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お役立ち仕事コラム

精神障害者保健福祉手帳とは?等級や申請方法、メリットデメリットを紹介します

更新日:2024/06/28

精神障害者保健福祉手帳とは精神疾患のある方が申請することができ、取得することで生活や仕事をするうえでさまざまなサービスを受けることができます。

 

障害の程度によって等級が分かれており、交付されるには日常生活や社会生活に支障のある状態が長く続いていることなどが条件となります。

 

この記事では等級の分け方や申請・更新の方法、受けることができる福祉サービスなどのメリット、またデメリットはあるのかについて解説していきます。

精神障害者保健福祉手帳とは?

精神障害者保健福祉手帳とは、精神障害のある方を対象とした障害者手帳のことです。

 

精神障害のある方と発達障害のある方が対象となり、障害のある方の自立と社会参加の促進を目的としてさまざまなサービスを受けることができます。

 

精神障害者保健福祉手帳を取得することで、自治体ごとに公共料金などの割引や税金の免除・減免などの生活の助けとなるサービスや、障害者求人へ応募できることや就労に関する支援の対象となるなど働くことへのサービスを受けることができるようになります。

精神障害者保健福祉手帳の対象は?発達障害のある方も対象となる?

対象者は厚生労働省によると、なんらかの精神の障害によって、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方を対象としています。 対象となるのはすべての精神障害で、例えば次のような障害があります。

  • 統合失調症
  • うつ病、双極性障害(双極症)(※1)などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物依存症
  • 高次脳機能障害
  • 発達障害(ASD(自閉スペクトラム症)※2、LD・SLD(限局性学習症)※3、ADHD(注意欠如多動症)※4)
  • そのほかの精神疾患(ストレス関連障害など)

すべての精神障害のある方が対象ではありますが、手帳を申請するにはその精神障害での初診日から6ヶ月以上が経っていることが必要となります。

 

※1 双極性障害は現在、「双極症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「双極性障害」といわれることが多くあるため、ここでは「双極性障害(双極症)」と表記します。

 

※2 以前は「自閉症」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事では以下、ASD(自閉スペクトラム症)と記載しています。

 

※3 学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。

 

※4 以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事では以下、ADHD(注意欠如多動症)と記載しています。

発達障害のある方も対象となる場合がある

発達障害のある方も精神障害者保健福祉手帳の対象となります。
発達障害と知的障害(知的発達症)※の両方ある方は、精神障害者保健福祉手帳と、療育手帳どちらの手帳の対象ともなります。

 

※ 現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。

精神障害者保険福祉手帳の等級(1級、2級、3級)の判断基準は?

精神障害者保健福祉手帳の等級は、1級から3級まであり、障害によって日常生活や社会生活にどのくらい支障があるかで判断されます。基準としては以下のようになります。

  • 精神疾患の状態と能力障害の状態の両面から総合的に判断し、次の3等級とする。
  • 1級:精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
  • 2級:精神障害であって、日常生活が著しく制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
  • 3級:精神障害であって、日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか、または日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

精神障害者保健福祉手帳を取得するメリット・デメリット

メリット

精神障害者保健福祉手帳を取得することで、さまざまなサービスを受けることができます。例えば税金の割引などの各種福祉サービスを受けることができます。

詳しくは交付時に配布されるガイドブックや、お住まいの自治体のWebサイトや障害福祉課などの窓口などで確認するといいでしょう。

割引などの福祉サービス

公共料金の割引や、助成金制度、税金の軽減などを受けることができます。

等級や所得状況、お住まいの自治体などにより受けることができるサービスは異なりますのでお住まいの自治体のWebサイトや窓口でご確認ください。

主な料金の割引や助成の一部を以下に紹介します。

  • 医療費の助成
  • 博物館などの公共施設の割引
  • JRやバス・航空運賃などの公共機関の割引
  • 携帯電話基本料金の割引
  • 公営住宅の優先入居
  • NHK受信料の免除

所得税や住民税の障害者控除

障害者控除とは納税者本人・配偶者・扶養親族に障害がある場合の所得控除の制度です。
中でも障害等級が1級の場合には「特別障害者」として通常の障害者控除よりも高い控除を受けることが可能です。障害者控除の額は以下のように区分されています。

  • 障害者:所得税27万/住民税26万
  • 特別障害者:所得税40万/住民税30万
  • 同居特別障害者:所得税75万/住民税53万

障害者控除を受けるには、会社員の方は年末調整で「扶養控除等の申告書」を提出することが要件となります。個人事業主や年末調整対象外の方は確定申告の際に申告する必要がありますので、詳細はお住まいの税務署にご確認ください。

自動車税・軽自動車税および自動車取得税の控除

こちらの控除では、精神障害者保健福祉手帳の等級が1級の場合、本人もしくは本人と生計を共にする方が所有する車で以下に該当する場合に控除を受けられる場合があります。

  • 障害のある本人が運転する場合
  • 本人と生計をともにする方が、障害のある方の通院や通学・通勤などのために運転をする場合

こちらも各都道府県や市区町村によって異なりますので、詳しくはお住まいの自治体に相談してみてください。

精神障害者保健福祉手帳を持つデメリット

精神障害者保健福祉手帳を持つことで、周りの方に障害があることが伝わることを不安に思う方もいますが、自分から言い出さなければ伝わることはありません。
取得することは任意ですので、申請をしていないのに障害者手帳が送られてくるということもありません。また自分の意志で返還することもできます。


申請や更新などの手続きがかかることがデメリットといえるかもしれません。書類や写真などを準備する必要があり、診断書の交付では自己負担も発生します。また交付されるまでに1~2ヶ月かかることが多いといわれています。

 

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就職で活用できるサービス

精神障害者保健福祉手帳を所持していると、さまざまな仕事に関する制度やサービスを活用することが可能になります。

障害者求人へ応募できる

障害者求人とは、障害者手帳を持つ方が応募できる求人のことで、障害のある方が働きやすくなるような配慮が受けやすくなることをいいます。企業は従業員数に応じて、一定の人数の障害のある方を雇う義務があります

公共職業安定所(ハローワーク)

ハローワークでは障害者求人を調べることができます。障害者用窓口もあるので、そちらで職員と相談しながら求人の選択や面接の設定などをおこなうことができます。

障害者職業センター

就職のため訓練や、講習などを受けることができるほか、リハビリテーション計画の作成、職業適性検査など働くための支援を受けることができます。

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障害福祉サービス

障害のある方が日常生活や社会生活を営むために、必要な訓練などを提供するサービスのことで、ここでは仕事に関係するサービスを紹介します。

就労継続支援A型

雇用型とも呼ばれ、原則的に利用者は事業所と雇用契約を結びます。そのため労働基準法や最低賃金が適用され給料が支払われます。その中で働く機会の提供や一般企業への就職へ向けた支援をおこなっていきます。

就労継続支援B型

非雇用型と呼ばれ、利用者は事業所と雇用契約は結びません。給料の代わりに作業に応じた「工賃」が支払われます。就労移行支援やA型への移行や一般企業への就労に向けた訓練をおこないます。

就労移行支援

一般企業に就職を目指す障害のある方が通いながらプログラムや職場実習をおこなう事業所です。専門のスタッフと働くためのスキル取得に取り組むことや書類添削、面接練習などの支援を受けることができます。

就労定着支援

生活介護・自立訓練・就労系福祉サービスを利用して就職した方が利用できる支援で、働いた後に企業や利用者との定期面談や業務の調整などを間に入っておこなうことで長く働くことをサポートする制度です。

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精神障害者保健福祉手帳の申請方法

精神障害者保健福祉手帳の申請は、以下の書類をそろえてお住まいの市区町村の障害者福祉課などの窓口でおこないます。

  • 申請書
  • 診断書または、精神障害による障害年金を受給している場合はその証書の写し※診断書は、精神障害の初診日から6か月以上経ってからのもの
  • 本人の写真

申請すると、各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターにおいて審査がおこなわれ、認められると手帳が交付されます。交付まではおおむね1~2ヶ月程度かかることが多いです。
また申請は家族や医療機関関係者などが代理でおこなうこともできます。

精神障害者保健福祉手帳の有効期限と更新方法

精神障害者保健福祉手帳は2年ごとに更新をおこなう必要があります。
更新は期限が切れる3か月前からおこなうことが可能で、期限は手帳に記載してあります。
更新の手続きも、申請時と同様の書類を添えて市区町村の障害福祉課などの窓口でおこないます。
その他に期限内でも以下のような場合に手続きが必要となってきます。

  • 持ち主の住所・氏名が変更となった場合
  • 等級が重く(軽く)なった場合に等級の変更する場合
  • 手帳を紛失・破損し再交付を申請する場合
  • 手帳を返還したい場合

上記に該当するときには早めに手続きをおこないましょう。

精神障害者保険福祉手帳のまとめ

精神障害者保健福祉手帳を取得することで、日常生活や社会生活で役立つサービスを受けることができ、うまく活用することで精神的・経済的な負担も軽くすることができるといえます。働くうえでは障害者求人に応募できるなど、選択肢を広げて働きやすくする支援を受けられます。

障害のある方の就職をサポートする「就労移行支援」

 

LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営し、障害のある方の「働きたい」をサポートしています。

 

LITALICOワークスでは一人ひとりの症状や得意不得意、希望する就職などを伺い、計画を立てたうえで支援をおこないます。

 

例えば以下のようなサポートをおこなっています。

  • プログラムを通して自己理解を深め、ストレスコントロールを身につける
  • 企業インターンを通して、自分が安心して働けるような職場環境を探す
  • 就職後、本人と職場の定期的な面談を通して長く働き続けるためのサポートをおこなう など

上記は一例です。

 

障害を開示するかどうかで悩んでいる場合でも、上記のような取り組みを通して自分に合う働き方を就労支援のスタッフと一緒に検討することもできます。その結果、障害を開示せず働くこととなった場合でも長く働き続けられるようサポートをおこないます。

 

LITALICOワークスは無料で随時相談や見学を実施しています。障害者手帳がなくても利用できる可能性があります。「無理のない働き方がしたい」「理解のある職場で働きたい」「体調優先で働きたい」など仕事のお悩みや働き方の希望があれば、ぜひ一度お問い合わせください。一緒に自分らしく働く方法を考えていきましょう。

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更新日:2024/06/28 公開日:2021/10/27
  • 監修者

    東京福祉大学・大学院 社会福祉学部 講師

    中里 哲也

    EBP(Evidence Based Practice)に基づいたソーシャルワーク支援展開を目指し活動中。
    専門は「医療福祉」「教育福祉」「地域福祉」「人材育成」など多岐に渡る。

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