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お役立ち仕事コラム

統合失調症|仕事でつらいと感じる場面や向いている仕事の探し方を紹介

更新日:2024/06/18

統合失調症の症状によって、次のようなことで悩む方もいるのではないでしょうか。

 

「仕事が続かなくて悩んでいる」

「統合失調症の症状が出ているときは働かない方がいいのか」

「職場に迷惑をかけたくない」 

 

上記のように、統合失調症になると仕事を続けることは難しいのではないかと思われている方もいるかもしれません。しかし、統合失調症による症状への対処法を身につけたり適職を探すための自己分析をおこなったりすることで、安定して働くことも可能です。

 

この記事では、統合失調症の症状、仕事でよくある困りごとやその対処方法、適職を探すポイント、活用できる支援機関などを紹介します。

統合失調症の症状とは

統合失調症は幻覚や幻聴、意欲の低下などの症状が表れ、社会生活にさまざまな影響が出る疾患のことです。生涯のうちに約100人に1人の割合でかかるといわれており、決して珍しい疾患ではありません。また、統合失調症は脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることが原因として考えられていますが、現在のところ明確になっていません。

 

統合失調症には、本来あるはずのないものが表れる(幻覚や妄想など)「陽性症状」と、今までにあった状態がなくなる(意欲の低下など)「陰性症状」があります。

陽性症状

統合失調症の陽性症状とは、実際にはないものが存在するかのように感じる症状です。とくに知られているのが「幻覚」と「妄想」です。

 

陽性症状でよくある症状として、

  • 実際にはないものが見える(幻視)
  • 実際にはない音や声が聞こえる(幻聴)
  • 何でも自分と関連づいていると感じる(関係妄想)
  • 周りの人が自分に嫌がらせをしようとしていると感じる(被害妄想)
  • 誰かに見張られていると思い込む(注察妄想)
  • 考えをまとめるのが難しくなり、支離滅裂なことをいう(発話の統合不全)

などがあります。

陰性症状

統合失調症の陰性症状は、今までにあった意欲が低下したり感情がなくなったりする症状が表れます。

 

陰性症状としてよくある症状として、

  • 意欲が低下する
  • 感情の起伏や表情の変化が少なくなる
  • 人との関わりを避けるようになる
  • 身なりを気遣えなくなる

などがあります。

認知機能障害

統合失調症では認知機能障害が表れる場合があります。

 

認知機能障害とは、生活を送るうえで必要な理解力や記憶力、注意力などが低下する状態のことです。

 

認知機能障害があると、仕事において指示に対する理解をしたり一つの作業に集中したりすることが難しくなることが考えられます。

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統合失調症の方が仕事でつらいと感じる場面

統合失調症の方は仕事をする中で、症状によって「つらい」「働けない」などと感じることがあるでしょう。

 

ここでは、統合失調症の方が仕事でつらいと感じやすい場面の例を紹介します。

仕事で疲れやすい

統合失調症の方の仕事での困りごととして、疲れやすくなることが挙げられます。

 

統合失調症の症状によって目の前にある仕事に集中することが難しくなったり、多くの情報が入ると混乱しやすくなったりする場合があります。発症前と比べて仕事でうまくいかないことが多くなり、その分疲れやすくなると考えられます。

また、統合失調症には、心身共に疲れ切っていたところから症状が収まってくると、なんとなくけだるい、活発になれない時期がやってくることがあります。そうすると疲れやすさや、根気や集中力、意欲の低下などがみられます。この時期に仕事をしていると、以前と同じ業務でも疲れを感じやすくなるでしょう。

仕事をする気力がわかない

統合失調症の方から「働く気力がわかない」という悩みを聞くことがあります。

これは、統合失調症の病状によって意欲が低下したり周囲に関心がなくなったりするため、働く気力がわきづらくなり、仕事に影響が出るためだと考えられます。

 

このような場合、周りからはなかなか理解が得られにくく、困りごととして感じる方もいるでしょう。

 

仕事がうまくいかないことが続くと「働かない方がいいのでは」「職場に迷惑なのかもしれない」とつらい思いを抱く方もいるかもしれません。しかし、これは決して本人の努力不足や甘えではなく、統合失調症の病状によるもので症状のコントロールを図る必要がある状態だといえます。

 

焦らず治療を進められるように、業務量を軽減したり休職したりすることも視野に入れて、周りの人に相談してみましょう。

統合失調症の方で働いている人の割合

統合失調症の症状により仕事に困難さが生じても、適切な治療を受け、周囲のサポートを得ることで、実際に統合失調症の症状とうまく付き合いながら働いている方も多くいます。

 

統合失調症の方が働いている割合について直接調査した公的なデータはありませんが、参考となるデータを紹介します。全国で障害のある方が働いている人は61万3958人で、そのうち、統合失調症を含む精神障害のある方は10万9764人という調査があります。

 

また別の調査で、働く精神障害のある方は推計20万人といわれており、そのうち統合失調症は31.2%の割合で、推計約6万人前後の人が働いている考えられます。

統合失調症の方が向いている仕事を探すためのポイント

ここでは、統合失調症の方が自分に向いている仕事を探すポイントを解説します。

 

前提として、「向いている仕事」や「適職」を探すうえで大切にしたいものは一人ひとり異なります。

 

たとえば「統合失調症の症状による困りごとが少なくなるような職場」「自分が楽しく取り組める職場」「体調優先で働ける職場」など、ひとそれぞれ働きたいという職場は異なるでしょう。そして1つだけではなく、それらの中に大切にしたいものがいくつもある方もいます。そのため「この仕事が統合失調症の方に向いている」といったような仕事があるわけでもありません。

 

この章では、自分が無理なく働けるようにするためのポイントを中心に解説します。仕事探しをするうえでの一つとして参考にしてください。

主治医と相談する

統合失調症には回復するまでのステップがあります。十分に心身共に回復しないうちに就職活動を始めるとふたたび体調が悪化する懸念があります。就職したときには、新しい仕事や人間関係などの負担がかかることも考えられるため、症状がある程度回復してから就職活動を始めるようにしましょう。

 

統合失調症の治療では薬物療法と精神療法を中心に進めます。薬物療法では、抗精神病薬を中心に使われます。症状によっては抗うつ薬や睡眠薬などが使われる場合もあります。薬物治療により症状の改善が難しい場合は、電気けいれん療法という治療をおこなうこともあります。

 

精神療法には対人関係などの社会生活を円滑にするためのSST(ソーシャルスキルトレーニング)や認知行動療法などがあります。その人の状況に合わせた精神療法をおこないます。

 

治療により症状が落ち着いてきたら、主治医と仕事について相談しましょう。そのうえで就職活動を始めるようにするといいでしょう。

自己分析して向いている仕事を探す

自分に向いている仕事は人それぞれ異なります。そのため、自己分析をしっかりとおこなうことが大切です。自己分析を通じ、自分の症状やストレスを感じやすい場面、得意な業務、自分が働くうえであるとよいサポート(合理的配慮)などを整理します。

 

自己分析にはさまざまなやり方があります。インターネットや書籍を使って自己分析する方法やキャリアコンサルタントなどの専門家や就労支援機関などと相談しながら自己分析を進める方法もあります。就労支援機関については、この後の章で紹介しますので、選択肢のうちのひとつとして覚えておくといいでしょう。

無理のない時間から始める

統合失調症の方は症状によって疲れやすくなっている場合があるため、発症前と同じペースで働くと心身共に負担になることがあります。そのようなときは短時間勤務や時差出勤など負担が少ない状況で働き始めるといいでしょう。職場と相談して、短時間勤務から始め、慣れてきたら徐々に勤務時間を伸ばすなど、無理のない範囲から始めてみましょう。

 

また、障害者手帳を取得することで、障害者雇用で働くこともできます。障害者雇用では、勤務時間をはじめとした合理的配慮について相談しやすいというメリットがあります。今後長く働き続けるために選択肢のうちのひとつとして検討してみてもいいでしょう。

症状の前兆を把握する

統合失調症の治療をしたうえで負担の少ない仕事に就いても、統合失調症の症状が表れる場合があります。

 

統合失調症の再発を防止するためには、症状が表れないようにするための対処法を身につけたり、症状が表れる前兆を把握したりすることが重要です。前兆を把握することで、統合失調症の症状が悪化する前に対処することができるようになります。

 

一般的に、統合失調症は以下のような前兆が表れるといわれています。

  • 周りに誰もいないのに声が聞こえる
  • 誰かが悪口を言っている気がする
  • 気持ちが落ち着かない
  • なかなか寝つけない
  • 食欲がなくなる
  • 気分が沈む
  • イライラする など

こういった前兆が起きる、何かうまくいかない、調子が悪いと感じたらすぐに医師や職場などに相談しましょう。そのまま無理をして仕事をすると状態が悪化し回復にも時間がかかります。

 

事前に上司や周囲に自分の症状や前兆、対処法などについて伝えておくとその後、何があったときに対処できるようになり、働きやすくなるでしょう。

 

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統合失調症の方が就職で活用できる支援

統合失調症の方が働くうえで、利用できる支援制度や専門機関があります。自分に向いている仕事を探すためにも、支援制度や支援機関を活用しながら就職活動を進めていくといいでしょう。

障害者手帳

障害者手帳は一定の障害の状態にあることを認定するものです。障害者手帳を取得することで税金の控除や公共交通機関、公共施設の割引などが受けられます。また、先ほど紹介した障害のある方の採用を前提とした障害者雇用求人に応募できるようになり、仕事探しの選択肢が広がります。

 

障害者手帳には3つの種類がありますが、統合失調症の場合「精神障害者保健福祉手帳」が対象となります。障害者手帳が発行されるには申請が必要になりますので、主治医や自治体の障害福祉窓口などに相談しましょう。

ハローワーク

ハローワークは就職サポートなどをおこなう行政機関で、その中に障害のある方のための相談窓口(専門援助部門など)が設置されています。

 

相談窓口では、障害に対する専門的な知識があるスタッフによる就職相談や、障害のある方を対象にした求人の紹介などをおこないます。また、応募書類の添削や模擬面接や就職を支援する関係機関と連携した支援もしています。

 

障害者手帳がなくても相談できますが、障害者雇用求人に応募するには障害者手帳が必要になります。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは障害のある方を対象に、仕事に関する専門的な支援を提供している公的な機関です。

 

スタッフとの面談を通して就職に向けた計画を立てたうえで、職業準備支援としてストレス対処法を身につけたり、ビジネススキルなどを高めたりするサポートを提供しています。また、就職後は「ジョブコーチ」と呼ばれる専門のスタッフを職場に派遣して、本人が長く働き続けるためのサポートをおこないます。

 

地域障害者職業センターは障害者手帳がなくても相談できます。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、統合失調症など障害のある方へ身近な地域での生活と仕事両面のサポートを提供している支援機関です。

 

仕事面では就職に向けた準備支援や、実際の職場で仕事を体験する職場実習の斡旋、就職活動のサポートなどをおこないます。また、生活面では生活リズムや健康管理に関する困りごとに対するアドバイスやサポートなども提供しています。

 

障害者手帳がなくても相談できる場合があります。利用を希望する方は、お住まいの地域の障害者就業・生活支援センターに問い合わせてみましょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業などへの就職を目指す障害のある方の求職から就職、職場定着までの一連の過程をサポートする事業所です。また、就労定着支援として長く働き続けるためのサポートを最長3年にわたっておこなっています。

 

利用者は就労移行支援事業所に通い、以下のようなサポートを受けられます。

  • 自己分析や障害理解などのプログラムやワークショップの受講
  • 実際の職場で一定期間働く企業インターンへの参加
  • 面接や履歴書対策などの就職活動のサポート など

障害者手帳がなくても、自治体の判断により認められた場合、就労移行支援事業所の利用が可能になります。

【無料】就労移行支援について詳しく聞きたい

就労移行支援事業所「LITALICOワークス」

自分らしい働き方をサポート「就労移行支援事業所」

 

就労移行支援事業所「LITALICOワークス」はこれまで多くの統合失調症の方の就職・職場定着をサポートしてきました。LITALICOワークスでは、スタッフとの面談により一人ひとりの状況や望む働き方を把握したうえで、長く働けるように計画を立ててサポートしています。

 

LITALICOワークスを利用した統合失調症のMさんの方の就職事例についてご紹介します。

 

【就職事例(統合失調症/40代)】統合失調症や自分自身と向き合えた就職

Mさんは、LITALICOワークスに通い始めた頃は幻聴が聞こえることがあったといいます。

 

そこで幻聴が聞こえるたびにスタッフとの面談をおこないました。面談を通して、幻聴が聞こえるときには「前日に夜更かしをして疲れている」などの一定のサインがあることに気づくことができました。それから、毎日LITALICOワークスで体のストレスサインをチェックすることで事前に「今日は幻聴が聞こえるかもしれない」と予測ができ、心の余裕につながったようです。

 

また、幻聴の声は常に後ろから聞こえるような気がするため、部屋の中央ではなく壁側の席を利用したり、それでも幻聴が聞こえるときにはスタッフと一緒に声の方向に振り返り、幻聴は現実に起きていることではないと確認したりしました。

 

こうした日々の工夫から不安要素が減り、統合失調症と向き合うことができたようです。

 

それから、企業インターンに参加することで苦手と感じていたことがそこまで苦にならない仕事や環境があることを知れたり、達成感や充実感を得ることができたりする仕事の特徴や傾向について整理していきました。それと共に、仕事による困りごとへの対処法や合理的配慮の整理をスタッフと一緒にしたうえで就職しました。

 

就職した後も困ったときにLITALICOワークスと企業の三者面談を通して解決法を図りながら、安心して長く働き続けられています。

【無料】「自分に合う職場で働きたい」LITALICOワークスで相談する

Mさんの事例を紹介しましたが、LITALICOワークスでは一人ひとりの困りごとや望む働き方などに合わせ、サポートをおこなっています。

 

LITALICOワークスでは、無料の相談を実施しています。「仕事が続かない」「自分に合った仕事がわからない」「就職活動を一人で進めるのが不安」という方は、ぜひ一度お問い合わせください。

【無料】仕事のお悩みについてLITALICOワークスで相談する

統合失調症と仕事のまとめ

統合失調症の方は仕事において「目の前にある仕事に集中できない」「仕事への意欲がわかない」などの困りごとが起きることがあります。

 

統合失調症の方が長く働くためには、治療を継続すること、そして自己分析をしたうえで自分に向いている仕事を探すことが大切です。そのためにも、自分一人ではなく、統合失調症の方が利用できる支援機関を活用しながら自分に合う職場を探していくといいでしょう。


もし、今後の働き方について悩んだ場合はぜひLITALICOワークスにご相談ください。一緒に自分らしい働き方を考えていきましょう。

更新日:2024/06/18 公開日:2020/07/03
  • 監修者

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

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