「うつ病のような症状があるけれど、精神科に行くのは不安」
「どうやって診断されるのだろう、テストなどするのだろうか」
「自分の場合でも診断書がもらえるのかな?」
精神科や心療内科に行ったことがない方の中には、どのような流れで診断されるのかイメージが湧かず、不安を感じて、受診を躊躇している方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、初めて受診をするときの診断方法や診断基準、診断書のもらい方などについて解説をします。
「うつ病のような症状があるけれど、精神科に行くのは不安」
「どうやって診断されるのだろう、テストなどするのだろうか」
「自分の場合でも診断書がもらえるのかな?」
精神科や心療内科に行ったことがない方の中には、どのような流れで診断されるのかイメージが湧かず、不安を感じて、受診を躊躇している方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、初めて受診をするときの診断方法や診断基準、診断書のもらい方などについて解説をします。
うつ病の診断方法について解説をする前に、まずはうつ病の概要や主な症状について説明をします。
うつ病とは、なんらかのストレスを受けるなどさまざまな理由により神経伝達物質の作用が低下している状態だと考えられています。うつ病になると、憂うつな気分になったり、意欲が低下したりという精神的な症状だけでなく、身体的な症状を伴うこともあります。身体面では、食欲不振や不眠などの症状が表れることがありますが、人により程度はさまざまです。
初診時には、まず問診をおこないます。また、多くの病院では身体疾患のスクリーニングのために採血をおこないます。その後の検査の有無については、医師の治療方針や症状の程度により異なります。
ここでは一般的な流れについて説明をしていきますが、病院によって内容が異なる場合もあります。受診を検討している病院の診察内容や検査内容などが気になる場合には、事前に病院のWebサイトを確認してみましょう。また直接病院に問い合わせするのもいいでしょう。
問診では、医師が患者に対してさまざまな質問をしながら、診断の手がかりを探っていきます。問診の前に「予診」といって、医師の代わりに看護師や臨床心理士、精神保健福祉士が簡単な聞き取りをおこなうこともあります。
とくに、うつ病などの精神疾患は目に見えない病気のため、問診が非常に大切な役割を担っており、30分~1時間ほどじっくり時間をかけておこなう病院がほとんどです。主に以下のような内容を聞かれることが多いようです。
答えにくい内容を無理に答える必要はありませんが、より適切に治療を進めるためにも、話せる範囲で伝えられるといいでしょう。その場でうまく話せる自信がない場合には、事前に紙やスマートフォンのメモなどにまとめておくこともおすすめです。
内臓の不調によって抑うつ症状が表れることがあります。例えば、血液検査で精神症状を伴う甲状腺機能障害は、甲状腺ホルモンを測定することでスクリーニングすることができます。精神症状に伴いやすい動悸やめまいなどの身体症状も、貧血症状から引き起こされることがあります。
画像検査には、CT検査やMRI検査があり、身体の内部の断面を撮影する診断方法です。医師の判断により、時に脳の病気など、脳自体に異常がないかを確認するためにこのような診断方法を用いることもあります。
光トポグラフィー検査とは、脳の血流量の変化を測定して、うつ病かそうでないかの判断の手助けをする診断方法です。うつ病以外にも、双極性障害(または躁うつ病)、統合失調症などの精神疾患があります。これらは初期にうつ症状が表れることが多く、問診のみでは判別が難しいとされています。しかし、光トポグラフィー検査で脳の血流量をグラフ化することで、それぞれのパターンに当てはまるかどうかを確認することが可能になります。
あくまでも診断補助のために使用されるものですが、問診と合わせて活用することで、正確な診断の確率が高くなる傾向があるといわれています。
心理検査とは、性格の傾向や知的機能や記憶、発達の傾向などについて、客観的に測定・把握するためにおこなわれる診断方法です。ほかの検査同様、実施の有無は医師の方針や症状の程度によりますが、あくまでも診断の補助として用いられることがあります。
心理検査にはいくつかの種類があり、具体的な検査内容としては、記憶力や注意力などをみる認知機能検査や、うつ症状の心理検査などがあります。
うつ病の診断方法についてご紹介しましたが、ここでは予約から診断されるまでの流れについてご紹介します。病院によって流れや内容は多少変わる場合がありますので、気になる場合は直接問い合わせをしてみてください。
基本的に、精神科や心療内科の場合、事前の予約制となっている場合が多いです。電話予約がほとんどですが、最近ではWeb予約などを受け付けている場合もあります。また、予約時には来院希望日のほかに、簡単な相談内容を聞かれることがあります。
初診時には、問診をおこないます。実際に問診を進める前に、問診表の記入をすることが多く、その問診票をもとに困りごとや症状を伝えていきます。
問診の結果を踏まえて、医師の診断の見立てが伝えられ、今後の治療方針(服薬の有無・種類など)を決定していきます。
また、ご本人の合意のうえ、その場で次の来院予定日を決める場合が多くなっています。
初診の際のよくある持ち物
病院によって異なりますので、持ち物については病院に確認しましょう。
別途検査ありの場合
医師が必要だと判断した場合には、心理検査やMRI検査、光トポグラフィー検査などを受けます。その後、検査結果の説明と診断の見立てが伝えられ、治療方針を決定していきます。
別途検査なしの場合
初診からの経過(服薬の効果など)を観察するために一定期間経過後、再診します。服薬の効果はすぐに表れるものではありませんが、服薬による症状の変化などを確認します。
うつ病の診断基準では、1日中、気分が落ち込み何もする気になれなかったり(抑うつ気分)、興味があったものに興味が持てなくなる・喜びを感じていたことを喜べなくなる(興味または喜びの喪失)がほぼ毎日続くことが挙げられます。そのほか、体重の有意な減少(または増加)や食欲減退(または増加)、不眠・過眠、焦燥感、疲労感・気力の減退、自分に価値がないと感じる(無価値感)、思考力の減退、希死念慮などがみられることもあります。
これらの症状が5つ以上、1日の大半、ほとんど毎日あり、少なくとも2週間以上続いている場合には、うつ病の可能性があります。
上記のような症状に当てはまる場合や、不調が続いていて違和感がある場合には、精神科や心療内科の受診を検討しましょう。最近はインターネットでも「うつ病診断」などの情報がありますが、鵜吞みにしすぎず、参考程度にとどめるようにしましょう。
うつ病のような精神疾患は、早期に治療を開始することで重症化を防ぐことにつながります。決して自己判断せずに、まずは専門家の意見を聞くことが大切です。
「こんな些細なことで通院していいのか不安」という方や、「いきなり病院に行くのは抵抗がある」という方は、各都道府県に設置されている精神保健福祉センターなどに相談してみるのもいいでしょう。精神保健福祉センターでは、メンタルヘルスに関する相談をはじめ、病院や福祉サービスなど地域の支援機関に関する情報提供をしてもらうこともできます。
ここでは、うつ病の診断書を取得するまでの流れや一般的な期間についてご紹介します。また、診断書はどのような時に必要なのか、診断書をもらうことでデメリットはあるのかなどをお伝えしていきます。
診断書をもらうためには、まず精神科や心療内科を受診し、専門医による診断を受ける必要があります。診断書の発行までに1ヶ月程度時間がかかる場合もありますので、「復職を検討している」など、診断書が必要になることが分かっている場合には、余裕を持って受診するように心がけましょう。
診断書のもらい方は、それぞれの病院によって異なります。事前の申告が必要な場合もあれば、大きな病院だと専用の窓口が設けられている場合もあるため、通院先の取得方法も確認しておくといいでしょう。
また、診断書の目的に応じて、作成にかかる費用や期間が異なる場合がほとんどです。申告したその日にもらえるとは限らないため、病院側に目安を確認しておきましょう。
うつ病の診断書が必要になるのは、主に以下のような場面です。
うつ病で休職するには、多くの場合、会社側から診断書の提出を求められます。医師の客観的な診断書の内容をもとに、休職期間などを決めていきます。
また、休職していた社員が復職をする際にも、医師による「復職可能」などと記された診断書が必要となる場合があります。その場合、必ずしも職場から求められている業務をこなせる状態に回復しているとは限りません。「どの程度の勤務であれば可能か(業務内容や勤務時間など)」についても診断書などに記載してもらい、復職時の目安とします。
自立支援医療制度とは、精神疾患に必要な治療のための通院時にかかる医療費負担を軽減するための制度です。ただし、この制度が使えるのは「指定自立支援医療機関」のみとなるため、必ず通院先の情報を事前に確認しましょう。
うつ病で障害年金を申請する場合にも、医師の診断書が必要です。所定の様式が決まっていたり、診断書の作成時期にも指定があったりしますので、確認したうえで余裕を持って診断書の依頼を進めていけるといいでしょう。
うつ病で障害者手帳を申請する場合にも、医師の診断書が必要になる場合があります。ただし、障害年金を受給している方の場合には、その証書などの写しで代用できる場合もあります。
診断書をもらうメリットは、上記の通り「うつ病の治療に専念できること」や「経済的な負担を軽減できること」などがあります。
うつ病は見た目からは分かりにくく、時に周囲から誤解をされてしまう場合もありますが、医師の診断書があることで客観的な証明にもつながるため、精神的にもうつ病の治療に専念しやすくなります。
診断書を作成するときに費用がかかりますが、自立支援医療制度の対象となったり、障害年金が受給できたりすると、経済的な負担を長期にわたって軽減できます。
うつ病で診断書をもらう場合に注意すべきは、「発行時に費用がかかること」や「作成に時間がかかる場合があること」でしょう。
費用は病院により異なりますが、基本的には3,000円~7,000円程度です。ただし、診断書の種類により複雑な記載が必要になる場合は、10,000円程度かかることもあります。
作成の期間についても病院によりさまざまですが、2週間~3週間程度かかる場合がほとんどです。内容次第では、これ以上時間がかかる場合もあるため、提出の期間が決まっている場合などは、余裕を持って依頼をするようにしましょう。
うつ病と診断された後の治療方法や、うつ病の方が活用できる支援制度・支援機関について紹介をします。
うつ病の治療は、主に3つの期間(急性期、回復期、再発予防期)に分けられるとされています。急性期では休養や薬物療法を、回復期と再発予防期では薬物療法および精神療法が重視されています。
うつ病は、なんらかのストレスを受けるなどさまざまな理由により神経伝達物質の作用が低下している状態だと考えられています。そのため、まずは脳を休ませることが重要です。
うつ病の症状(例えば眠れない、不安が強いなど)により十分な休養が取れない場合などには、薬物療法が検討されます。また、うつ病は脳内の神経細胞の情報伝達になんらかの不具合が生じることで発症するといわれています。それらの不具合を改善し、症状の悪化を防ぐためにも薬物療法がとられる場合があります。
精神療法は、症状が落ち着いてきた際に、うつ病の再発防止を目指すために取り入れます。休養や薬物療法のみでは、職場や対人関係からのストレスを軽減したり、物事の捉え方などを柔軟にしたりすることは難しいといわれています。そのため、職場復帰の後にもストレスを溜め込まず、うつ病の症状とうまく付き合っていけるよう、専門家のサポートが必要になるでしょう。
うつ病の方が活用できる生活面の支援制度をご紹介します。
先ほども記載した通り、うつ病などの精神疾患の治療にかかる医療費の自己負担を軽減する制度です。うつ病は再発防止のために継続的な通院が必要になる場合があるため、経済的な負担を減らし、治療に専念できるように自立支援医療制度が設けられました。
対象になる医療費は、外来・薬・デイケアや訪問看護などにかかるお金です。自己負担額の上限は所得に応じて決められていますが、通常医療保険で自己負担は3割のところ、自立支援医療制度を活用すれば、原則自己負担1割となります。
障害者手帳には3つの種類がありますが、うつ病の方が取得できる可能性があるのが「精神障害者保健福祉手帳」です。精神障害者保健福祉手帳は、精神障害があり、日常生活や仕事などになんらかの支障が生じている方を対象にしています。その中でも症状の程度により、1級から3級までの等級に分けられています。
うつ病の方が精神障害者保健福祉手帳を取得することで、公共料金などの割引や所得税、住民税の控除など、さまざまな経済的支援を受けることができます。
障害年金は、病気や怪我などにより仕事などの社会生活が制限される場合、生活費を補うために支給される制度です。障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、初診日に国民年金に加入していたら障害基礎年金、厚生年金に加入していたら障害厚生年金が対象となります。
また、障害厚生年金の該当条件よりも軽度の障害が残った場合に限り、「障害手当金(一時金)」を受け取ることができる場合もあります。
うつ病の方の仕事面をサポートしてくれる、支援機関をご紹介します。
ハローワークには、障害のある方専用の窓口が設置してあり、うつ病などの精神疾患に関する知識のあるスタッフが仕事探しのサポートをしています。希望条件のヒアリングや求人の提案をはじめ、応募書類の作成や面接練習のフォローもおこなっています。
障害者就業・生活支援センターとは、障害のある方の身近な地域において、仕事や生活の幅広い困りごとに対し、一体的な支援をしている機関です。「就業支援」と「生活支援」でそれぞれ専任の担当者が就いており、地域の支援機関や医療機関などとも連携をしながら、障害のある方の仕事生活における自立に向けて必要なサポートをしています。
地域障害者職業センターは、障害のある方向けに専門知識のあるスタッフが、就職活動~職場定着まで幅広く支援をしている機関です。例えば、自分に合った仕事の傾向を知るための「職業準備支援」、就職後に働きやすい環境を整える「ジョブコーチ支援」などがあります。
リワークは別名「職場復帰支援プログラム」などとも呼ばれ、うつ病などで休職している人が、職場復帰に向けて取り組むリハビリテーションプログラムのことをいいます。医療機関が実施している場合がほとんどですが、地域障害者職業センターや、企業内でリワーク支援をおこなっているところもあります。
就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害のある方に向けて、就職に必要な知識の習得、企業インターンの機会提供や就職活動のサポートなど、幅広い支援を提供する事業所です。一人ひとりに個別の支援計画書があり、希望する働き方や就職時期に合わせて就職の準備を進めていきます。
LITALICOワークスでは全国に「就労移行支援事業所」を展開し、累計13,000名以上の方の仕事探しをサポートしてきました。
仕事探しや応募書類の作成、面接対策などのサポートはもちろんのこと、障害のある方が「自分らしく働く」を見つけるためのカリキュラムを複数用意しています。
例えば、自分の得手不得手を分析する「自己理解プログラム」や、ストレスの原因に気づき対処法を考える「ストレスコントロールプログラム」、職場での無理のない人付き合いについて学ぶ「コミュニケーションプログラム」などです。
どのようなことができるか興味がある方は、お気軽にご連絡ください。
精神科や心療内科への受診が初めての場合、診断方法など分からないことばかりで躊躇してしまう方も多いでしょう。ですが、うつ病などの精神疾患は早期に治療をおこなうことで回復を早め、長期化・重症化のリスクを抑えることにもつながります。できるだけ早めに受診するようにしましょう。
それでも抵抗がある場合には、精神保健福祉センターなどに相談してみるところから始めるてみるのもよいでしょう。経済面や生活面の相談にも乗ってもらえます。不安な点を一つひとつ解消したうえで、治療をはじめましょう。
LITALICOワークスでは、医療機関や地域の支援機関と連携を取りながら、うつ病の方の就職活動を数多くサポートしてきました。「就職したいけど、何から手をつけたらいいのか分からない」「無理のないペースで、自分に合う働き方を見つけたい」という方は、ぜひお気軽にLITALICOワークスにご相談ください。
監修者
産業医科大学 特命講師
佐々木規夫
【資格】医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/社会医学系指導医 / 労働衛生コンサルタント
【経歴】産業医科大学医学部卒業、大手企業の専属産業医および精神科病院での勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。
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