、医師に相談しましょう。休職する場合、多くの場合は医師の診断書が必要になるためです。また、職場の休職制度についても調べましょう。休職制度があるかどうか、休職はどの程度の期間が可能か、休職中の給料は支払われるかどうかは職場によって異なるためです。

 

心の病気になると、生活や今後のことなど気になることもあるかと思います。医療費負担を軽減する自立支援医療、傷病手当などの制度も確認しておくといいでしょう。

 

休職や退職を考えるときに大切にしたいことは、結論を急ぎすぎないことです。そのためには、先に紹介した心の病気に関する支援機関やサービスに相談をしてみましょう。また、社内に産業医がいたりメンタルヘルスに関する相談窓口があったりする場合は、そちらに相談をしてみてもいいでしょう。

心の病気についてまとめ

心の病気は、種類も症状もさまざまです。

心の病気はストレスやその他の原因による脳の働きの違いが原因といわれていますが、明確な原因は分かっていません。

 

心の病気にかかったとしても、多くの場合は早期に適切な治療をすれば症状をコントロールし安定した生活を送ることができます。そのため、心身のつらい症状を我慢したり、一人で抱え込むのではなく、まずは医療機関に行き、早期に治療することが大切です。

 

受診を迷う場合は、支援機関やサービスに相談してみましょう。

心の病気のある方の就職サポート

LITALICOワークスは「就労移行支援」を運営しています。就労移行支援とは、障害のある方の就職をサポートする福祉機関のひとつです。各地で就労移行支援事業を運営しており、これまで1万人以上の方の就職をサポートしてきました。障害者手帳がなくても、医師や自治体の判断などにより利用ができる場合もあります。

 

LITALICOワークスでは、ご自身の特性や、働くうえでの困難さはどのようなものがあるかを理解し、そのうえで「自分でできること」そして「周囲の配慮や理解を得ることで働きやすい環境」を整理するために、ストレスマネジメント・パソコンを使用したプログラム・企業インターン・面接練習など一人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

 

働くことに悩んだときは、お気軽に就職支援のスタッフへご相談ください。

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更新日:2024/06/25 公開日:2023/01/17
  • 監修者

    滋賀医科大学精神医学講座 助教

    増田 史

    医療法人杏嶺会 上林記念病院 こども発達センターあおむし
    著書に『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(2021年8月 ナツメ社)
    https://www.natsume.co.jp/books/15323

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