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お役立ち仕事コラム

アスペルガー症候群の方に向いている仕事とは?仕事の悩みや対処法も解説

更新日:2024/08/07

アスペルガー症候群の方は、仕事をするうえで、以下のような困りごとを感じることが多いといわれています。

  • 「適当にまとめておいて」など抽象的な指示が理解できなくて困っている
  • 周囲の雑音が気になって、目の前の仕事に集中できない
  • 急な予定変更があると、どうしたらいいのか分からず、混乱してしまう など

このような困りごとは、アスペルガー症候群の特性があるから必ず起きるというものではありません。職場の環境や周囲との関わり方などにも影響されます。

 

そのため、自分の特性を理解したうえで特性に合った対処法や職場環境を見つけることが大切です。

 

この記事では、アスペルガー症候群の方が仕事をするうえで抱えやすい悩みや対処法、向いている仕事を探すためのポイント、活用できる支援サービスなどについて紹介します。

アスペルガー症候群とは?

アスペルガー症候群では、「対人関係・社会性における困難さ」と「こだわりの強さ」といった特性がみられます。

 

以前は、自閉的特徴があり、その中でも言葉や知的の発達に遅れがない場合「アスペルガー症候群」という名称が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。成人の方の中には、旧診断名の「アスペルガー症候群」で診断された方も多いため、本記事では「アスペルガー症候群」の名称を使用します。また『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に基づき、解説します。

 

アスペルガー症候群の特性によって仕事上で困ることが多く、「周囲の方とのコミュニケーションがうまく行かず、その結果として仕事が続かない」「周りの音や動きが気になって、目の前にある仕事に集中ができない」と悩んでいる方もいます。

以下では、アスペルガー症候群の方に多く見られる特徴について紹介します。

アスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群の主な特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

  • コミュニケーションや対人関係を築くことが苦手
  • 興味関心に偏りがある
  • 聴覚過敏や視覚過敏などの感覚過敏(もしくはその逆の感覚鈍麻)
  • 特定の事柄にこだわりを強く持つ など

しかし、同じ診断名であっても特徴や困りごとは一人ひとり異なります。

 

例えば「比喩や皮肉など抽象的なコミュニケーションの理解が難しい」という方もいれば、「マイペースで急な仕事の変更や融通をきかせた対応が苦手」や「工事現場の音や特定の人の声が過剰に気になり、仕事が進まない」という方もいます。

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アスペルガー症候群の方の仕事での悩み

アスペルガー症候群の特徴によって生じる仕事上での悩みとして、考えられる例を2つ挙げていきます。

コミュニケーションがうまくいかない

コミュニケーションがうまくいかない背景には「曖昧な指示の理解が難しい」「暗黙の了解など空気を読んで会話することが難しい」「口頭で指示をされるのが苦手」などさまざまな理由が考えられます。

 

例えば、曖昧な指示の理解が難しい場合「(通常はキッチンのスタッフだが)フロアが大変な時は接客に入ってほしい」「(会議のときに)なるべく巻きで進行して」といったような曖昧な指示だと、「大変」「巻き」の基準が分からず、困ってしまうことがあります。

臨機応変な対応が苦手

アスペルガー症候群の方は、一度決めた手順、興味ある事柄や活動などに強くこだわる傾向があります。例えば、なんらかの事情により普段の手順通りに仕事が進められなくなった場合、臨機応変に対応できず混乱するといったことが挙げられます。

 

また、過集中の傾向がある方は、目の前にある仕事に入り込み過ぎて周りからの指示が入りにくくなったり、複数の仕事を同時並行で進めることが難しかったりする場合もあります。

二次障害につながることも

ここまで紹介してきたような仕事の悩みが重なることで、ストレスが蓄積され、心身のバランスを崩すことがあります。具体的には意欲低下や抑うつ状態、過度な不安感など、精神的な症状が見られる場合があります。このような状態を「二次障害」と呼びます。

 

上記のような症状が悪化すると、長期的な治療が必要になる場合もあるため、ストレスが大きくなる前に対処をすることが何より大切です。仕事上の悩みがある場合には一人で抱え込まず、病院や周囲の方(家族や友人、同僚など)などに相談しましょう。

アスペルガー症候群の方が向いている仕事を探すコツ

アスペルガー症候群の方の中には「上司から抽象的な指示をされて混乱してしまい、仕事がなかなか進まない」「転職しても人間関係がうまくいかず、仕事が続かない」などの理由から、自分に向いている仕事が分からなくなっている方も多いのではないでしょうか。

 

この章で紹介するのは、あくまでも「向いている仕事探しのコツ」であり、「この仕事がアスペルガー症候群の方には向いている・この仕事がオススメ」というものがあるわけではありません。

 

その理由として「向いている仕事」や「適職」を探すうえで一人ひとり大切にしたいものは異なるためです。例えば「特性が強みとして活かされるような仕事に就きたい」という方もいれば、「特性による困りごとができるだけ起こらないような環境を探したい」という方もいます。

 

このように「仕事をするうえで自分にとって大切にしたいこと」について考えたうえで、自分でできる対処法や必要な配慮を整理することが、理想を叶える近道となります。

 

この章では、アスペルガー症候群の特性からくる仕事上での困難さを軽減させるためのポイントを踏まえ、仕事探しのコツについて3つ紹介します。

1.自己分析をする

まずは、これまでの生活や仕事でつまずいた点を振り返り、自分の困りごとを把握することが大切です。またそれだけではなく、仕事でうまくいったことや得意なことも洗い出すことで、自分が続けやすい仕事や続かない仕事の傾向がつかみやすくなります。そのうえで、自己対処できること・自己対処でカバーが難しいものはどのようなサポートや合理的配慮(※)があればできるのかを考えていきます。

 

自己分析のやり方として、ひとりで考えるだけではなく、周囲の方(家族や主治医など)にも意見を聞くといいでしょう。

 

(※)合理的配慮

障害のある方が働くうえでの困難さを軽減するために、事業主が過重な負担にならない範囲でサポート(合理的配慮)を提供することです。合理的配慮は障害者雇用促進法によって事業主が障害のある方に対してサポート(合理的配慮)の提供が義務付けられています。

 

具体的な内容について、以下の記事でも解説していますので、ご参考ください。

2.障害者雇用で働くことを検討する

アスペルガー症候群の特性とうまく付き合いながら働く方法として、障害のある方の採用を前提とした「障害者雇用」という選択肢があります。

 

障害者雇用求人(障害のある方のための求人)に応募するためには、障害者手帳を持っていることが条件となります。かつて「アスペルガー症候群」と診断された場合、「精神障害者保健福祉手帳」が取得できる可能性があります。

参考までに、発達障害を開示した働き方、開示しない働き方、それぞれの職場定着率を紹介します。

 

障害者職業総合センターのデータによると、発達障害のある方が一般求人経由で働くよりも障害者雇用求人経由で働く方が、1年後の定着率(1年後も働き続けている方の割合)が高い傾向にあります。

 

 

なお、こちらはあくまでも傾向であり、どのような働き方がいいのか、メリット・デメリットの感じ方などは人によって異なります。

3.支援機関を活用する

ほかにも、アスペルガー症候群の方の「働く」をサポートしてくれる就労支援機関を活用することもひとつの方法です。

 

就労支援機関とは障害のある方の就職・職場定着などのサポートをおこなう施設で、施設によってサポート内容が異なります。

 

就労支援機関のスタッフが第三者として関わることで、自分の特性や得意・苦手などを客観的なアドバイスを踏まえて整理できるようになります。また、自分に合う仕事を考えたり、希望する職場環境を一緒に探してもらえたりすることもできます。

 

どのような就労支援機関があるかは、この後の章で紹介します。

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アスペルガー症候群の方が仕事を続けるための工夫

仕事を続けるうえで、困りごとはどうしても生じるものです。長く働き続けるためには、対策を考えておくことが大切です。

苦手なことは自己対処や周囲のサポートを検討する

苦手なことに対して「自分で対処できること」と「周囲のサポートがあればできること」に分けて対策を立てていくといいでしょう。以下で例を紹介します。

自分で対処できることの例

  • 作業に没頭していると休憩を取ることを忘れてしまうため、1時間おきにアラ一ムをかける
  • 指示を受けたときに自分が理解しやすいメモの取り方を工夫したり、テンプレートを作ったりする
  • 周囲の音が気になるときは、耳栓やイヤーマフを着用する など

周囲の配慮があればできることの例

  • 過集中になっている様子が見られたときには声をかけてもらうようお願いする
  • 指示出しのときには、抽象的な言葉を使わず、具体的に数値などを用いて伝えてもらうよう依頼する
  • 周囲の音が気になるときは、座席配置の相談や個室の利用、在宅勤務などを相談する など

特性や強みを活かせそうなことを考える

苦手なことの対処だけではなく、自分の特性や強みを活かすことを考えてみるのもいいでしょう。

 

例えば「興味関心に偏りがある」という特性は、裏を返せば「興味のあることに高い集中力を発揮できる」や「特定の分野に関して探究心を持って取り組める」などの強みになることもあります。

 

また「強いこだわりがある」という特性を活かし「納得できるまで努力を惜しまないといった粘り強さ」や「決められたルールを確実に守る正確性・安心感」などの強みになることもあるでしょう。

 

今「苦手」と認識していることも、視点を変えてみることで「強み」となる場合もあります。自分ひとりで強みを見つけられない場合には、周囲の方にも尋ねてみるといいでしょう。

職場の窓口に相談する

仕事をしている方で、困っていることがある場合には、上司に相談してみましょう。直属の上司に相談しづらい場合には、人事部などほかの部署に相談してみることもひとつの方法です。

 

職場によっては、産業医、メンタルヘルスの窓口などの職場の相談窓口を設置している場合もあります。一人で悩みを抱え込まず、相談窓口を活用してみるといいでしょう。

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アスペルガー症候群の方が仕事探しに活用できる支援機関

アスペルガー症候群の方が向いている仕事探しをするために、活用できる就労支援機関があります。

 

基本的にどの就労支援機関でも、障害者手帳がなくても相談できます。まずは気軽に相談してみましょう。

ハローワーク

ハローワークには、障害のある方の就職を支援する「障害者関連窓口(専門援助部門など)」があります。

 

就職に関する相談や障害者雇用求人(障害のある方のための求人)の紹介、応募書類の作成や面接対策などをおこなっています。ハローワークに限らず、地域の就労支援機関とも連携をしているため、就職後の定着まで幅広いフォローが可能です。

 

なお、障害者手帳がなくても相談できますが、障害者雇用求人(障害のある方のための求人)の紹介を受けるには障害者手帳が必要です。

障害者就業・生活支援センター

障害のある方の身近な地域において、「働くこと」と「生活すること」の両面から、一体的にサポートをしている就労支援機関です。名称が長いことから、省略して「なかぽつ」「しゅうぽつ」と呼ばれることもあります。

 

働くサポートは就職準備から入社後の定着支援、生活のサポートは健康管理や金銭管理など、幅広く提供しているのが特徴です。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業などへの就職を目指す障害のある方の求職から就職、職場定着までの一連の過程をサポートする事業所です。また、就労定着支援として長く働き続けるためのサポートを最長3年にわたっておこなっています。

 

利用者は就労移行支援事業所に通い、以下のようなサポートを受けられます。

  • 自己分析や障害理解などのプログラムやワークショップの受講
  • 実際の職場で一定期間働く企業インターンへの参加
  • 面接や履歴書対策などの就職活動のサポート など

障害者手帳がなくても、自治体の判断により認められた場合、就労移行支援事業所の利用が可能になります。

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アスペルガー症候群の方の仕事をサポートする「LITALICOワークス」

就労移行支援事業所「LITALICOワークス」では、これまで多くのアスペルガー症候群の方の就職活動をサポートしてきました。

 

LITALICOワークスには15年以上の支援実績があり、全国に130拠点以上の事業所があります。事業所によるネットワークを活かし、全国の企業との連携にも強みを持っています。ハローワークにはないオリジナル求人や、企業でのインターン機会のバリエーションも豊富です。

 

また自己理解を深めるためのプログラムもあります。自己分析するだけではなく、企業でのインターン機会を通して実践しながら、自分に向いている仕事探しの整理をサポートしています。就職した後も本人が困ったときに面談をしたり、必要に応じて企業との間に入って解決方法を一緒に考えたりするサポートもおこなっています。

 

同じ障害のある方でも、持っている特性や希望する働き方は異なるため、LITALICOワークスでは、一人ひとりの困りごとやスキルに合わせた最適なサポートをおこなっています。

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ここでは、実際にLITALICOワークスを利用して一般企業に就職した方の、事例を2つ紹介します。

【事例】マルチタスクが苦手でも、自分のスキルを生かして働く道はある

マルチタスクが苦手なため、前職では仕事での失敗を繰り返すようになってしまったKさん。仕事がうまくいかないことに悩み、発達障害があるのではないかと不安になったため31歳のときに病院を受診。そこではじめて診断を受けました。

 

就職した後も働き続けられるようにサポートをしてくれる就労定着支援があることに魅力を感じ、家族からの後押しもあり、LITALICOワークスの利用を開始。

 

LITALICOワークスでは、パソコンスキルを高めるためにタイピングに取り組んだり、スタッフやほかの利用者と情報交換をしながら「働くうえでの対処法」について整理したりしました。

 

10ヶ月の利用期間を経て、メガネブランドの広報のサポート担当として一般企業に就職したKさん。今では、部署内のメンバーと得手不得手を共有するためのシートを作り、自分の特性を理解してもらったうえで安心して働くことができています。

 

「障害を開示して働くことに抵抗はなかったのか?」「具体的に部署内のメンバーにどのようなシートを共有しているのか?」など、詳細について気になる方はこちらの記事をご覧ください。

【事例】障害と向き合うことで積極性が生まれ、今は仕事が楽しい

大学在籍時、突然慢性疲労の症状が表れ、そこから3年間ほど寝たきりの生活を送っていたOさん。通院を続けた結果、主治医から「疲労の要因のひとつに発達障害が関係しているかもしれない」と言われ、発達障害の診断につながりました。

 

診断されたことでホッとしたというOさん。「障害と向き合っていくしかない」と気持ちを切り替え、親族のすすめでLITALICOワークスに通うことになりました。

 

生活リズムが崩れて朝から通える自信がなかったため、まず週2~3回、午後だけ利用をしながら徐々に生活リズムを整えていきます。そこからはLITALICOワークスのプログラムの中のひとつである「グループワーク」に積極的に参加をし、ほかの利用者さんとの意見交換やスタッフとのやりとりで、自信と積極性を身につけていきました。

 

その後、いくつかの企業インターンシップに参加し、希望する会社に内定。今では心配していた慢性疲労も症状が安定し、業務範囲を少しずつ広げながら、活躍しています。

 

「どのように体調面と付き合いながら働いているのか?」「マルチタスクをどのように工夫してこなしているのか?」など、さらに知りたい方はぜひこちらからご覧ください。

【無料】今後の働き方や仕事のお悩みについてLITALICOワークスで相談する

アスペルガー症候群の方の仕事まとめ

アスペルガー症候群の方は、仕事で「コミュニケーションがうまく取れない」「周りの音が気になって、目の前にある仕事に集中できない」などの困りごとがあるといわれています。

 

しかし、これらの困りごとは自己対処をしたり周囲の方のサポートを得たりすることで軽減させたり、場合によっては強みとして活かされたりすることも可能です。

 

「自分に向いている仕事はなんだろう?」と悩んでいる方は、自分の特性を理解したうえで、どのような働き方を目指していきたいかを考えてみることが大切です。

 

LITALICOワークスでは、一人ひとりの「自分らしく働く」をサポートしています。自分の特性を整理したい方や、専門知識のあるスタッフに相談に乗ってほしい方など、働くことについて困っている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

更新日:2024/08/07 公開日:2020/07/13
  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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