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お役立ち仕事コラム

大人の発達障害かも?診断を受けるべきか悩む方へ|受診先や受けられる支援も解説

更新日:2024/08/09

発達障害なのかもしれないと悩みつつも、医療機関で診断を受けるべきか悩む方は少なくありません。

 

「発達障害かどうか診断を受けるべきか迷っている」
「診断を受けるにあたってデメリットはあるのか?」
「どこで診断を受ければいいのか?」など、さまざまな疑問を抱いている方も実は数多くいます。

 

この記事では、発達障害の診断基準や診断を受ける場所について解説していきます。

大人の発達障害について

「大人の発達障害」は「大人になってから気づいた発達障害」という意味合いを持つ言葉です。

 

基本的に発達障害は、先天的なものです。つまり、大人になってから突然発症するわけではありません。しかし、子どもの頃には発達障害の症状が目立たなかったものの、社会に出てから上手くいかない苦しさや大変さを感じ、発達障害だと診断される場合があります。

 

このような状況において「大人の発達障害」という言葉が使用される場合があります。

大人の発達障害の困りごと

社会人として過ごす中であらわれやすい発達障害の特徴をご紹介します。

  • 予定を忘れてしまう
  • 頼まれた仕事を忘れてしまう
  • 怠けていると勘違いされる
  • 書類の誤字が多い
  • 同じミスを繰り返してしまう
  • 遅刻が目立つ
  • 職場での共同作業が難しい
  • 言葉が足りず誤解される
  • 上司や同僚を怒らせてしまう
  • すぐに集中力が切れる
  • タスクの優先順位が分からない など

上記のように、業務に直接影響が出る場合が多いため、自信を失ってしまうこともあります。しかし、アプリなどのツールを活用し、忘れ物を防いだり、スケジュールを管理するなどの方法をとり、上手く仕事をしている方もいます。また、自分の特性を理解したり、自分に合う環境調整をしたりすることで自分らしく働くことも可能です。

二次障害を発症することもある

発達障害による困りごとが原因で、うつ病、不安障害などの症状が発生することがあります。これを「二次障害」といいます。

 

同僚や上司との関係性がうまくつくれない、業務がスムーズに進まず繰り返し注意されるなど理由はさまざまですが、ストレスが積み重なったり、不安な経験をしたりすることで自己肯定感が下がることによって二次障害を併発することが多いようです。

 

もしも、二次障害が発症してしまった場合は、医者の診療を受け、焦らずに治療することが大切です。

 

また、二次障害を防ぐためにも、日頃から一人で悩まない、適度に休む、生活リズムを整えるなどの予防法を意識する必要があります。

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発達障害の診断を受けるべきか悩む方へ

発達障害の診断を受けるかどうか検討している方に向けて、診断を受ける場所や受診の目安、判断のポイントについて解説します。

大人の発達障害の診断を受けられる場所は?

発達障害を診断できるのは、医療機関のみです。「精神科」や「心療内科」などで診断を受けます。あらかじめ病院の公式Webサイトを確認したり、問い合わせをして確認しましょう。

 

また、都道府県や市によっては、発達障害の診断をおこなっている医療機関のリストや相談窓口を公開しているところもあります。詳しくは各都道府県・政令指定都市の発達障害者支援センターや、市区町村のWebサイトを確認してみてください。

発達障害の診断を受ける時に気がかりな点は?

発達障害の診断を受ける時に気がかりな点としては、「発達障害がある」という事実に向き合わなくてはいけないことが挙げられます。

 

診断を受けることで、これまでの困難さの理由がわかり、納得したり安心することでありのままの自分を受け止められるようになったという方も多くいます。診断を受けるメリットについては、後の章で説明します。

 

一方、ショックが大きく受け止めきれないという方がいるのも事実です。そのため、焦らずに自分の声に耳を傾けながら、診断を受けるか否か考えましょう。

 

「発達障害かどうか診断を受けるべきか迷っている」「一人で悩んでいてつらいそのようなときは、信頼できる専門機関へ相談することをおすすめします。

発達障害の診断基準とは?

発達障害の診断では、アメリカ精神医学会の「DSM-5」が用いられます。「DSM」とは「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」の略で、精神疾患の診断基準・診断分類のことです。「DSM-5」の「5」には、第5版という意味があります。

 

アメリカ精神医学会は「DSM」の改訂をおこなっており、2021年10月現在の最新版が「DSM-5」です。この「DSM-5」には、さまざまな精神疾患を診断する際に基準となる条件が記載されています。

 

例えば、発達障害のひとつであるADHD(注意欠如多動症)※の場合「少なくとも2つ以上の状況(例:家と学校)で症状が見られる」「学校や職場、家庭での機能を妨げている」などが、基準として書かれています。

 

※以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事では以下、ADHD(注意欠如多動症)と記載しています。

 

上記のように、医師が「DSM-5」を用いて状況を確認する問診のほか、場合によっては、脳部CTやMRIなどをおこなったり、IQを測定して総合的に判断します。また、診断の精度を高めるために、子どもの頃の通知表や作文を持参する場合もあります。

大人の発達障害の診断を受けることでできること

発達障害の診断を受けることで、下記のようなことができるようになります。

  • 自身の特性を把握できる
  • 障害福祉サービスを利用できる
  • 障害者求人への応募を検討できる

一つずつ、具体的にご紹介します。

自身の特性を把握できる

まず、発達障害の診断を受ける利点の一つとして「自身の特性を把握できる」が挙げられます。どのような傾向があるのか、医師の診断により明確になることで、困りごとへの対策を練ることが可能です。

 

また「なぜ、ほかの人と同じようにできないのか?」と自己嫌悪に陥っている場合、診断によって「努力不足ではなかった」と自分を認めることができるようになる人もいます。

 

このように、自身の特性を理解することで気持ちが楽になる方もいます

障害福祉サービスを利用できる

発達障害の診断を受けることで、障害福祉サービスを利用できるようになります。その福祉サービスを提供する支援機関によっては、診断書なしで利用できるところもありますが、診断書の提出によって、より多くのサポートを受けることができます。

障害者求人へ応募できる

発達障害の診断を受けて精神障害者保健福祉手帳を取得すると「障害者求人への応募」を選択肢の一つとして持つことが可能です。障害者求人に応募した場合は、困ったときや配慮を求めたい際に相談しやすいという利点があります。ただし、障害者求人への応募は、診断を受けているだけでなく障害者手帳を持っていることが必須条件です。

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発達障害と診断されたらどうする?

発達障害と診断されたときにまず何をするといいかについて解説します。下記見出しは一例なので、「必ずおこなわなければいけない」「これ以外に選択肢はない」というわけではありません。困ったときの対処法として、参考までに取り組んでみてください。

特性による困りごとをしっかり把握する

発達障害と診断されている方が、全員が同じ特性を持っているわけではなく、また、同じ困難さを感じているわけでもありません。一人ひとり個性があるように、得手不得手は異なります。

 

発達障害の特性によって、「コミュニケーションは全般的に苦手」という人もいれば、「少人数なら大丈夫」「少人数はかえって緊張するから大人数のほうがまだ安心」と感じる人もいます。ほかにも、「複雑な作業は苦手だけれど単純作業は得意」「単純作業だと集中が保てない」「単純作業だと集中しすぎて終わった後にどっと疲れてしまう」など、さまざまです。

 

自分自身で特性による困りごとを把握しておくことで、周囲に必要なサポートを求めたり必要な配慮を伝えたりしやすくなるでしょう。

医師と相談する

自分一人で考え込んでしまうと、自分自身が持つ困りごとをうまく言語化できなかったり、どのようなサポートを受ければいいのか分からなかったりすることがあると思います。

 

そのようなときは、かかりつけの医師に相談をするというのも一つの方法です。かかりつけの医師に、ご自身が日常生活で感じている困難さや過ごしにくさを伝えることで、それが発達障害のどういう特性から引き起こされているのかを教えてもらえるかもしれません。

 

そうすることで困りごとに対する対処や必要なサポートについて考えやすくなるでしょう。

職場の方へ相談する

働くうえでの困りごとに対して自己対処だけで解決することが難しい場合は、周囲の理解や配慮を得ることが大切です。合理的配慮を得ることで困りごとが軽減され、働きやすくなることはよくあります。職場の上司や信頼できる仲間、産業医などへ相談してみることも検討してみましょう。

 

もし相談がしづらい、相談しても働きづらさが解消されない場合は、会社以外の支援機関(発達障害者支援センターや地域障害者支援センター、就労移行支援事業所など)へ相談し、サポートを受ける方法もあります。支援機関については、後の章でご説明します。

公的な支援を受けることを検討する

必要に応じて、公的な支援を受けることも検討しましょう。障害者総合支援法に基づき、必要な障害福祉サービスや地域生活支援を受けることが可能です。支援内容や利用条件などは、自治体によって異なります。検討する場合は事前にお住まいの自治体の障害福祉窓口などへ確認するようにしましょう。

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発達障害の治療方法は?

発達障害そのものを完治させる治療法は、まだ発見されていません。しかし、薬物療法や心理療法、そして環境調整などによって日常生活での困難を軽減していくことは可能です。詳しくはこのあと紹介します。

薬物療法

症状によっては、薬を使った療法が検討されることもあります。

 

例えば、ADHD(注意欠如多動症)の場合には、どのような傾向があるのかをふまえて、不注意に効果があるとされるものや、多動性や衝動性を緩和する効果があるとされるものなどが処方されます。また、二次障害の症状によっては、睡眠導入薬や抗うつ剤が用いられる場合もあります。ただし、薬は必ずしも処方されるわけではありません。

 

薬物療法は本当に必要かどうかを見極めたうえでおこなわれるため、担当医の指示に従いましょう

心理療法

心理療法では、自身の症状について理解を深めることを目的とした心理教育や、コミュニケーション能力を向上するためのSST(ソーシャルスキル・トレーニング)、認知行動療法やカウンセリングなどがおこなわれることがあります。

 

SSTとは、社会生活を送るうえで必要な技術を習得するための訓練です。具体的な例としては「反対意見の伝え方」や「人への質問の仕方」などです。ロールプレイング形式(※)でおこなわれるトレーニングもあるため、実践的なスキルを身につけることができます。

 

※実際の場面を想定し、さまざまな役割を演じながら、問題の解決法を会得していく方法

環境調整

特性にあわせて、仕事や生活しやすいように環境を整えることを環境調整といいます。

 

具体的には、忘れ物が多い場合は、忘れ物を防止するためにリストを作成し周囲の人間一緒に確認したり、物の置き場所を決めて使ったら必ず戻すようにするなどです。また、物音や人の声などの雑音が気になる場合は、外部からの刺激を受けにくい場所に席を置いたり、イヤホンやイヤーマフなどの防音グッズを活用したりすることも挙げられます。

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発達障害の診断書はいつ必要になる?

診断書とは、医師が作成する「診断名を証明する書類」です。診断書の提出を求められるタイミングとしては、下記が挙げられます。

  • 障害者手帳の申請時
  • 障害年金の申請時
  • 障害福祉サービス利用時 など

これらの手続きや支援サービスの利用前に、医師の診断書を準備しておかなくてはいけません。また、そのほか公的支援を受ける際や、在籍している企業によっては休復職時に診断書の提出が必要な場合もあります。

大人の発達障害の方が受けられる支援とは?

大人の発達障害の方が受けられる主な支援サービス以下のようなものがあります。

  • 障害者就業・生活支援センター
  • 発達障害者支援センター
  • ハローワーク
  • 精神保健福祉センター
  • 就労移行支援事業所 など

一つずつ、どのような支援があるのかご紹介します。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターでは、ハローワークや医療機関などと連携しながら「働く」と「暮らす」を一体的にサポートしています。令和3年4月1日時点では、全国に336ヶ所設置されています。障害者就業・生活支援センターの一覧は厚生労働省のページをご覧ください。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、障害のある方と家族の生活をサポートする施設です。発達障害の診断を受けている方だけでなく、発達障害の傾向はみられるものの、発達障害の診断をうけていない方の支援もおこなっています。支援の内容は自治体によって異なっているため、まずはお住まいの地域にある発達障害者支援センターがどのようなサポートをおこなっているのか確認しましょう。

ハローワーク

ハローワークでも、発達障害のある方へ向けての支援をしています。本人の特性や、希望業種をふまえたうえで、専門の相談員が職業紹介などをおこないます。支援を受けるためには、必ずしも障害者手帳が必要というわけではありませんが、診断書の提出を求められるケースがあります。

精神保健福祉センター

精神保健福祉法によって、各都道府県や政令指定都市への設置が定められています。ほかの支援機関に比べると、精神疾患に特化している点が特徴です。また、自治体によって呼び方が異なる場合があります。発達障害は精神疾患などの二次障害につながる可能性もゼロではありません。そのため、支援機関のひとつとして認識しておくことは有効的と言えるでしょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は一般企業に就職を希望する方々へ、働くためのさまざまなサポートをおこなう福祉サービスです。就職に必要なビジネススキルやストレスコントロールなどのプログラムの提供、書類添削や面接練習などの就職活動に関する支援の提供などをしています。

 

就労移行支援は障害者手帳がなくても相談することはできますが、利用には自治体の判断が必要になります。詳しくはお近くの就労移行支援事業所にお問い合わせください。

【無料】就労移行支援で受けられるサポートについて詳しく聞く

発達障害の方の仕事探しをサポート「LITALICOワークス」

就労移行支援事業所「LITALICOワークス」

 

LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営し、障害のある方の「働きたい」をサポートしています。

 

LITALICOワークスでは一人ひとりの症状や得意不得意、希望する就職などを伺い、計画を立てたうえで支援をおこないます。

 

例えば以下のようなサポートをおこなっています。

  • プログラムを通して自己理解を深め、ストレスコントロールを身につける
  • 企業インターンを通して、自分が安心して働けるような職場環境を探す
  • 就職後、本人と職場の定期的な面談を通して長く働きつづけるためのサポートをおこなう など

障害を開示するかどうかで悩んでいる場合でも、上記のような取り組みを通して自分に合う働き方を就労支援のスタッフと一緒に検討することもできます。その結果、障害を開示せず働くこととなった場合でも長く働き続けられるようサポートをおこないます。

 

LITALICOワークスは休職中の方も一定条件を満たせば利用できる可能性があります。相談は無料で随時受け付けています。ぜひ一度お問い合わせください。

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大人の発達障害の診断についてまとめ

発達障害は、精神科や心療内科などで診察・検査したうえで診断されます。

 

診断が確定すると「受けられる支援の幅が広がる」「障害者求人へ応募できる」「自身の特性を理解できる」など無理せず社会生活を送ることができる可能性が拡がります。

 

「診断を受けるべきか?」悩んでいる方は、一度専門機関への相談も検討してみましょう

 

もし働くことのお悩みがある場合、ぜひお気軽に就労移行支援事業所のLITALICOワークスへお気軽にご相談ください。

更新日:2024/08/09 公開日:2021/11/15
  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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