日常生活や社会生活の中で、周囲の音や会話などが気になり過ぎる場合、感覚過敏のひとつ「聴覚過敏」の症状である可能性があります。
とはいえ、聴覚過敏について、詳しく分からないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、聴覚過敏のある方に見られる症状や、治療の方法について解説します。
また、聴覚過敏のある大人が仕事中にできる対策方法も合わせて紹介します。
「生活や仕事に支障が出るくらい音が気になる」と感じる方は、聴覚過敏にあてはまる症状がないか確認しましょう。
日常生活や社会生活の中で、周囲の音や会話などが気になり過ぎる場合、感覚過敏のひとつ「聴覚過敏」の症状である可能性があります。
とはいえ、聴覚過敏について、詳しく分からないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、聴覚過敏のある方に見られる症状や、治療の方法について解説します。
また、聴覚過敏のある大人が仕事中にできる対策方法も合わせて紹介します。
「生活や仕事に支障が出るくらい音が気になる」と感じる方は、聴覚過敏にあてはまる症状がないか確認しましょう。
聴覚や視覚、触覚などの感覚が非常に敏感になり、日常生活や仕事などにおいて、困難や苦痛が生じることを「感覚過敏」と言います。
聴覚過敏は感覚過敏のひとつで、身の回りの音が日常生活に支障が出るほど大きく聞こえることで、不快感や心的ストレスを感じる症状を指します。
症状を表す言葉で、病名ではありません。
今のところ、はっきりとした定義がなく、専門家によって定義が異なるケースがあります。
また、ほかの感覚過敏には下記などがあります。
聴覚過敏だけでなく、ほかの感覚過敏が同時に起こる方もいます。
まずは、聴覚過敏の特徴や症状について解説します。
聴覚過敏の大きな特徴は、その名の通り聴覚(音を感じる感覚)が過敏になることです。
本来、人間は複数の音が周囲にある状況の中では、聞きたい音とそれ以外の音を区別して認識しています。
しかし、聴覚過敏があると、音の区別がつかなくなったり、ある特定の音を必要以上に聞き取ってしまったりします。
そのため、ほかの人が気にならないような音であっても、聴覚過敏のある方は非常に気になり「イライラしてしまう」など、心身に影響を受けてしまうことがあります。
「尖っている」「甲高い」音などが苦手と感じる方もいれば、不快感を表すときに「黒板を爪でひっかく時の音」と表す方もいます。
ただし「特定の音に対してだけ敏感になる」「まわりの音がすべて苦痛だ」など、症状や特徴は人それぞれと言えるでしょう。
また、体調が優れない場合に、聴覚過敏の症状が強く表れることがあります。
聴覚過敏の症状をいくつかご紹介します。
※上記は一例です。
上記の項目がいつも気になるという場合は、聴覚過敏の可能性がるかもしれません。
具体的にどのような音が嫌悪感の対象となるのか、「特定の音」「特定の人の声」「予測不能な音」にわけて例を挙げます。
特定の音の例としては下記のような、日常生活で耳にするものが挙げられます。
※上記は一例です。
ささいな生活音が気になる場合、さまざまなシーンでストレスを感じる可能性があります。
また、自宅だけでなく、職場も音にあふれた空間です。
そのため「苦手な音が原因で大切な会話に集中できない」「仕事どころではなくなる」という状況になり、つらさや苦痛を感じる方もいます。
特定の音だけでなく人の声が苦手なパターンもあります。
※上記は一例です。
館内放送や子どもの声が気になる場合や、人混みの中でたくさんの声が同時に聞こえる状況が苦手な場合は、買い物に出かけただけでぐったりと疲れてしまうケースが考えられます。
予測ができない音の例としては、下記が挙げられます。
※上記は一例です。
突然聞こえてくる音が苦手な場合、いつ音が鳴るのかと不安になったり、外出することに苦痛を感じる可能性もあります。
聴覚過敏の症状は、ただ音が苦痛に聞こえるだけではありません。
耳の奥が痛い、めまいや頭痛がする、などほかの症状を引き起こすことがあります。
また「会話の内容が頭に入らない」「すぐに疲れる」「音が気になって眠れない」といった症状が表れる方もいます。
結果として、心身の不調へとつながる可能性もあります。
聴覚過敏は、周囲から「気にしすぎじゃないの?」や「わがままを言っている」などと、誤解されることがあります。
そのため、本人が「自分が我慢できないだけ」と思ってしまうケースがあります。
しかし、聴覚過敏の症状が出ているということは、何らかの原因が潜んでいる可能性があるため、決して本人の努力不足や甘えといったものではありません。
聴覚過敏の原因として考えられているものは一つだけではありません。
大きく分類すると「耳の機能」「脳の機能」「ストレスなど」の3つの原因が考えられます。
内耳性の難聴のように、耳の機能が影響している場合があります。
内耳性の難聴とは、耳の一部である内耳でなにかしらの障害が起こっているもので、具体的には「メニエール病」や「突発性難聴」などが挙げられます。
音そのものは聞こえにくいのに、特定の音が強く響いたり、不愉快に感じられたりする場合があります。
脳の機能が影響する原因としては、「発達障害」や「てんかん」「片頭痛」などが考えられます。
発達障害
発達障害があると、聴覚を含む五感が敏感になりやすいと言われています。
そのため、ASD(自閉スペクトラム症)※1やADHD(注意欠如多動症)※2など、発達障害のある方は聴覚過敏に悩まされるケースがあります。
ただし、全員ではありません。
また、発達障害がなぜ聴覚過敏につながるのか、はっきりと分かっていないのが現状です。
てんかんや片頭痛
てんかんや片頭痛なども、聴覚過敏を引き起こす原因のひとつとされています。
聴覚過敏は心の不調のサインであるケースも考えられます。
例えば、うつ病によって自律神経が乱れていると、音や声に対して過敏に反応することがあります。
聴覚過敏そのものを治す方法は、まだ確立されているものがありません。
聴覚過敏を引き起こしている疾患がある場合は、まずその疾患を治療します。
疾患ごとに診断場所や治療方法は異なるため、項目ごとにわけてご紹介します。
また、原因が分からないときは、まず耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。
耳の機能が原因と考えられる場合は、耳鼻咽喉科へ行きましょう。
もし「メニエール病」や「突発性難聴」を発症している場合は、すぐに治療を始めます。
また、耳鳴りについて最近では弱い雑音から徐々に慣らしていく馴化反応を利用したTRT(Tinnitus Retraining Therapy)と呼ばれる治療法も一部の病院でおこなわれています。
脳の機能が原因と思われるときは、神経内科で診察を受けます。
もし、てんかんや片頭痛などの症状があるなら、まずは薬物療法をおこない、症状をコントロールします。
ただし、てんかんにはいくつかの分類があり、それによって薬が異なります。
主治医としっかり話し合って、自分の状態にあった薬の処方なども検討していきましょう。
心理的な問題が原因と思われる場合は、精神科や心療内科を受診しましょう。
精神科や心療内科では、心理的な問題に合わせて不安を取り除くための薬物治療やカウンセリングなどが受けられます。
もしも、脳や耳の検査をして異常がないのであれば、ストレスを抱えていないか一度見直すことをおすすめします。
この場合、精神的なストレスを取り除くことが、聴覚過敏の症状にいい効果をもたらす可能性があります。
聴覚過敏のある大人が仕事に集中するためにできる対策・対処法は「環境調整」「イヤーマフを使う」「リラックスをする」「シンボルマークを活用する」の4つあります。
それぞれ、詳しくご紹介していきます。
まずは、仕事に集中できる環境を整えましょう。
例えば「デスクの位置をなるべく静かな場所に移動する」などです。
会社へ自身の症状を伝えて、環境を調整したい理由をしっかりと理解してもらう必要があります。
また、休憩時間の雑音が気になるときは「なるべく空いているお店でランチを食べる」「落ち着いて過ごせる場所を見つける」などを試みましょう。
仕事に集中するためには、イヤーマフや耳栓を使う対策法もおすすめです。
イヤーマフとは、耳をすっぽりと覆う防音用のアイテムです。
もともとは工事現場や飛行場など、騒音が響く場所で作業をする方々が耳を守るものとして使用していました。
防音効果が高いため、最近は一般の方が利用もケースも増えています。
商品によって「高周波にも対応」や「耳に当てる部分の大きさ」などが異なるため、自分に合ったタイプを見つけることが大切といえるでしょう。
聴覚過敏の原因に、ストレスなどの精神的な状況や疲労が関係している場合、仕事時においても、心配事や不安ごとに捉われ過ぎず、リラックスを心がけることが大切です。
もしも、業務や職場環境のことで気になることがあった場合は、上司に相談するなどして、一人で抱え込まないようにしましょう。
また、ストレスや苦痛を感じた場合にゆっくりと休める場所を見つけておくのもいいでしょう。
自律神経が乱れないように、日頃から規則正しい生活や栄養バランスのいい食事を意識する方法も有効的です。
ストレスの原因となる音がいつからいつまで続くのかが分かると、精神的に楽になることもあります。
例えば職場の近くで工事をしている音が気になるときは、終わる時間を把握しておくことで実際に聞こえる音に変わりがなくても、気持ちに余裕を持つことができる方もいます。
どうしても避けられない場合は、音がいつ終わるかを把握することも選択肢に入れておくといいでしょう。
聴覚過敏に悩んでいる方の中には、聴覚過敏保護用シンボルマークを活用し、対策している方もいます。
このシンボルマークを身に着けていると、周囲に「苦手な音がある」ということを知らせることができます。
例えば、仕事中に使用するイヤーマフにシールを貼ることで「音楽を聞いてサボっているわけではない」と理解してもらうことにつながるでしょう。
ただし、公的に規定されているマークではないことを理解しておきましょう。
聴覚過敏のような感覚過敏は、周囲からはつらさが分かりづらい症状です。
しかし「このまま我慢すればいい」と思う必要はまったくありません。
会社へ事情を伝えて環境を整えたり、イヤーマフやシンボルマークを活用したりして少しでも快適な空間をつくることが大切です。
また、聴覚過敏の症状は、ストレスがあると強く出る可能性があるため、適度にリラックスをするように心がけましょう。
就労移行支援事業所「LITALICOワークス」は全国に130拠点以上あり、障害のある方の就職を数多くサポートしてきました。その一人ひとりが望む働き方や状況などに合わせて自己分析、ストレスコントロールや体調管理、就職活動や適職探しなどのサポートを提供しています。
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監修者
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
井上 雅彦
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。
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