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お役立ち仕事コラム

適応障害で転職する際の注意点や向いている仕事を探すポイントを紹介

更新日:2023/10/05

適応障害の方が転職活動を考えたときに、以下のような不安や疑問はありませんか?

 

「適応障害は転職に不利になるのでは?」

「適応障害のことを転職先に伝えるべき?」

「転職してもまた体調を崩してしまうのではないか?」

 

適応障害は明らかなストレスによって発症しますが、そのストレスから離れると、多くは回復します。適応障害の方が転職先で働き続けるためには、自分がどのような場合にストレスを感じやすい傾向があるかを把握した上で対策を立てることが大切です。

 

この記事では、適応障害の概要や転職する前にできること、転職する際のポイント、適応障害の方が活用できる支援機関などを紹介します。

適応障害とはどんな病気?

適応障害とは明らかなストレスによって、精神面・身体面にさまざまな症状が表れます。その症状によって「仕事にいけなくなる」「集中力が低下する」「ミスが多くなる」など社会生活に困難が生じます。

適応障害の症状や原因について

適応障害の症状は人によって異なりますが、精神面と身体面に分けると以下のようなものが考えられます。

 

適応障害の精神面の症状

  • 抑うつ気分
  • 不安感
  • いらだち
  • 集中力の低下 など

適応障害の身体面の症状

  • 頭痛
  • 不眠や過眠
  • 疲れやすい
  • 食欲の減退 など

適応障害の原因は明らかなストレスによるものといわれています。適応障害は原因となっているストレスから離れることで多くの場合は回復するという傾向があります。

 

適応障害の方の中には「自分と同じような環境のなかで周りの人は仕事ができているのに」「自分には甘えがあるのでは」と自分を責めてしまう方もいるかもしれません。

 

しかし、同じ状況であってもストレスの感じ方は人によって異なります。例えば、人とたくさん関わることが大きなストレスになる方もいれば、全くストレスにならない方もいるでしょう。ストレスによって心身の不調をきたしたことは決して甘えではなく、治療が必要な状態だといえます。自らを責めないようにしましょう。

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適応障害で転職する前にできること

転職で環境を変えたいと思ってはいるものの、なかなか踏み切れない方もいるのではないでしょうか?

 

焦って転職先を決めることがないように、転職する前にできることを3つ紹介します。自分が無理のない範囲で出来るところから取り組んでみましょう。

リワーク(職場復帰支援プログラム)の活用を検討する

適応障害で休職中の方は、「リワーク(職場復帰支援プログラム)(※)」を利用できます。

 

(※)「復職支援プログラム」などの名称で呼ばれることもあります。

 

リワークとは「return to work(リターントゥワーク)」の略で、適応障害などの精神的な不調で休職している方が円滑に職場復帰することを目的としたプログラムです。

 

リワークを実施している事業所に通いながら以下のようなことを行います。

  • 生活リズムや体調を整える
  • 実際の仕事に近い事務作業などを通して復職の準備をする
  • 長く働き続けるためにストレス対処法を身につける など

リワークは医療機関や公的機関、企業、福祉施設などさまざまな場所で実施しています。復職に不安がある方は主治医や企業、各事業所などに相談してみるといいでしょう。

職場に業務の調整や配置変えなど相談する 

適応障害の方で現在の業務内容や人間関係などがストレスとなっている場合は、職場にサポートや合理的配慮(※)を相談してみましょう。

 

(※)合理的配慮とは、雇用分野において障害のある方もない方も同様な機会が得られるように、障害のある方が働く中で支障となっているものに対して、職場が過重な負担とならない範囲でおこなう配慮のことです。障害者雇用促進法により事業主は合理的配慮を提供しなければならないと義務付けられています。適応障害は、必ずしも合理的配慮の対象となるとは限りませんが、適応障害を発症する背景に、発達障害や双極性障害など合理的配慮の対象となる疾患がある場合があります。

 

職業サポートや合理的配慮の例としては、以下のようなものがあります。

  • 業務量の調整やタスクの優先順位の変更を依頼する
  • 業務や体調の相談ができるように、定期面談を設定する
  • 通勤ラッシュを避けた出勤時間にする など

職場サポートや合理的配慮は職場と本人が話し合って内容を決めます。相談は上司や人事の担当者へ行います。また体調への影響がみられるときは、産業医のほかに、社内のメンタルヘルス窓口などへも相談するといいでしょう。

 

自分ひとりで悩みを抱え込まず、周囲の人と相談しながらサポートを得ましょう。

外部の専門機関に相談する

社内で相談が難しい場合は、社外の専門機関などに相談する方法があります。

 

例えば、厚生労働省の運営する「こころの耳」では電話、メール、SNSで受け付けています。また自治体のWebサイトで仕事に関する相談窓口が設置されているところもあります。

 

ほかにも、就職をサポートする専門機関でも相談できます。就職をサポートする支援機関については、後ほど紹介します。

適応障害で転職する際のポイント

適応障害の方が転職先で長く働き続けるために大切なポイントを紹介します。

主治医と相談して時期を決める

転職をするタイミングは主治医と相談しながら決めていくことが大切です。

 

早く転職したいと思う方もいるかもしれません。しかし、症状が十分回復していない中で転職しても体調悪化が再燃する懸念があります。転職した時には、新しい仕事や人間関係などの負担がかかるため、基本は症状が回復してから転職をするようにしましょう。

 

また、職歴が途切れると「転職に不利なのでは」と不安になる方もいるかもしれません。しかし、転職先で長く働き続けるためには、焦って転職しようとせず、主治医の意見を踏まえた上で自分のペースで進めていくことが大切です。

 

退職した後の金銭的な問題が不安という方は経済的な支援制度について確認しておくとよいでしょう。支援制度には、傷病手当金や労災保険給付、雇用保険の基本手当(失業給付)などさまざまな種類があります。一定の条件を満たせば受給できる可能性があります。

自分に向いている仕事を探す

適応障害の方が転職したいと思ったときに、どのような仕事が自分に向いているのか、どのように適職を探したらいいのか、悩むことがあるかもしれません。ここでは、自分に向いている仕事を探すためのポイントについて解説します。

 

ストレスとなるものを把握する

転職先で適応障害の再発防止を防ぐためには、何にストレスを感じやすいかを洗い出した上でストレス対処法を身につけることが大切です。その上で、どのような職場環境であれば、自分がストレスを感じにくくできるのかを整理することが適職を探すための第一歩になります。

 

ストレスを洗い出す方法としては、職場のストレスを紙に書き出す方法や、インターネットなどで質問に答える方法などがあります。

 

例えば厚生労働省の運営するWebサイト「こころの耳」の中に、「職場のストレスセルフチェック」というページがあります。ストレスに関する質問に答えると自分が感じやすいストレスについて把握しやすくなります。ほかにもストレスを把握するためのツールがありますので、試してみるとよいでしょう。

ストレス対処法を把握する

自分が感じやすいストレスを把握したら、次はストレス対処法について考えてみましょう。

 

ストレス対処法はさまざまありますが、この章では3つ紹介します。

 

1.自分でストレスを対処する

ストレスの対処には3つのRが重要だといわれています。

  • レスト(Rest):休息、休養、睡眠
  • レクリエーション(Recreation):運動、旅行などの趣味や娯楽など
  • リラックス(Relax):ストレッチ、リラクゼーション音楽など

日頃からストレス発散ができるように、自分がリフレッシュできるものや、趣味ややりがいのあることを見つけるのが大切です。また規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとることもストレス軽減につながります。

 

2.周りの人に相談する

自分だけでストレスを対処することが難しい場合は、周りの人に相談したり、協力を得たりするようにしましょう。

 

例えば、家族や友人に相談するだけでも気持ちが楽になるという方もいます。相談しづらい場合は、カウンセラーなど専門家に相談するのも一つの手段です。また業務量の多さや職場でのコミュニケーションなどがストレスとなっている場合は、自分ひとりで抱え込まず、相談してみましょう。

 

3.ストレスそのものを無くす(回避する)

もともとのストレスとなるようなものを取り除いたり、避けたりする方法もあります。

 

例えば、ランチや飲み会のような私的交流がストレスのもととなっている場合は「飲み会に参加しない」「昼は一人で過ごす」などが考えられます。

 

このように、ストレス対処法はさまざまありますので、自分に合うストレス対処法を見つけていきましょう。

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自分のキャリアを分析する

ストレスの把握と対処法だけではなく、自分のやりたいことも明確にしましょう。そのためには、キャリアの分析をすることが大切です。

 

キャリア分析では、職業や経歴だけではなく、仕事や生活、家族との過ごし方など自分がどのようなライフスタイルを望んでいるのかなどを考えていきます。具体的には「自分の得意・不得意」「本当にやりたいこと」「大切にしたい価値観」などの項目を洗い出します。その上で、今できていないこと・できること、これからしていきたいこと、それにどういう自分でありたいかといったようなことを整理します。またインターネットや書籍などの情報を参考にするのもよいでしょう。

 

例えば、インターネットでは、厚生労働省のWebサイト「マイジョブ・カード」というものがあります。「マイジョブ・カード」はこれまでの経験やスキルだけでなく自分の価値観や興味関心などを書き出すことで、キャリアを整理することができます。

もしキャリア分析につまずいたら、キャリアコンサルタントなどの専門家に相談してみましょう。

 

キャリアを分析することで、自分が望む働き方が明確になり、転職先を選ぶ指針にもなります。

 

このようにして、

  • ストレスへの対処法の強化
  • 自分が望むキャリア

の両軸から分析してみると、安定して働き続ける転職先の方向性が見えてきます。

 

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適応障害で転職する際に活用できるサービスや支援機関

転職しようと思っても「自分に合う仕事が見つかるだろうか」「面接で適応障害のことを伝えるべきか」「転職先で再発したらどうしよう」などの不安がある方もいるでしょう。

 

そのような方をサポートするためのサービスや支援機関があります。一人で悩みを抱え込まず、サービスや支援機関に相談してみましょう。

 

ここでは、適応障害の方が転職する際に活用できるサービスや支援機関を紹介します。

障害のある方に向けた転職エージェント

転職エージェントとは、キャリアアドバイザーなど専門のスタッフが面談によって、相談者の経歴やスキル、今後の希望などを整理したうえで向いている仕事の求人を紹介するサービスのことです。

 

転職エージェントの中には障害のある方に向けたサービスを展開している企業もあり、これまでの経験や強み、障害特性なども踏まえたうえで求人の紹介をおこなっています。

 

以下、LITALICO仕事ナビで障害のある方に向けた求人紹介サービスを行っていますので参考にしてみてください。

 

※求人の状況によって、すべての方にご紹介ができないケースも存在します。

ハローワーク(公共職業安定所)

ハローワークは仕事探しをしている方を対象に就職のサポートを提供している行政機関です。公共職業安定所とも呼ばれています。

 

ハローワークには、適応障害の方をはじめとする障害のある方専門の相談窓口(例:専門援助部門など)が設置されています。専門知識のある担当者が転職の悩みに対するアドバイスや各種就活セミナーの案内、求人紹介などを行っています。

 

障害者手帳がなくても相談することは可能ですが、障害者求人の紹介を受けるためには、障害者手帳の取得が必要になります。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは適応障害など障害のある方の就職だけでなく生活に関するサポートもしている支援機関です。就職面では転職に関する相談をはじめ、就職活動のサポート、働いた後の定着支援などを行っています。

 

生活面では日常生活に関する生活リズム、体調管理、金銭管理など身の回りのことについての相談ができます。

 

事業所によっては、障害者手帳がなくても相談できる場合があります。利用を希望する方はお近くの障害者就業・生活支援センターに問い合わせましょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援とは、適応障害などの障害のある方を対象に一般企業などで働くために必要なプログラムや就職活動のサポートなどを提供している支援機関です。障害者手帳がなくても利用できる可能性があります。

 

企業によっては、選考や入社の前に職場でのインターンシップを挟むことがあります。入社前に自分が無理なく働けるかどうかを確認することができるのは、就労移行支援事業所を利用するメリットといえるでしょう。

 

また、就職した後も長く働き続けるための就労定着支援(※)が受けられます。例えば定期的に就労移行支援事業所のスタッフと面談を行ったり、本人が困ったときがあったときは本人と職場の間に入って、双方が解決できるようなサポートを行ったりしています。

 

※就労定着支援とは
福祉サービスを利用していた事業所で就職後6ヶ月まで継続してサポートします。就職後7ヶ月~3年6ヶ月の期間についてはご本人の利用意思があれば、就労定着支援を受けることができます。(詳しくは就労定着支援のページをご確認ください)
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就労移行支援事業所「LITALICOワークス」

就労移行支援事業所「LITALICOワークス」

 

就労移行支援事業所「LITALICOワークス」は障害のある方が自分らしく働くことができるように、一人ひとりにあったサポートを大切にしています。利用者一人ひとりの状況や望む働き方に合わせて、その人に合うサポートを提供しています。

 

LITALICOワークスは全国に120拠点以上の事業所があるため、その事業所によるネットワークを活かし、多数の企業と連携しています。そのため、就職前に実際の職場で働く企業インターンの機会が充実しています。

 

LITALICOワークスの利用有無を問わず、無料で見学・相談会を実施しています。休職中の方も一定の条件を満たせば利用できる可能性があります。「体調優先で働きたい」「無理のない働き方がしたい」「自分に合う職場を見つけたい」という方はぜひお気軽にご相談ください。

 

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適応障害と診断されたAさんが転職した事例

この章では、LITALICOワークスを利用して就職した事例をご紹介します。

 

Aさんは前職で営業ノルマやパワハラによるストレスがきっかけで適応障害を発症しました。その後、退職したのち主治医の勧めで就労移行支援事業所「LITALICOワークス」に通うことになりました。

 

就労移行支援事業所では、ストレス対処法を身につけるためのプログラムやワークショップに取り組みました。

 

Aさんは「自己発信」が苦手でストレスとなることがあっても、スタッフや周りの人になかなか言うことができませんでした。スタッフから「週1で振り返る機会を設けてみてはどうか」と提案され、実施することにしました。

 

すると、Aさんは小さな失敗にも大きなストレスと感じていることがわかりました。スタッフと一緒に一つずつの失敗を振り返っていくうちに「そのときに失敗と思っても後から振り返ると失敗でもないかも」と思えるようになりました。また「失敗のおかげで改善点がわかった」など失敗にもいろいろな面があることも理解でき、ストレスが減ったといいます。

 

実際に職場ではどうなのかを確認するために、企業インターンに参加しました。Aさんはもともと人と関わることが苦手だったため、人と関わらない仕事を望んでいました。しかし職場実習に参加してみて職場の人から声をかけてもらえない日が続くと「見放されたのでは」と不安になりストレスを大きく感じてしまう傾向があるということがわかりました。

 

Aさんは、丁寧なコミュニケーションがとれる職場環境が自分に合うとわかりました。また自己発信が苦手なため、1日1回は上司と話す機会を設けることが長く働き続けるために必要な配慮だと気づくことができました。

 

就職活動では、スタッフから企業に「企業インターンをした上で面接できないか」と相談したところ、その企業から了承を得られ、選考前に職場インターンを実施しました。

 

その結果、Aさんは大きなストレスを抱えることがなくスムーズに業務を進めることができたこと、そしてAさんが丁寧に仕事を進めてくれていると企業側も感じたようで、双方の理解が進んだのちに入社を決めることができました。

 

転職先では「毎日上司と朝礼・終礼をする」ことをサポートとして相談したことで、Aさんはストレスを感じることも少なく安心して働き続けられています。

 

※プライバシーの観点から事実を再構成しています

適応障害の転職まとめ

適応障害とは、特性のストレスによって心身に症状が表れ、社会生活に大きな影響が出る疾患のことです。

 

適応障害で転職を考えたときに「適応障害は転職に不利では」「転職先で再発するのではないか」という不安を抱くこともあるでしょう。

 

適応障害の方が転職先で働き続けるためには、自分がストレスを抱え込みやすい傾向と自己対処を検討すること、その上でキャリア分析や周囲によるサポートの内容などを整理することが大切です。

 

また、適応障害の方の仕事探しをサポートしている専門機関を活用することも検討するとよいでしょう。

 

LITALICOワークスは障害のある方が自分らしく働けるようサポートを行っています。これからの働き方に悩んでいる方、自分らしく働きたい方など、お気軽にLITALICOワークスへご相談ください。

更新日:2023/10/05 公開日:2023/09/06
  • 監修者

    産業医科大学 特命講師

    佐々木規夫

    【資格】医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/社会医学系指導医 / 労働衛生コンサルタント

    【経歴】産業医科大学医学部卒業、大手企業の専属産業医および精神科病院での勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。

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